1. 本論文には稻種子中より分離せる
Bacillus A, B及びC菌15系統の死滅時間と菌を浮游せしめたる培養液水素イオン濃度との關係に就き記述せり。
2. 供試菌を浮游せしめたる培養液としてはN/1 HCl及びNaOHを以てpH 5.0, pH 7.0或は7.2及びpH 8.6或は8.8に反應を調節したるブイヨン培養液を供用して一定時間7種類の一定温度の温湯中に浸漬し,冷却後28℃或は28-30℃の定温器内に2-3日間保ちて菌の生死を決定せり。而して供試菌は常にpH 7.0或は7.2の反應を有するブイヨン培養液に28℃にて24時間培養したるものを用ひたり。
3. 供試菌の種類及び系統竝に温湯温度の如何に關せず,死滅時間はpH 7.0或は7.2の懸濁液を供用したる場合最も優り, pH 5.0の場合之に次ぎ, pH 8.6或は8.8の場合最も劣るが如く,死滅時間と懸濁液水素イオン濃度との間には常に一定の關係存するものの如し。
4. 供試菌の種類及び系統竝に温湯温度の如何に關せず,濕熱に對する菌の抵抗力は懸濁液の水素イオン及び水酸イオンに依りて減弱せしめらるるものなるが,水酸イオンに基づく減弱度は水素イオンに基づく夫れより大なるが如し。
5.菌を懸濁したる培養液水素イオン濃度及び温湯温度の如何に關せず,
Bacillus C菌の死滅時間は
Bacillus A及びB菌の夫れより著しく大にして,雄神種々子より分離したる
Bacillus A第22號菌を除き,後者等の死滅時間は殆んど相等しけれども,
Bacillus Bは
Bacillus Aより幾分優れるが如し。
6. 菌を懸濁せる培養液水素イオン濃度及び温湯温度竝に供試菌種類の如何に關せず,死滅時間は菌系統に依りて差異あるものの如し。斯くの如き死滅時間の系統的差異は懸濁液水素イオン濃度及び温湯温度に依りて異なる場合あるものの如く,
Bacillus A菌にありては47.5±0.5℃の温湯に浸漬したる場合にはpH 8.6或は8.8の懸濁液, 50±0.5℃の温湯に浸漬したる場合にはpH 7.0或は7.2の懸濁液を供用したる實驗に於いて最も顯著なりき。
7. 菌を浮游せしめたる培養液水素イオン濃度竝に菌の種類及び系統の如何に關せず,死滅時間は温湯温度の上昇と共に急激に減少するものの如し。
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