日本植物病理学会報
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61 巻, 2 号
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  • (VI) 自然感染葉いもち病斑上での胞子形成量の測定
    金 章圭, 吉野 嶺一
    1995 年 61 巻 2 号 p. 89-92
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1991年7月,韓国利川郡の圃場において,自然感染葉いもち病斑上での胞子形成量調査を行った。生葉上の葉いもち病斑での連続調査では,9日間連続して胞子形成量調査が可能であり,その最大値は長さ14.8mmの病斑での12,540個であった。調査葉を切り取り,1日当りの胞子形成量を調査した結果では,5万個以上の胞子形成が認められる場合が多く,病斑裏面では病斑表面の数∼10倍以上の胞子形成量であった。また,調査時間帯中の胞子離脱量は1日の全胞子形成量のわずか1∼12%であった。
  • 佐藤 章夫
    1995 年 61 巻 2 号 p. 93-98
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ジャガイモ塊茎の疫病圃場抵抗性の室内検定にはこれまで噴霧接種法,瞬間浸漬法および付傷接種法が用いられてきたが,いずれも圃場検定との対応は不良で改良を必要としていた。接種法の検討を行ったところ,長時間の浸漬接種で良好な結果が得られた。成熟塊茎を予め数時間水に浸し,これに遊走子懸濁液を注ぎ,感染可能な部位に遊走子が充分に集泳できるようにさらに数時間おいた。感染部位は圃場感染と同様にほとんどすべて目であった。予浸時間(1∼48時間)が長いほど目の感受性は高まり,接種濃度(1∼1000個遊走子/ml)が高いほど病斑数は多く,接種時間は4時間で最高の病斑数が得られた。実用的な検定条件としては,予浸時間を2時間,接種濃度を100個遊走子/ml,接種時間を4時間とするのが適当と考えられた。この浸漬接種法により罹病性の3品種,中程度抵抗性の1品種,抵抗性の1品種を検定したところ,感染程度に品種間で大きな差異が見られ,それぞれの感染程度と圃場で知られた品種の圃場抵抗性レベルとの対応は常に良好であった。
  • 小林 晃, 江原 淑夫
    1995 年 61 巻 2 号 p. 99-102
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    キュウリモザイクウイルス黄斑系(CMV-Y)のRNAと外被タンパク質の混合比率を変えて再構成を行い,ショ糖密度勾配遠心分離ならびにアガロースゲル電気泳動により再構成産物の解析を行った。外被タンパク質量が少ない条件下では再構成産物中よりウイルス粒子を形成したRNAと遊離のRNAの両者が検出され,形成された粒子中から主としてRNA1, 2さらにRNA 3が認められ,RNA4,サテライトRNAの量は少なかった。十分量の外被タンパク質により再構成を行うと,形成されたウイルス粒子中からはRNA1から3に加え,RNA4,およびサテライトRNAも検出されるようになった。この結果より,RNA1, 2が優先的に粒子化されることが示唆された。次いでRNA1+2, 3, 4およびサテライトRNAの各単独での再構成を試みた。その結果,電子顕微鏡観察より,いずれにおいても粒子の形成が認められた。以上の結果より,CMV RNAの各セグメントおよびサテライトRNAと外被タンパク質との親和性はそれぞれ異なるが各RNAは単独でも粒子を形成しうることが示唆された。
  • 長岡 俊徳, 大羅 順子, 吉原 照彦, 坂村 貞雄
    1995 年 61 巻 2 号 p. 103-108
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    トマト台木植物(品種:耐病新交1号)の根部から抗菌物質として4種の不飽和ヒドロキシ脂肪酸[(13S)-13-ヒドロキシ-(9Z, 11E)-9, 11-オクタデカジエン酸,13-ヒドロキシ-(9E, 11E)-9, 11-オクタデカジエン酸,(9S)-9-ヒドロキシ-(10E, 12Z)-10, 12-オクタデカジエン酸,9-ヒドロキシ-(10E, 12E)-10, 12-オクタデカジエン酸]と5種のフェノール化合物(バニリン,シリンガアルデヒド,p-ヒドロキシベンズアルデヒド,p-ヒドロキシ安息香酸,バニリン酸),一種のジカルボン酸(アゼライン酸),一種のキノン(2, 6-ジメトキシ-p-ベンゾキノン)を単離し,化学構造を決定した。トマト台木の土壌病害抵抗性に関与する抗菌物質は植物に普遍的に存在するこれらの化合物ではなく,既報のアルカロイドであることを示唆した。
  • 對馬 誠也, 内藤 秀樹, 小板橋 基夫
    1995 年 61 巻 2 号 p. 109-113
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネもみ枯細菌病に対するイネの感受性の経時的な変化を3品種(コシヒカリ,黄金晴,あそみのり)を供試して検討した.開花前後の籾に細菌懸濁液を噴霧接種し,24時間湿室に保持後温室に移して発病を調査した.その結果,籾の感受性は開花日に最も高く,ついで開花後3日間は高く経過したが,開花後4日以降と開花前の籾では顕著に低かった.開花前に接種した籾では,開花日に再度相対湿度95%以上の条件下に置かれた時に激しい発病が見られ,感受性の高い期間の高湿度条件が発病に重要であることが示唆された.一穂での開花頻度(観察値)と籾の日別発病度(実験値)から,穂の日別感受性値(相対的累積感受性値,TP)を求め,試験で得られた穂の日別発病度(実験値)と比較したところ,両者における感受性の経時的変化はほぼ一致した.このことから,穂の感受性は穂を構成する籾の開花頻度に大きく依存していることが示唆された.そこで,穂の日別発病度(実験値)と本田での出穂頻度(観察値)から本田のイネ群落での感受性を推定した結果,得られた値(相対的累積感受性値,Tt)は3品種ともに出穂期(出穂率40%以上の日)後急速に増加し,同4∼5日後に最も高く,同12日後には著しく低下した.以上から,本病に対するイネ群落の感受性の高い期間が出穂期から11日間程度ときわめて短いことが示された.
  • 佐藤 守, 森長 晴子, 西山 幸司
    1995 年 61 巻 2 号 p. 114-118
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Pseudomonas syringaeのプラスミドであるpBPW1と広宿主域プラスミドRSF1010の植物病原細菌と葉面細菌間のin planta接合伝達について調べた。P. syringae pv. atropurpurea NIAES 1309内のプラスミドpBPW1:: Tn7はイタリアンライグラスでのin planta接合によって受容菌のPseudomonas viridiflava Ko8に高頻度で移行した。その伝達頻度はin vitro接合よりはるかに高かった。また,pBPW1:: Tn7はイタリアンライグラス上でErwinia herbicola DW1とMei3にも移行したが,DW1中では複製されずTn7のみ転移した。一方,クワにおいては,pBPW1の可動化によりRSF1010がP. syringae pv. moriからE. herbicola DW1とMei3に高頻度で伝達した。この場合もpBPW1はDW1では複製しなかった。以上のように,これらプラスミドがP. syringaeの2つのpathovarと自然界に普通に存在する2種の葉面細菌との間でin planta接合伝達を起こすことが明らかになった。
  • 西口 正通, 森 昌樹, 鈴木 文彦, 長田 龍太郎, 森下 敏和, 酒井 淳一, 花田 薫, 宇杉 富雄
    1995 年 61 巻 2 号 p. 119-122
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    サツマイモ斑紋モザイクウイルスの強毒系統(SPFMV-S)を特異的に検出するRT-PCR手法を検討した。SPFMVの2系統,強毒(S)及び普通系統(O)の塩基配列をもとに,SPFMV-S特異的プライマーを合成した。ウイルスRNAを鋳型にして,RT-PCRを行ったところ,SPFMV-SのRNAでのみDNA増幅が観察された。同様に感染アサガオの磨砕液上清を供試したところ,SPFMV-S感染葉においてのみDNAバンドが検出されたが,感染サツマイモ葉の上清あるいは粗RNAでは検出されなかった。ウイルスRNAを含む反応液に粗RNAの希釈液を添加したところ,10-2液では阻害され,10-3液では阻害されなかった。このことはサツマイモにはRT-PCRを阻害する物質が含まれることを示唆する。
  • 内野 浩克, 神沢 克一
    1995 年 61 巻 2 号 p. 123-126
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    2波長光学濃度差測定方式の携帯型葉緑素計SPAD-502を用いて,テンサイそう根病による黄化葉の黄化程度の評価を試みた。健全個体のSPAD値を葉位別に図示すると,芯葉及び外葉部では低いが,成葉部ではほぼ一定の高い値を示す台形のパターンが描かれた。そう根病個体のSPAD値は,健全個体と同様,台形のパターンを示したが,同一栽培条件下では健全個体に比べて常に低い値となった。黄化症状として一般的な窒素欠乏の個体もSPAD値は低かったが,芯葉から外葉に向かって値が漸減するパターンを示すため,そう根病個体とは区別できた。そう根病による黄化の激しい圃場ではSPAD値はより低い値となり,SPAD値とテンサイ根部の被害との間には相関が認められた。以上より,そう根病の罹病程度をSPAD値を用いた黄化程度として定量的に測定できることが明らかとなった。
  • 上運天 博
    1995 年 61 巻 2 号 p. 127-129
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Xf2ファージ産生菌であるXanthomonas campestris pv. oryzae N5845およびN5875から全DNAを抽出し,セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼで直接標識したXf2の複製型(RF) DNAをプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行った。その結果,N5845およびN5875の染色体DNAとハイブリッドを形成した。さらに全DNAをBamHIまたはEcoRIで消化した後,ハイブリダイゼーションを行った結果,Xf2 DNAと宿主細菌の染色体DNAから成る断片とハイブリッドを形成した。以上の結果より,Xf2ファージ産生菌のN5845およびN5875の染色体DNAにXf2 DNAが組み込まれていることが明らかとなった。
  • 笹谷 孝英, 山本 孝〓
    1995 年 61 巻 2 号 p. 130-133
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    間接-ELISAを用いてウリ類に発生する3種のpotyvirus(カボチャモザイクウイルス:WMV2,ズッキーニ黄斑モザイクウイルス:ZYMV,パパイア輪点ウイルス-W: PRSV-W)を検出する場合は,3種の抗血清は異種ウイルスにも反応を示す。特にWMV2の抗血清はZYMVに,ZYMVの抗血清はWMV2と強く反応を示し,両ウイルスの識別が困難である。この交差反応をなくすため異種ウイルスで抗血清を吸収することを試みた。そこで,異種ウイルスの純化試料を0.05M炭酸ナトリウム緩衝液(pH 9.6)で処理したもの,あるいは感染葉を0.05M炭酸ナトリウム緩衝液(pH 9.6)で磨砕し,0.02Mトリス緩衝液(pH 7.5)で透析したもので,抗血清を希釈して用いるとこの交差反応は抑えられ,本法によりWMV2, ZYMV, PRSV-Wを特異的に検出することが可能となった。
  • 3. 幼芽へのPseudomonas glumaeの感染
    曵地 康史, 奥野 哲郎, 古澤 巖
    1995 年 61 巻 2 号 p. 134-136
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Pseudomonas glumae汚染イネ種子とFITCで標識したP. glumaeに対する蛍光抗体を用いて,P. glumaeの幼芽における感染部位,およびP. glumaeの幼芽への感染とオキソリニック酸の種子処理効果との関係について検討した。P. glumaeに特異的な蛍光が,浸種前や催芽後の穎の表皮に認められた。催芽後の幼芽では,蛍光は表皮に認められたが,葉肉には認められなかった。オキソリニック酸を種子処理したところ,処理直後の種子では穎の表皮に蛍光が認められたが,催芽後の種子と幼芽に蛍光は認められなかった。すなわち,オキソリニック酸による種子処理は,イネ苗腐敗症の発病に重要である幼芽表皮へのP. glumaeの感染を阻害して,イネ苗腐敗症に対して高い防除効果を示すことが明らかとなった。
  • 角谷 晃司, 豊田 秀吉, 田和 直子, 川上 孝雄, 松田 克礼, 大内 成志
    1995 年 61 巻 2 号 p. 137-140
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    トマト青枯病菌の染色体からプロモーターを分離するため,プロモーター欠失型lux遺伝子オペロンを有するトランスポゾンTn4431を接合伝達法で本菌染色体に導入した。発光能を獲得した形質転換体から染色体ライブラリーを作製し,得られたクローンをluxC遺伝子とハイブリダイズさせ,陽性クローンのDNAをGUS遺伝子に連結して,その遺伝子発現活性の有無からプロモーターを選択した。その結果,高いプロモーター活性の認められるサブクローンが得られたので,その全塩基配列を決定した。また,このプロモーターを既存のプラスミドに導入し,さらに若干の制限酵素部位を付加して,青枯病菌で有効に機能できる形質転換ベクターを構築した。
  • 富樫 二郎, 黒田 博, 生井 恒雄
    1995 年 61 巻 2 号 p. 141-143
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1992年5月から10月にかけて,山形県鶴岡市周辺で圃場に残存している外見上健全な野菜類の組織から軟腐病菌の検出を試みた。ハクサイ,ダイコン,ニンジン等17種の野菜類の中肋,根部,塊茎等を70%アルコールで表面殺菌後無菌的に磨砕し,その中の軟腐病菌を変法ドリガルスキー培地を用いた希釈平板法により検出した。この結果,ホウレンソウ,カブ,キャベツ,キクイモ,ナス,ジャガイモ,ダイコン,ニンジン,ハクサイの9種類の野菜から生組織1g当り102∼104cfuのレベルで軟腐病菌が検出された。また,同一平板上に形成された集落から,軟腐病菌以外のグラム陰性細菌が供試したすべての野菜の生組織に1g当り102∼104cfuのレベルで生存していることが示された。検出された軟腐病細菌は細菌学的諸性質および接種試験の結果より,pectolytic Eywiniaに属するErwinia carotovora subsp. carotovoraと同定された。しかし,軟腐病の感染源としての役割は今のところ不明である。
  • 光明寺 輝正, 杉本 光二, 鈴木 一実
    1995 年 61 巻 2 号 p. 145-149
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    殺菌剤フルアジナムが数種の植物病原菌の感染過程に及ぼす影響を調べた。本剤は灰色かび病菌,炭そ病菌,疫病菌およびいもち病菌の胞子発芽,付着器形成,付着器侵入,菌糸生育等の形態分化をin vitro条件下で阻害した。一方,植物体を用いた実験では,侵入後の処理で病斑形成阻止効果がほとんど認められないことから,本剤の防除効果はおもに侵入器官形成以前の段階での阻害作用によると考えられた。また感染後の処理で病斑上の胞子形成を阻害することから,二次伝染抑制作用も有する可能性が示唆された。
  • 重田 進, 中田 榮一郎
    1995 年 61 巻 2 号 p. 150-157
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1987年6月,山口県大島郡においてイヨの葉に大型で明瞭な黄色ハローを伴った褐色斑点の生じる病害が発生した。発生はイヨだけで認められ,その他のカンキツ類では確認されなかった。また,葉のほか花弁,めしべ,幼果でも病斑が認められた。本病原菌は寄生性がやや異なっていたがその細菌学的性質からPseudomonas syringae pv. syringae van HALL 1902と同定した。P.s. pv. syringaeによる病害に,citrus blastや,black pitがあるが,本病の病徴とは異なっている。よって病名をカンキツ褐斑細菌病(Bacterial brown spot of citrus)とすることを提唱する。
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