カンキツ葉に穿刺接種後のかいよう病病原細菌の消長と接種部組織の変化からつぎのことが明らかになった。
1. 組織中に侵入した病原細菌は傷痍部とその周囲の細胞間隙で直ちに増殖する。この増殖は,切り取り葉では6C以上で認められ,温度が高いほど著しいが,40Cでは見られない。着生葉では傷痍部が乾燥し,周囲の組織が壊死するため接種後24時間以内に多数の細菌が死滅するが,周囲の細胞間隙に残ったものが増殖する。この増殖では細胞間隙に細菌は充満しない。
2. 宿主細胞の病変は10C以下と40Cでは見られず,15Cでは9日,20Cでは4日,25Cでは2.5日目から葉緑体が小型化し,細胞質の染色性が変化して細胞が肥大する。無接種の傷痍部の周辺では同時期に細胞が肥大するが,ひき続き分裂し,湿潤状態の切り取り葉ではカルス状組織が,着生葉ではコルク形成層からなる癒傷組織が形成される。
3. 接種部では15Cで10∼11日,20Cで4∼5日,25Cでは2.5∼3.0日目から病変細胞の周囲で病原細菌が著しく増殖する。増殖開始時期は接種源の濃度,増殖した菌数,宿主の抵抗性程度に影響されない。増殖した細菌は病変組織内および周囲の細胞間隙に密集する。
4. 水浸状の病徴は,切り取り葉では病変細胞が肥大した時,着生葉ではこのような病変組織がある程度拡大した時に現れる。
5. 強度抵抗性の宿主組織内に侵入した病原細菌は中度抵抗性の宿主組織内に侵入した場合に比べ,宿主細胞の病変後の増殖が著しく劣る。
抄録全体を表示