日本植物病理学会報
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38 巻, 2 号
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  • 植物疾病に対する物理的要因の影響 IV
    池上 八郎, 高木 勇
    1972 年 38 巻 2 号 p. 91-94_2
    発行日: 1972/03/20
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    イネごま葉枯病菌分生胞子は100-500kg/cm2の静水圧下で28℃, 5時間連続加圧されたとき,発芽管長は加圧度の増すにつれて短くなった。その発芽管の形状は糸状,長楕円状,そして球状へと変った。発芽管における核は無処理では細胞内に分散していたが,200kg/cm2では桑果状であった。600kg/cm2およびそれ以上の静水圧では分生胞子の発芽はみられなかった。
    上述のように100-700kg/cm2で加圧して得た分生胞子をスライド上で発芽に好適な条件下においたところ,すでに生じていた異常な発芽管および発芽しなかった分生胞子から普通の発芽管が旺盛に伸長した。しかしこれらの発芽管は静水圧が高くなるにつれて異状分岐の割合を増した。
  • 植物疾病に対する物理的要因の影響 V
    池上 八郎, 高木 勇
    1972 年 38 巻 2 号 p. 95-99
    発行日: 1972/03/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネいもち病菌分生胞子は0, 500, 1,000, 1,500および1,800kg/cm2で10分間加圧された場合,発芽率は97%から16%に低下した。イネ葉に対するこれらの分生胞子による病斑の形成数は発芽率に比例して減少した。0-1,000kg/cm2において,付着器を生じた分生胞子は発芽管だけのものより多かったが,1,500および1,800kg/cm2では付着器を生じた分生胞子は発芽管だけのそれらに比べて少なかった。罹病性病斑数は加圧度が0-1,800kg/cm2に増すにつれてイネ葉身10cm当り7.5から0.5個に減ったが,抵抗性病斑は10cm当り各区ともほとんど1個で変らなかった。
    イネごま葉枯病菌分生胞子は上述のような種々の静水圧で処理されたとき,加圧度が増すにつれて発芽と病斑の形成数は減じたが,イネいもち病菌ほどは減少しなかった。1,500kg/cm2以上の静水圧で処理した分生胞子によって生じたイネ葉上の病斑の大きさはそれ以下で加圧した分生胞子から生じた病斑よりも小さくなった。
  • 渡辺 恒雄
    1972 年 38 巻 2 号 p. 100-105
    発行日: 1972/03/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    市販のインゲン種子(品種トップクロップ)の約2%がMacrophomina phaseoliに感染しており,その種子に付着した土壌あるいは植物残渣中には種子100g当り平均約6個の生存菌核が存在していた。またその採種圃の土壌には風乾土1g当り平均11個の生存菌核が存在しており,インゲンを播種するとこの菌により感染した。インゲン種子,その付着残渣,および土壌から分離したM. phaseoliのほとんどの分離菌株がインゲンに対し感染力を有していた。
    このような由来を異にした各2菌株を用いて土壌に接種して病原性試験を行なったところ,土壌からの分離株がやや強い病原性を示した。またこれら6菌株によるインゲンの平均発病率は30°C以上の条件下では21.9%, 26°Cでは10.5%であった。また病徴を示さないが,菌が再分離された外観的な健全株をも含めた感染率は,30°C以上では32.2%, 26°Cでは21.0%で,30°C以上の高温でM. phaseoliは強い病原性を示した。
    種子や土壌に存在するM. phaseoliは環境条件しだいで強い病原性を発揮する潜在能力を有しているものと思われる。
  • 渡辺 恒雄
    1972 年 38 巻 2 号 p. 106-110_1
    発行日: 1972/03/20
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    日本の4地方の土壌から分離した28菌株,インゲン種子から分離した7菌株,および種子に付着した土や植物残渣などから分離した15菌株の合計50菌株を用いてwater agar上の乾燥ずみのインゲン莖上で柄子殻形成を行なわせたところ 1) 30℃, 2,000-3,000luxの連続照明下, 2) 26℃の自然光下, 3) 18-42℃の変温下の各条件下でそれぞれ,5, 11, 16菌株が柄子殻を形成した。供試菌株中No.12, No.51, No.179は比較的安定していずれの環境条件下でも柄子殼を形成した。
    柄子殻形成は菌株自体の能力により相異があり光,温度などの環境条件も影響している。
  • 渡辺 恒雄
    1972 年 38 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 1972/03/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    市販のインゲン種子(品種,トップクロップ)を低温殺菌した土壌(70°Cで1時間蒸気殺菌)に播種したところ18-23%が発芽せず,また発芽した子苗の約7.5-14.5%が何らかの病徴を示した。その発病株からはColletotrichum lindemuthianum,やRhizoctonia solaniなどの病原菌が分離された。そこで長野県産で採種圃の異なる3群の市販の種子を表面殺菌後PDA培地上に置いて糸状菌を分離し,その菌相を調べた。これらの3群の種子からは合計1,036菌株を分離したが,それらは24属に分類された。おもな属はAlternaria, Fusarium, Colletotrichum, Chaetomium, Rhizoctoniaで,これらは全分離菌株数の約86%を占めた。
    また種子から分離した合計89菌株を土壌に接種して,インゲンに対して病原性試験を行なったところ,強い病原性を示したのはColletotrichum lindemuthianum, Macrophomina phaseoli, Rhizoctonia solaniの3種であった。供試した市販の種子は22-41粒につき1粒の割合で上記の病原菌のいずれかによって汚染されていた。
  • 生越 明
    1972 年 38 巻 2 号 p. 117-122_1
    発行日: 1972/03/20
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    1. Rhizoctonia solani (Thanatephorus cucumeris)の分離菌株234株について相互間の菌糸融合を調べたところ,214株を菌糸融合の有無によって6群に分けることができた。なおこれら6群に属さない菌株が20株あった。
    2. 菌糸融合にいたるまでの過程で,対峙された菌株が相互に誘引されて接触し,菌糸融合にいたる場合,一方だけが誘引される場合,まったく誘引現象がなく,菌糸融合は偶然の接触による場合が観察された。
    3. 同一菌株内での菌糸融合は完全融合であった。同群異菌株間では不完全融合および接触融合(contact fusion)であった。不完全融合では続いて細胞の死が起こるのが普通であった。
    4. 菌糸融合第1群にはイネ,サトウダイコンおよび土壌からの分離株が多く,またイネ紋枯病菌,くものす病菌もこれに含まれる。第2群はアブラナ科,アマおよび土壌からの分離株に多かった。第3群はナス科(ほとんどジャガイモ)からの分離株だけであった。第4群はマメ科,サトウダイコンおよび土壌からの分離株に多かった。第5群は土壌からの分離株に多く,第6群はサトウダイコンおよびその栽培されていた土壌からの分離株に多かった。
    5. 本実験結果からR. solaniにおける寄生性の分化および生態的分化が示唆された。
  • 生越 明
    1972 年 38 巻 2 号 p. 123-129
    発行日: 1972/03/20
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    1. Rhizoctonia solani (Thanatephorus cucumeris)の菌糸融合群6群について,生育温度,伸長速度,菌糸幅,核数,培養菌叢の形態を調べ,既報の研究との対比を試みた。
    2. 菌糸融合群第1群は好高温性であり,伸長速度はもっとも大であった。菌核組織は緻密であり,この群にはイネ紋枯病菌,くものす病菌が含まれる。
    3. 第2群は好低温性であり,赤褐色の菌核が輪紋状に形成されるものがほとんどであった。
    4. 第3群も好低温性であり,また菌糸幅のもっとも大きい群であった。この群の菌株のほとんどがジャガイモから分離されたものであった。
    5. 第4群はもっとも好高温性で,菌糸幅が細く,“praticola type”に属し,その菌叢はしもふり状を呈した。
    6. 第5群は土壌からの分離株に多く,黄白色の菌叢をもつ。
    7. 第6群はサトウダイコンからの分離株が大半をしめ,菌叢は黒褐色に着色し,その菌核組織は粗であった。
    8. 第1群,第2群,第3群,第4群はそれぞれ,SchultzのI, II, III, IV群に,Richter & SchneiderのA, D, F, C群に,ParmeterらのAG-1, AG-2, AG-3, AG-4に,また渡辺・松田のイネ紋枯病系および樹木苗くものす病系,アブラナ科低温系,ジャガイモ低温系,苗立枯病系に相当する。第5群はRichter & SchneiderのB群に相当すると考えられる。第6群は渡・松田のイ紋枯病系およびサトウダイコン根腐病系に相当する。
  • 生越 明, 横沢 菱三, 酒井 隆太郎
    1972 年 38 巻 2 号 p. 130-136
    発行日: 1972/03/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. 本州の14県,50ヵ所のアブラナ科野菜栽培土壌について,アブラナ科作物に寄生性を有するAphanomyces属菌の検出を行なった結果,6県20ヵ所から検出された。
    2. これらのうち長野県,埼玉県,鳥取県および群馬県から分離した4菌株について,病原性,培養性質,形態,種名を検討した。
    3. 4菌株とも供試した7科の作物のうち,アブラナ科作物にだけ病原性を示した。
    4. 菌の生育はPDA, RAで良好であり,CMAでは不良,MAでは鳥取菌株を除き,かなり生育した。
    5. 生育温度は10-30°Cであり,5, 33, 35°Cでもごくわずかに生育する菌株もあった。生育適温は23-28°Cであるが長野菌株は若干高温の傾向があった。
    6. 50, 100ppmのstreptomycin sulphateによって鳥取,群馬両菌株はわずかに生育を阻害され,埼玉,長野両菌株はむしろ生育促進的であった。ストレプトマイシンを分離培地に用いることは可能である。
    7. これらの菌株の蔵卵器,卵胞子の大きさは,長野,埼玉菌株はDrechslerのA. raphaniの記載に,鳥取,群馬菌株は土屋らのA. raphaniの記載に近い値を示した。蔵精器の蔵卵器への付着の様相,病原性はいずれの菌株も前者らの記載と一致し,これら4菌株はA. raphaniと同定された。
  • 第3報 Cucumber mosaic virus, tobacco rattle virus, broad bean wilt virusについて
    岩木 満朗, 小室 康雄
    1972 年 38 巻 2 号 p. 137-145
    発行日: 1972/03/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    各種病徴を示しているスイセンから,汁液接種により分離したウイルスのうち,3種ウイルスについてその諸性質を調べたところ,cucumber mosaic virus (CMV), tobacco rattle virus (TRV), broad bean wilt virus (BBWV)と同定された。
    1) CMVこのグループに属するウイルスは房咲,ラッパ,大杯スイセンから検出された。数種植物における病徴および抗CMV-Y血清と特異的な反応を示したことから,これらウイルスはCMVと判断した。
    2) TRVラッパスイセン2株と大杯スイセン2株から検出された。本試験にはこのうちラッパスイセン(病株番号42-15)から分離したウイルスについておもに試験した。13科37種のうち10科30種の植物に感染が認められた。モモアカアブラムシによっては伝搬されなかった。耐熱性は75-80°C(10分),耐希釈性は10万-100万倍,耐保存性は20週間以上(20°C)であった。ウイルス粒子の形態は幅約23mμの直桿状粒子で,その長さは190-200mμと70-80mμの2ヵ所にピークがあった。家兎を用いて作製した抗血清は沈降反応混合法で512倍の力価を示した。この抗血清を用いて他の分離株と血清学的類縁関係を調べたところ,供試したラッパスイセンからの分離株は反応しなかったが,大杯スイセンからの1分離株は反応した。またアスターから分離されたTRV-Aとの血清学的類縁関係を調べたところ,反応しなかった。TRV-Aと血清学的に関係なかったけれども,以上の諸性質からTRVグループに属するものと判断した。
    3) BBWV房咲スイセンから分離された。10科41種のうち8科24種の植物に感染が認められた。モモアカアブラムシにより非永続的に伝搬された。耐熱性は60-65°C(10分),耐希釈性は100-1,000倍,耐保存性は3-4週間(20°C)であった。ウイルス粒子の形態は径24mμの球形であった。家兎を用いて作製した抗血清は寒天ゲル拡散法で本ウイルスと特異的反応を生じた。また本ウイルスはTaylorの抗BBWV血清と寒天ゲル拡散法で特異的な反応を示した。これらの諸性質から本ウイルスをBBWVと同定した。
  • 呉 文川
    1972 年 38 巻 2 号 p. 146-155
    発行日: 1972/03/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Xanthomonas citriのsmooth菌株(S)がそのテンペレートファージPXC7に感染すると,溶原化した細胞からなるdwarf (D)型集落を形成する。この溶原性D型変換体(D (PXC7))をnutrient brothで72時間培養すると,各菌株の細胞の約0.1-6%がS型にもどった。これらのもどったS型菌の60%は溶原性のままであった(溶原性S型復帰突然変異体,S (PXC7))が,その他はそれを失っていた。D (PXC7)はアミノ酸,ビタミン,核酸塩基などの添加によってS型に回復することはない。しかしS (PXC7)に比べて,PXC7を高頻度に自然誘発し,増殖率は低く,集落に含まれる菌数が少ない。このことから,D (PXC7)によるPXC7の高頻度な自然誘発がdwarf型集落出現の原因となっていると結論される。SからD (PXC7)への変換にともなって,ビルレントファージCP1に対する感受性,マンニット,ラクトーズ発酵,殿粉の加水分解,カタラーゼ活性および抗原性などに,質的変化は生じないが,一部の菌体は鎖状となり,Sに対して感染性をもつビルレントファージCP2には抵抗性となる。
  • 田中 寛康
    1972 年 38 巻 2 号 p. 156-160
    発行日: 1972/03/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1966年から1967年にかけて温州萎縮病ならびにナツカン萎縮病罹病樹の保毒するウイルス(SDVならびにNDV)を,カーボランダム法によって種々のカンキツ実生苗に汁液接種した。その結果,SDVを接種した場合は,接種後10ヵ月以内に温州ミカンの自然交雑種ならびにナツカン実生苗にleaf curlingやline patternを,温州ミカン実生苗には接種後4年めに舟型葉を生じた。またゴマテストによってSDVの伝搬を調べた結果,接種した64個体中23個体が陽性の反応を示し,平均感染率は35.9%であった。一方,NDVを接種した場合は,接種後10ヵ月以内にナツカン実生苗にはleaf curlingやmottlingを,ユーレカレモン実生苗にはcircular clear spotを生じたが,後者はcitrus crinkly leaf virusによる病徴と同じものと考えられた。ゴマテストの結果,81個体中16個体が陽性の反応を示し,平均感染率は19.5%であった。
  • 桐山 清
    1972 年 38 巻 2 号 p. 161-163
    発行日: 1972/03/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1972 年 38 巻 2 号 p. 164
    発行日: 1972年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
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