日本植物病理学会報
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77 巻, 2 号
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原著
  • 岡山 健夫, 平山 喜彦
    2011 年 77 巻 2 号 p. 83-87
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/03
    ジャーナル フリー
    イチゴ炭疽病菌の地下部からの侵入感染の可能性を検討するために,病原菌の浸根接種,灌注接種と噴霧接種による子苗の発病を比較した.その結果,浸根接種や灌注接種では,葉の汚斑症状や葉柄の黒斑症状が見られず,葉柄基部が黒変して株全体が萎凋枯死した.これらの株では新根の発生が少なく,根の部分的褐変や黒変が認められた.発病程度は浸根接種株で最も激しく,噴霧接種株がこれに次ぎ,灌注接種株では弱く,病勢進展もやや遅れた.発病株から炭疽病菌を分離した結果,噴霧接種株は葉,葉柄から高率に分離されたのに対し,浸根接種株は葉,葉柄,根冠部および根から高率に分離された.以上の結果から,炭疽病菌は葉や葉柄などの地上部感染だけでなく,根冠部や根からも侵入して感染すると考えられた.育苗培養土としてピートモス,オガクズ,砂土および土壌を入れた鉢をイチゴ発病株に隣接して置き,頭上灌水で管理したところ,ピートモスやオガクズなどの鉢土表面から炭疽病菌が高率に検出され,これらの鉢土に子苗を植え付けると苗が発病した.発病株は葉や葉柄の黒斑症状は認められなかったが,いずれも萎凋症状を呈した.このことから,鉢土中の病原菌が伝染源となり,苗に発病を引き起こすことが示唆された.イチゴ炭疽病菌の分生子で汚染した土壌は,ジエトフェンカルブ・チオファネートメチル水和剤の1000倍液を灌注することにより,高い防除効果が認められた.
  • 矢野 和孝, 川田 洋一, 堀田 光生, 曵地 康史, 土屋 健一
    2011 年 77 巻 2 号 p. 88-95
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/03
    ジャーナル フリー
    rep-PCRによるDNAフィンガープリント解析で異なるDNAパターンを示すショウガ科植物分離株の系統(I型,II型)と,ショウガ科植物やナス科植物などに対する病原性との関連について解析した.I型の菌株はいずれも,ショウガ,ミョウガ,クルクマに対して強い病原力を示したが,トマト,ナス,ピーマンに対する病原性は弱く,Musa velutina に対しては非病原性であった.一方,II型菌株は,ショウガ,ミョウガ,トマト,ナス,ピーマンおよびM. velutina に対する病原性が強く,クルクマに対しては弱かった.なお,土壌灌注接種や低温下では,II型の菌株のミョウガに対する病原力が低下した.1995~2009年にショウガ科植物から分離された青枯病菌の系統をPCR法で解析した結果,ミョウガおよびクルクマではI型のみが,ショウガではI型とII型が分離された.以上の結果から,ショウガ科植物から分離された青枯病菌は,それらの系統と病原性には関連性があり,ショウガ科植物分離株の系統を植物への接種試験によっても識別できる可能性が示唆された.
  • 三好 孝典, 清水 伸一, 篠崎 毅, 澤田 宏之
    2011 年 77 巻 2 号 p. 96-104
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/03
    ジャーナル フリー
    リアルタイム定量PCR(qPCR)法を利用してイチジク株枯病菌Ceratocystis fimbriata を高感度に絶対定量するための実験系を確立した.プライマー・プローブはリボソームDNAのITS領域を標的として設計した.その特異性について検討したところ,同種(C. fimbriata)として扱われているイチジク株枯病菌とサツマイモ黒斑病菌のうち,前者を鋳型とした場合は増幅したが,後者および他の主要な土壌伝染性病原糸状菌からは全く増幅が認められなかった.絶対定量するために必要な検量線は,本菌の子のう胞子懸濁液の10倍希釈系列を用いて,イチジク枝組織50 mg(生重)に対する添加回収試験(澤田ら,2008)を行うことによって作成した.その結果,101~107病原菌細胞数(子のう胞子数)/枝50 mg(生重)の範囲で強い直線性と適正なPCR効率が得られることから,少なくともこの範囲において高い定量性が期待できることが明らかとなった.また,本法を用いて定性的な検出を行う場合の検出下限は,約100細胞数/枝50 mg近くまでさかのぼる可能性が認められた.人工接種した苗や枝,および自然発病枝における病原菌密度を調べたところ,密度が103細胞数/枝50 mg以下の枝組織からは,肉眼的に判別できるような病変は認められないことが明らかとなった.
短報
  • 下元 祥史, 森田 泰彰, 竹内 繁治, 曵地 康史, 木場 章範, 佐藤 豊三
    2011 年 77 巻 2 号 p. 105-108
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/03
    ジャーナル フリー
    The pathogen of black blight of eggplant (Solanum melongena L.) was previously described as Corynespora melongenae Takimoto in Japan, but there was no Latin description of the fungus. We collected the fungus again in Shimane and Kochi prefectures, the western regions of Japan and reidentified them as C. cassiicola based on the morphological characteristics and sequences of rDNA-ITS regions after confirming their pathogenicity on eggplant. We propose to replace C. melongenae Takimoto nom. inval. with C. cassiicola as the pathogen of black blight in eggplant in Japan.
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