1977年頃から滋賀県マキノ町において,クリの越年枝にこぶ様の膨みが生じ,やがて皮層部がかいよう状の症状を呈し,芽や枝が枯れ込む被害を起こす新しい病害が発生し,筆者らはクリかいよう病と命名した。
滋賀,三重,および岐阜の3県下のクリ罹病越冬枝に生じたかいよう症状,新梢のがんしゅ症状から分離された細菌株を,クリの新梢に針束付傷接種したところ自然発生病徴と似たがんしゅを形成し,病原性が認められた合計144菌株は,生理・生化学的性質が均一で,ビワのがんしゅ病病原細菌
Pseudomonas syringae pv.
eriobotryaeと高い類似性を示した。また数種木本植物に対する病原性でも近似の反応が示された。しかし,本病病原細菌はクリの発育中の新梢に表面粗造ながんしゅ状こぶ病斑を形成すること,およびビワ実生苗に付傷接種すると,接種8週間後まではビワがんしゅ病菌と同様な症状で推移したが,それ以降,がんしゅ状壊死部の剥離がおこり,12週間後には病斑部の治癒がみられるなどの病原性の相違が認められ,両菌は近縁な病原性を有する細菌と考えられるが,本病原細菌がクリに特異的に病原性を示すことから新しいpathovarとするのを適当と考え,
Pseudomonas syringae pv.
castaneae pv. nov.と命名することを提唱した。そしてC3菌株をpathotype strainと指定し,ICMP No.9419, NIAES No.2088,また,C17とC47菌株をreference strainとして,それぞれICMP No.9420, NIAES No.2089およびICMP No.9421, NIAES No.2090の番号で寄託した。
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