タバコモザイクウイルス(TMV)を下葉に接種した
Nicotiana glutinosaの非接種上葉ではβ-1,3-グルカンハイドロラーゼの活性の増加が起こった。この酵素活性の増加は,下葉へTMVを接種した4日後に先ず検出され, 10日後には,対照(下葉に0.1Mリン酸緩衝液, pH 7.0,で模擬接種した植物)に較べて約6倍の高い値に達した,接種下葉および非接種上葉より調製した細胞間液および組織のβ-1,3-グルカンハイドロラーゼの活性は接種後の時間経過に伴って増加した。葉の全β-1,3-グルカンハイドロラーゼの活性に占める細胞間液中の酵素活性は,接種下葉で6~10%,非接種上葉で7~11%であった。下葉にTMVを接種した植物の上葉では,接種4日後にTMVに対する獲得抵抗性が現れ, 10日後には,局部病斑の大きさ(直径)は対照植物の約50%に減少した。しかし,下葉を接種後2日目に切除した植物の上葉ではβ-1,3-グルカンハイドロラーゼの活性の増加はみられず,またTMVに対する獲得抵抗性も現れなかった。以上の結果に基づいて, TMVの感染における非接種上葉のβ-1,3-グルカンハイドロラーゼの活性と獲得抵抗性との関連性について考察した。
抄録全体を表示