日本植物病理学会報
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74 巻, 4 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
原著
  • 田代 暢哉, 井手 洋一
    2008 年 74 巻 4 号 p. 297-303
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/03
    ジャーナル フリー
    極早生温州ミカンの緑かび病に対して,イミノクタジン酢酸塩液剤およびベンゾイミダゾール系薬剤の効果は不安定であるが,両剤を混用することによって,それぞれの薬剤の相乗効果が発現し,実用上十分な防除効果が得られた.イミノクタジン酢酸塩液剤に混用するベンゾイミダゾール系薬剤としては,ベノミル水和剤がチオファネートメチル水和剤よりも優れていた.イミノクタジン酢酸塩液剤とベノミル水和剤との混用散布時期の違いによる防除効果の差は,収穫3週間前から1週間前までの間はみられず,この間に150 mm程度の累積降雨量があっても防除効果が低下することはなかった.
  • 大矢 仁志, 中川 寛章, 齊藤 範彦, 上松 寛, 小原 達二
    2008 年 74 巻 4 号 p. 304-310
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/03
    ジャーナル フリー
    種子からスイカ果実汚斑細菌病菌Aacを直接検出する方法を開発した.方法は種子の洗浄水をメンブレンフィルターでろ過濃縮した後,LAMP法で検出するものである.病原関連遺伝子であるhrpG およびhrpX 遺伝子間スペーサー領域から設計したLAMPプライマーはAacのDNA断片を特異的に増幅した.本法により,スイカ,トウガン,マクワウリ種子それぞれ1000粒の洗浄水にAacを約1×103 cfu添加した場合まで検出可能であり,その検出時間は約2時間であった.さらにスイカおよびメロンの自然汚染種子6試料の洗浄水のすべてから本細菌に特異的なLAMP増幅がみられた.このことから,本法はAac汚染種子からAacを直接検出する手法として実用可能であると考えられた.
  • 小粥 理絵, 山口 秀幸, 福岡 真里, 丸尾 達, 雨宮 良幹, 篠原 温
    2008 年 74 巻 4 号 p. 311-315
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/03
    ジャーナル フリー
    ヨウ素分子(I2)が養液栽培の培養液の殺菌に利用可能か検討した.試験管内の実験において,Ralstonai solanacearum(Rs)に対してはI2濃度1 μg/ml,処理時間5分以上で十分な殺菌効果が認められた.栽培容器(コンテナー)を用いた試験では,トマト栽培前のRsを接種した培養液に15分間の殺菌処理を行ったところ,無処理区では青枯病の発病率が83.3%であったのに対し,3 μg/ml処理区は0%であった.一方,栽培中の培養液に60分間の殺菌処理を行ったところ,3および5 μg/ml処理区では共に,処理直後には培養液から細菌は検出されなくなったが,処理3日後には検出され,以後その密度が無処理区と同程度まで増加した.処理1ヶ月後では,殺菌処理区は無処理区に比べて発病が50%ほど抑制されていた.以上の結果から,ヨウ素の青枯病菌に対する滅菌作用とトマト養液栽培でのヨウ素処理による本病の発病抑制効果が認められた.
  • 奥田 充, 河野 伸二, 村山 裕子, 岩波 徹
    2008 年 74 巻 4 号 p. 316-320
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/03
    ジャーナル フリー
    A loop-mediated isothermal amplification (LAMP) assay to detect the causal organism of huanglongbing (citrus greening) was developed. Primers were designed from the nucleotide sequence of the rpl KJAL-rpo B operon of Candidatus Liberibacter asiaticus. DNA amplification was greatly accelerated when loop primers were added to the reaction, and the reaction kinetics was correlated with the reaction temperature from 61°C to 65°C. Sodium hydroxide was used in a rapid DNA extraction method (called alkali extraction) that does not require maceration of leaves, and specific amplifications in the LAMP reaction were obtained from all samples prepared from Ca. L. asiaticus-infected plants. With these methods, Ca. L. asiaticus was detected when one infected leaf was mixed with four healthy ones. The threshold times for turbidity were equal to those for samples prepared from the same leaves using commercially produced regents.
  • 内藤 秀樹, 斉藤 健介, 古屋 廣光, 藤 晋一
    2008 年 74 巻 4 号 p. 321-327
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/03
    ジャーナル フリー
    イネばか苗病はGibberella fujikuroi (Sawada) Itoによって発生し,典型的病徴は草丈の徒長である.本報告では,徒長苗の形態,菌の分布,移植後の生育推移および耕種的防除法としてプール育苗法を検討した.供試種子はばか苗病に自然感染した「もみ種子」と「玄米種子」である.「もみ種子」由来徒長苗の形態をみると,葉鞘は第1完全葉から第3完全葉まで有意に徒長し,最上位葉鞘で最も徒長率が大きかった.葉身は第2完全葉から有意に徒長した.本田移植時期頃の両種子由来徒長苗での病原菌の分布は,苗基部では稈の導管,維管束周囲柔組織細胞内・間隙で見られたが,それより上方部では稈の導管内のみであった.苗での分布長は移植時期直前で稈基部から上部へ「もみ種子」由来苗で平均1.6 cm,「玄米種子」由来苗で平均0.7 cmであった.次に,「もみ種子」および「玄米種子」由来徒長苗をワグネルポットに移植し,その生育推移を観察した.「もみ種子」由来の徒長苗ではポット移植63日後には約30%が回復し,約50%が枯死した.この回復は,病原菌を持つ移植徒長苗より生育した主稈が早期に枯死し,病原菌を持たない分けつが正常と同様の形態に生育したことによるものであった.また,「玄米種子」由来の徒長苗移植ではその約80%が回復した.この「玄米種子」由来徒長苗の多くは菌の感染ではなく育苗箱内の菌を持つ周囲罹病徒長苗から分泌,拡散したジベレリンにより徒長したものと考えられた.また,本病による徒長苗の発生抑制が可能な耕種的防除法として,覆土表面上まで水位を維持するプール育苗法を提案した.このプール育苗法は高い徒長苗発生抑制効果を示した.この抑制効果は水位を覆土表面上まで高く維持することによる病原菌菌糸の生育抑制によると考えられた.
  • 米本 謙悟, 三木 敏史, 広田 恵介, 板東 一宏
    2008 年 74 巻 4 号 p. 328-334
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/03
    ジャーナル フリー
    イチゴ育苗時における雨滴や頭上灌水はイチゴ炭疽病蔓延の主要因である.そこで点滴チューブによりセルトレイ上に敷いた親水性不織布に給水させ,切り口からイチゴ株元へ灌水する方法について検討した結果,本灌水法は本病に対する伝染抑制効果を認め,さらに雨よけを併用することで本病の伝染抑制効果は極めて高くなった.
    また,全供試株の複葉1枚に本病原菌を接種した感染株における効果を検討した結果,本灌水法と雨よけを併用すると各株の発病進展を顕著に抑制した.イチゴ株元付近の温湿度変化を調査した結果,本灌水法では温度は高い傾向であったが,湿度は明らかに低く,湿度上昇を抑制させる効果があると考えられた.
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