日本植物病理学会報
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89 巻, 4 号
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原著
  • 猫塚 修一, 近藤 賢一, 藤田 剛輝, 横田 誠, 佐藤 裕, 平山 和幸
    2023 年 89 巻 4 号 p. 215-224
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2023/12/05
    ジャーナル 認証あり

    1998~2020年に7県(青森,岩手,秋田,宮城,山形,福島,長野)で実施されたリンゴ褐斑病の子のう胞子飛散調査18事例から,最初の飛散ピーク(以下,1stピーク)が出現する気象条件を検討した.1stピークの出現はいずれも品種「ふじ」の開花始期以降で,降水日であった.胞子飛散開始日~1stピークの間にあった降水日(1stピーク18事例,非ピーク58事例)の気象要素について,ロジスティック回帰分析を用いて解析した結果,1stピークは濡れ持続時間中の平均気温13.8°C以上かつ濡れ持続時間6時間以上で出現すると考えられた.また,潜伏期間の有効積算温度は159日°C(T0:4.6°C)と推定された.上記条件を用いて気象データから1stピークの出現時期と初発時期を推定し,圃場における感染開始時期および初発日の実測と比較した結果,両者はほぼ一致した.以上から,気象データからリンゴ褐斑病の一次感染開始日や初発日を推定できると考えられた.

  • 久保田 健嗣, 竹山 さわな, 石橋 和大, 松下 陽介, 冨高 保弘, 松山 桃子, 篠坂 響, 大﨑 康平
    2023 年 89 巻 4 号 p. 225-234
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2023/12/05
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    海外のトマト等ナス科作物での発生と被害が拡大しているtomato brown rugose fruit virus(ToBRFV)について,日本への侵入抑制と発生時の早期発見に資する情報を収集するため,特に日本国内で広く栽培されている市販トマト品種を中心に,ピーマン,ナス,ジャガイモ等ナス科作物の各品種や,ウイルス検定に用いられる植物,雑草等を対象として,全身感染性と病徴を調査した.トマトのTm-1およびピーマンのL遺伝子はToBRFVに対し有効で全身感染を阻止したが,トマトのTm-2a型品種では抵抗性が機能せずモザイク等を発症した.ナス科の作物,雑草では,調査した範囲で多くの種・品種で全身感染してモザイク等を発症することが示され,一方でナスのようにほぼ無病徴で全身感染する種も見いだされた.ToBRFVの国内侵入および拡散防止には,ナス科植物の直接被害だけでなく,ナス科雑草等を介した種子伝染による拡散経路にも注意する必要がある.

  • 久保田 健嗣, 竹山 さわな, 松下 陽介, 冨髙 保弘, 松山 桃子, 石橋 和大, 篠坂 響, 大﨑 康平
    2023 年 89 巻 4 号 p. 235-244
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2023/12/05
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    海外のトマト等ナス科作物での発生と被害が拡大しているtomato brown rugose fruit virus(ToBRFV)について,日本国内への種子を介した侵入を抑制するための種子消毒技術,および,国内で発生した場合に取り得る防除技術として汚染器具の消毒技術およびトマトモザイクウイルス(ToMV)の弱毒株を用いた防除の効果を評価した.トマト汚染種子の消毒では,5%リン酸三ナトリウムおよび次亜塩素酸ナトリウム溶液での処理がともに高い効果が認められたが,発芽率の観点から前者が優れていた.ただし,消毒により感染性が完全に消失した種子からも,RT-PCRによる検出ではToBRFV陽性と判定されうることが明らかとなった.ToBRFV汚染器具の消毒効果については,5%リン酸三ナトリウムおよび1%消石灰には高い効果が認められた.トマト苗への弱毒ウイルス株ToMV-L11A株の接種は,ToBRFVの感染や発病を抑制する効果は期待できないと判断された.

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