動物の受精卵が卵割を開始してから胚,幼稚仔個体までの初期発生過程は,分割卵細胞群がそれそれ特殊化し紺織,器官に,形態も機能も劇的な変化を遂げる時期であり,この間に小さな生命体の中で展開されている物質代謝には占ゾから関心が寄せら,各種動物について遊離アミノ酸を含めた生体成分の変動が研究されている。近年の分析技術の向上に伴い,D-アミノ酸が各種生物に広く分布しており,なかでも海産無脊椎動物には,一部にはL-体を上回るような,高濃度の遊離D-アミノ酸が筋肉組織などに含まれていること,それらが浸透圧の調節に深く関わっていることが明らかになっている。更にここにきて,無脊椎動物の未受精卵にもD-アミノ酸が含まれ,初期発生過程で変動することが明らかになってきた。ここでは,各種無脊椎動物の初期発生過程におけるD-アミノ酸の変動と,キタムラサキウニ初期発生過程におけるD-アラニン(D-Ala)の代謝と生理機能について,これまで得られた知見を紹介する。
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