日本植物病理学会報
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39 巻, 4 号
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  • 第4報 Tomato black ring virusについて
    岩木 満朗, 小室 康雄
    1973 年 39 巻 4 号 p. 279-287
    発行日: 1973/09/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    静岡県小笠郡で採集したラッパズイセン(供試株番号N42-36)から分離された1ウイルスについて,その諸性質を調べ,同定を行なった。
    1. 14科49種の植物に汁液接種したところ,14科39種の植物に感染が認められた。寄生性は広いが,病徴を発現する植物は比較的少なかった。C. amaranticolor,ツルナ,インゲンなどにはよく病徴を発現し,判別植物として使用できる。
    2. モモアカアブラムシとLongidorus martiniによっては伝搬されず,ハコベとダイズで種子伝染が認められた。
    3. 耐熱性は60∼65C (10分),耐保存性は14∼21日(20C)であった。
    4. 部分純化ウイルス標品についてネガティブ染色法で電顕観察したところ,径約25nmの球形粒子が認められた。
    5. 部分純化ウイルス標品を家兎に注射して作製した抗血清は沈降反応混合法で512倍の力価を示した。
    6. 本ウイルスと数種NEPO群ウイルスとの血清学的類縁関係を寒天ゲル拡散法により調べたところ,arabis mosaic, cherry leaf roll, raspberry ringspot, strawberry latent ringspot, tobacco ringspot, tomato ringspot virusとは反応帯を生せず,tomato black ring virusとのみ特異的な反応帯を生じた。とくにこのウイルスの1系統であるbeet ringspot virusとその反応帯がよく一致した。
    7. 以上の結果から本ウイルスはtomato black ring virusとくにその系統であるbeet ringspot virusと同じか近縁なウイルスと判断され,和名はトマト黒色輪点ウイルスとした。
  • 第7報 スモモおよびサクラの黄色網斑病について
    岸 国平, 我孫子 和雄, 高梨 和雄, 矢野 龍
    1973 年 39 巻 4 号 p. 288-296_2
    発行日: 1973/09/30
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    1. 黄色網斑病はスモモのホワイトプラム,Methley, Burbank, Hungarian-prune, Red June, Beauty, Santa Rosa,大石早生などの品種およびサクラの染井吉野,孫普賢,嵐山,類嵐,関山などの品種に自然発生が認められた。
    2. 本病は接木によってスモモおよびサクラから,モモ,ウメ,アンズ,スモモ,サクラ,オウトウなどに伝染した。
    3. 本病はスモモおよびサクラではyellow vein net, yellow line pattern, chlorotic ring spot, chlorotic spotなどの症状を示し,モモ,アンズ,オウトウなどでは主としてline patternを,ウメではyellow vein netおよびline patternを生ずるとともに著しい萎縮症状を示した。
    4. 本病罹病樹からは1種の汁液伝染性ウイルスが分離されたが,本ウイルスはキュウリの接種葉にlocal lesionを生ずるのみでGatjang,ペチュニア,N. tabacum, N. megalosiphon, N. glutinosa, C. amaranticolor, C. quinoaなどFulton, Kirkpatrickらがplum line pattern virusの寄主として報告した植物に感染しなかった。
    5. 本病およびリンゴモザイク病はともにクサボケに伝染し,きわめて類似した症状を示したが,本病はリンゴに感染せず,またリンゴモザイク病はモモに発病しなかった。
  • 第8報 核果類から分離されるCucumber mosaic virusについて
    岸 国平, 我孫子 和雄, 高梨 和雄
    1973 年 39 巻 4 号 p. 297-304
    発行日: 1973/09/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. スモモおよびサクラを芽接ぎ接種したモモ実生から,汁液接種によりキュウリに全身染するウイルスが得られた。
    2. 本ウイルスは,分離株により多少違いがあるが,対照として用いたCMVときわめて近い寄主範囲をもち,不活化温度(60∼65C, 10分),希釈限界(約10,000倍),保存限界(13∼15日)等もCMVとほぼ等しく,モモアカアブラムシおよびワタアブラムシによって伝搬される。また形態は約30nmの球状粒子であり,CMV-Y系統の抗血清と陽性の反応を示した。以上の点から本ウイルスをCMVと同定した。
    3. モモアカアブラムシおよびワタアブラムシを用い,モモ,スモモ,アンズ,ウメ,サクラから直接検出を試みた結果,サクラ(染井吉野)の12本中5本からCMVが検出された。
    4. 染井吉野では,黄色網斑病にかかった個体からもCMVが検出されたが,外観健全な個体からも検出され,CMV保毒と黄色網斑病の病徴との間には関係が認められなかった。
    5. 核果類から検出されたCMVのうち,スモモ株-2(品種Burbankより分離)は普通系統群に,スモモ株-1(品種Methleyより分離)は普通系統群の中のウリ科植物における寄主範囲の広い系統に,またサクラ株はアブラナ科系統群に近い寄主範囲を示した。
    6. 草本植物からモモおよびPrunus mahaleb実生へのアブラムシによるもどし接種は不成功であった。
  • 清沢 茂久, 趙 正翼
    1973 年 39 巻 4 号 p. 305-311
    発行日: 1973/09/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    いもち病菌の3菌系の宿主植物上での病斑形成と胞子形成へのイネの5あるいは10品種の抵抗性を温室で試験した。胞子形成に対する抵抗性の品種間差異は1回の実験では認められず,2, 3回実験を繰返すことにより認められるが,病斑形成に対する抵抗性の品種間差異は,その抵抗性指標に用いた病原力の環境変異が大きいため,1回の実験で認められるときと認められないときがあった。しかしながら,圃場抵抗性との相関関係は胞子形成に対する抵抗性よりも病斑形成に対する抵抗性の方が大きかった。病斑形成への抵抗性と胞子形成への抵抗性との間に相関関係は認められなかった。
  • 田中 行久
    1973 年 39 巻 4 号 p. 312-317
    発行日: 1973/09/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1970年,山口県下のタバコ栽培地帯(品種Hicks)に黒褐色∼茶褐色の角形斑点およびえそを生ずる病害が発生した。被害葉から細菌を分離し,病原性および細菌学的ならびに血清学的性質について調査したところ,分離菌株の細菌学的性質はタバコ野火病菌のそれと同一であった。分離菌株および野火病菌は抗野火病菌血清て凝集し,その最終力価には菌株間差異がみられなかった。寒天ゲル拡散法によると,抗野火病菌血清と各分離菌株および野火病菌の加熱処理(120C 20分)抗原との間に1本のゆ合した反応帯を生じたが,交叉することはなかった。分離菌株をタバコ葉に噴霧接種した時,自然病斑と類似の病斑が出現したが,野火病のように病斑の周囲に黄色のかさ(暈)を生ずることはなかった。
    本分離菌株は野火病菌と細菌学的性質および血清学的性質が変わりないが,病徴が異なるので,Pseudomonas angulata (Fromme and Murray) Hollandと同定され,その病名を角斑病(angular leaf spot)とした。
  • 桐山 清, 大隅 斉
    1973 年 39 巻 4 号 p. 318-324
    発行日: 1973/09/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    タバコモザイクウイルス(TMV)およびキュウリモザイクウイルス(CMV)を抗原として注射したマウスにEhrlich腹水癌を接種し,生じた腹水中の抗体産生について検討した。抗原をFreund's complete adjuvantとともに3回注射した結果TMVでは抗原量3mgで抗体価1024倍,CMV-Oでは0.3mgで128倍,1.75mgで512倍の抗体価の腹水が得られた。1匹のマウスから得られた腹水量は,最高で38mlであった。各種抗原の注射条件を検討した結果0.1∼1mgの抗原をadjuvantと混合し,1週間間隔で3回注射し最後の注射の1週間後に腹水癌を接種し,1∼3回にわたって腹水を採取する方法が最良であった。この方法は純化が困難で収量の少ない植物ウイルスに対する抗体産生に有用と考えられる。
  • 玉田 哲男, 馬場 徹代
    1973 年 39 巻 4 号 p. 325-332_1
    発行日: 1973/09/30
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    先に神沢と宇井によって報告されたサトウダイコンそう根病罹病植物から病原の一つと考えられるウイルスが分離されたので報告する。このウイルスはイタリーでCanovaが記載したvirus A(仮称)と類似しているが,virus Aは未同定であり,また他に記載のないウイルスと考えられたので,本ウイルスをサトウダイコンえそ性葉脈黄化ウイルス(beet necrotic yellow vein virus (BNYVV))と名付けた。
    BNYVVは土壌伝染性であり,土壌中のPolymyxa betae Keskinと関連があるらしい。そう根病汚染土壌にサトウダイコンを育成すると,ウイルス症状の出現率は低率であったが,根では多くの個体からウイルスが検出された。BNYVVは汁液接種によって伝染したが,モモアカアブラムシ(Myzus persicae (Sulzer))とジャガイモヒゲナガアブラムシ(Aulacorthum solani (Kaltenbach))による接種結果は陰性であった。16科84種の植物に対して汁液接種した結果,アカザ科15種とツルナおよびセンニチコウのみに感染した。感染植物の接種葉には,局部病斑を生じたが,ときにサトウダイコン,ホウレンソウおよびBeta macrocarpaは全身感染することがあった。全身的に感染したサトウダイコンには,葉脈退緑,葉脈黄化,葉脈壊死,葉の退緑斑点,モザイク,奇形,縮葉など各種の症状が現われ,植物体はいちじるしく萎縮し,根は肥大せず枯死することが多かった。
    BNYVVの粗汁液中での耐熱性65-70C,耐希釈性10-4,耐保存性20Cで5日間,4Cで8日間であった。粗汁液を凍結融解すると活性はいちじるしく低下した。ウイルス粒子は径20nmの桿状で長さ95-110nmに最大のピークがみられ,他に255-270nmと370-390nmにそれぞれピークがあった。有機溶媒処理(四塩化炭素とダイフロンS-3)とポリエチレングリコールによる沈澱をくり返して部分純化した。この純化試料をウサギに注射したところ,力価1,024倍の抗血清が得られた。このウイルス抗原と抗体とは寒天ゲル内拡散法でも反応した。なお,BNYVVはsoil-borne wheat mosaic virus, tobacco rattle virus,およびtobacco mosaic virusとの血清関係は認められなかった。Gibbsらによって提案されたウイルスの分類記号を用いるとBNYVVは,*/*:*/*:E/E:S/(Fu)となる。
  • 渡辺 恒雄
    1973 年 39 巻 4 号 p. 333-337
    発行日: 1973/09/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Macrophomina phaseoli菌の自然汚染土壌を20Cに保存し同菌の土壌中の菌数を士壌平板法で定量し,菌数の経時的変化を調べた。長野県の土壌には風乾土1g当たり最初9個検出されたが,2.5年後には4個,4.17年後には2個に減少した。土壌中の同菌の半減期(Half-life)は平均1.88年であった。また3.5年保存した沖縄の2個所の異なるサトウキビ畑の土壌にはそれぞれ3∼8個検出できたが5.75-6年後にはまったく検出できなかった。in vitroで形成した菌核の寿命をそれぞれの菌株当たり50∼100個の菌核について調べたところ,培養菌核では供試した3菌株が3年後16∼40%の生存率を有していたが4年後には5∼8%に減少した。組織形成菌核では供試した3菌株の3年後の生存率は1∼27%であったが,他の1菌株は2.25年後には2%生存していたが3年後には死滅した。土壌形成菌核では低栄養のWAに由来した菌核は3年後に4%生存していたがPDA由来では56%の高い生存率を示した。培養菌核,組織形成菌核,土壌形成菌核の半減期はそれぞれ1.05, 0.84, 0.65∼3.59年であった。in vitroで形成した菌核の寿命は菌株,菌核の調製方法,栄養源の違いにより異なっていた。
  • (3) イネいもち病菌の生育に及ぼすSodium N-lauroylvalinateの影響
    本間 保男, 中島 哲男, 志田 俊郎, 見里 朝正
    1973 年 39 巻 4 号 p. 338-343
    発行日: 1973/09/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    前報でN-lauroyl-L-valineはいもち病防除効果を有することが明らかとなったので,本剤がいもち病菌の生活史すなわち胞子発芽,付着器形成,菌糸侵入,菌糸伸長ならびに胞子形成などのどの生育期にもっとも作用するかを調べ,さらにD-異性体及びD-, L-体との比較をも試みた。その結果,L-体のNa塩は付着器形成を100μg/mlで,菌糸伸長を200μg/mlでそれぞれ約100%阻害した。またD-体のNa塩は付着器形成及び菌糸伸長を300μg/mlの濃度でそれぞれ90%以上阻害したが,他の生育期には軽い阻害しか示さなかった。さらにDL-体のNa塩は付着器形成を100μg/mlで約90%阻害し,他の生育期ではいずれもL-体より阻害率が劣っていた。したがってN-lauroylvaline各光学異性体のNa塩はいずれも付着器形成阻害をもっとも強く,ついで菌糸伸長を阻害した。またこれら異性体の間の阻害率はL>DL>Dの順であった。
  • 渡辺 恒雄, 尾沢 賢, 酒井 隆太郎
    1973 年 39 巻 4 号 p. 344-350_1
    発行日: 1973/09/30
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    長野県でハサイの新病害が1966年頃から見出され年々その発生面積を増しつつある。罹病植物は葉が黄化し,やや発育が衰え収穫期が近づいても結球しない。それらの根,茎部の導管部組織は黒変し,菌糸が観察された。それらの罹病組織からは病原菌として疑われたFusarium oxysporumはまったく分離されなかった。Cephalosporium sp.は最も高い頻度で分離されたがハクサイには病原性を示さなかった。Verticillium albo-atrumはその次によく分離され,ハクサイに対して,20℃の温室条件下で病原性を示した。人為的な病土と自然病土にハクサイを播種し罹病植物を比較すると両者の病徴はほぼ一致し,V. albo-artumが再分離された。根,茎部の導管変色は人為的な病土では播種後約40日頃から観察された。ハクサイのV. albo-atrumによる自然発病はこれまでのところ我国をはじめ諸外国でも報告されていないので,ここにハクサイを同菌の新しい寄主植物の一つとして報告し,同病害を黄化病と命名したい。
  • 谷井 昭夫, 尾崎 政春, 馬場 徹代
    1973 年 39 巻 4 号 p. 351-360_1
    発行日: 1973/09/30
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    1) 1955年ごろ,北海道根室支庁中標津町に,従来のジャガイモ軟腐病とは異なる病害が発見された。本病はその後発生地域が拡大し,1970年には十勝,上川支庁管内にも発生がみられるようになった。
    2) 本病の病徴は,茎基部の黒変腐敗,塊茎維管束部の褐変など,諸外国で知られているBlackleg diseaseによく類似していた(Plate 1, A, B, C, D, E and F)。
    3) 本病の病原細菌をジャガイモ茎に接種した結果,自然発病と同じ症状を呈し(Plate 1, G), 24.5Cより18Cの方が病状が激しかった(Table 2)。またこの病原細菌を健全塊茎に注入接種して播種すると,自然発病と同一の黒脚症状を呈した。さらに.E. chrysanthemiも同じ方法で黒脚症状を発現した(Plate 1, H)。
    4) マルトース,エタノール,α-メチルグルコシドの利用能およびE. atroseptica抗血清による凝集反応がE. carotovora, E. atroseptica,およびE. chrysanthemi 3菌種の区別に有効であるとするGrahamらの結果に一致し,またLoganの鑑別培地がE. atrosepticaE. carotovora, E. chrysanthemiの区別に有効であることを認めた(Table 3)。さらに血清学的には軟腐病原細菌と共通な沈降抗原の他に,供試した本病原細菌20菌株中,18菌株に共通な特異的沈降抗原の存在を認め,またE. chrysanthemiには共通沈降抗原は認められなかった(Fig. 1)。
    5) 病原細菌の細菌学的および血清学的性質,生態的特性などから,この細菌をErwinia atroseptica (van Hall) Jennison (E. carotovora var. atroseptica (van Hall) Dye)と同定した。
  • N. RISHI, K.S. BHARGAVA, R.D. JOSH
    1973 年 39 巻 4 号 p. 361-363
    発行日: 1973/09/30
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 鈴井 孝仁
    1973 年 39 巻 4 号 p. 364-366_1
    発行日: 1973/09/30
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    Stemphylium sp. was isolated from the lesions of asparagus plants in Hokkaido. The early symptoms on stems and cladophylla are spots which are light brown to gray in the center with red brown margin, 2-5×3-12mm. in diameter and the cladophylla defoliate later. The fungus is identified to be S. botryosum Wallr. and the author proposes the name of asparagus Hanten-byô (Stemphylium leaf spot).
  • 井上 成信
    1973 年 39 巻 4 号 p. 367-368_1
    発行日: 1973/09/30
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
  • 1973 年 39 巻 4 号 p. 370a
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1973 年 39 巻 4 号 p. 370b
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1973 年 39 巻 4 号 p. 370c
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1973 年 39 巻 4 号 p. 370d
    発行日: 1973年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
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