新たに単離された
Alcaligenes faecalis No.4株は
in vitroで13種の植物病原菌に対して増殖抑制効果を示した。この菌を液体培養すると,硝化反応産物であるヒドロキシルアミン,亜硝酸(NO
2-),硝酸(NO
3-)が生産されたことから,No.4は従属栄養硝化菌であると判定された。
Rhizoctonia solaniのプレートで増殖が抑制されている部分からも,これらの硝化産物が検出された。これらの硝化産物の水溶液を用いて,
R. solaniのプレートで増殖をみると,ヒドロキシルアミンのみが増殖の抑制を明瞭に示した。この結果から,No.4による植物病原菌の抑制作用はヒドロキシルアミンによると判断された。No.4株の培養液,菌体懸濁液,および遠心分離した培養上清それぞれを用いて,トマトの苗立枯病の防除試験を行った。滅菌土壌においては,
R. solaniの引き起こすトマトの苗立枯病は上記3種類のサンプルで病害の抑制が見られたが,非滅菌土壌においては,No.4株の培養液,および菌体懸濁液のみが,病害抑制効果を示した。ヒドロキシルアミン水溶液を用いて,トマトの苗立枯病抑制試験を行うと,滅菌土壌においてのみ,病害抑制が見られた。このことは,ヒドロキシルアミンが土壌中で速やかに分解されてしまうことを示唆した。さらにNo.4株にトランスポゾン変異を施し,ヒドロキシルアミン非生産変異株をつくり,この変異株によるトマトの苗立枯病抑制試験を行ったところ,病害は抑制されなかった。土壌から,ヒドロキシルアミンの検出を試みたが,検出できなかった。以上の結果から,
A. faecalis No.4株は,土壌中でヒドロキシルアミンを生産し,
R. solaniの引き起こす病害を抑制すること,および生産されたヒドロキシルアミンはきわめて速やかに分解されることが明らかになり,
A. faecalis No.4が生物防除の一方法としての可能性を示した。
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