Sclerotium Rolfsii菌(完全世代Corticium)を細胞學的に觀察した結果營養菌絲や菌核の各々の細胞は普通多核(2核以上)で多いものは30-40箇も算へられた。かく營養菌絲が多核細胞よりなるの事實は此の菌にheterokaryosisの起り得る可能性あるを示すものである。子實層體を構成して居る菌絲中亞子實層の菌絲は主として2核で,子實層の擔子嚢始原や側絲は始め2核なるも後合一して合同核をなす。
Clamp (扣子)は普通の樣に分裂中の先端細胞の側部に突起として出現し,續いて生ずる新先端細胞の基端から次位の細胞の先端部に向つて形成され,普通多核と思はれる。屡々3-6核が算へられた。そしてこのものは(1)聚落の外縁部に直線的に且つ旺盛に伸長して行く主絲又は強い空中菌絲(太く且つ頗る長し,長さ1/2-1 mm)には各節毎に, (2)埋生菌絲,迷走菌絲及び子實層を形成せる菌絲(細胞細く且つ上記の如くに長からず)には全く之を生ずることがない。聚落外縁部の主絲でも成育旺盛ならざる菌絲や直線的に生長はしても外縁から僅か内方に生ずる菌絲等には種々の程度にClampのない隔膜部が見られる。而して(1)の樣な菌絲では核分裂は主にClampの近くで行はれ, (2)の樣な菌では生長點近くで行はれる樣である。尚本菌々絲でも隔膜部に1對の小點がsafraninとDELAFIELD's hematoxylinで見られたがこれは孔紋樣構造物として知られて居るものであらう。又菌絲の極めて先端に接して核樣の透明小體が辨別されることがある。
植物に接種した際に出來る菌絲も前記と同樣である。而して寄主組織内に迷走して居る菌絲はClampを生ぜず且つ多核である。
擔子嚢内では前記2核が合同の後減數分裂の詳細が認められ其の際中心體樣小體も見られる。單相核は4箇の染色體を含む。其後出來る4箇の擔胞子は普通この單相核を1箇宛受取り,其が猶小柄上に着生して居る間に1囘(時に2囘)の核分裂を經て2 (或は4核)となつて後擔子嚢から抛射される。
擔胞子は時に擔子嚢から2核を受取るらしく觀察される。このことは前報告に見られた正常
Scl. Rolfsii型の發育を示す單一胞子系の出現と對應するらしく思はれる。
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