韓国と日本で使用されているかごの形状と空隙率が流体力特性に及ぼす影響を調べた。角柱型(長さ0.40 m×幅0.40 m×高さ0.22 m)と円柱型(直径0.40 m×高さ0.22 m)のかごの側面を丸棒(間隔4-35 mm)または網地(網目脚長に対する網糸直径の比率0.02-0.13)で覆った。回流水槽実験で流速0.3-0.5 m/s,迎角0-90°で抗力と揚力を計測した。空隙率が大きくなると抗力は小さくなり,空隙率がほぼ等しい場合には,抗力は角柱型の方が円柱型よりも大きくなった。角柱型および円柱型かごでは,それぞれ迎角が45°, 90°の時に抗力係数は最大となった。
本論文では,北海道沿岸域で行われているたこいさり樽流し漁を対象として,操業の効率化を実現するための知見を得るために漁具(樽)の位置情報取得に取り組んだ。操業で用いられる樽にGPS腕時計を装着して位置情報を取得し,流向,流速を算出した。その結果,樽の流速は約9 cm/sであること,流向は気象・海象条件によって異なること,流速の変化から船上に樽を引き揚げた時刻を推定できることを示唆した。今後,樽の流向・流速と漁獲量の関係性を明らかにすれば,操業に適した条件の解明につながることが期待される。
瀬戸内海のマクロベントス生産量は0.19-11.2 g C/m2/yearで,水深が深く,泥分率の低い有機物量が少ない底質の海域で高い傾向があった。水深が浅く泥分率の高い播磨灘,燧灘,広島湾および周防灘西部のほとんどの海域では1 g C/m2/year以下であった。大阪湾湾奥部では,水深が浅い泥底で有機物量が多いにもかかわらず生産量が最も多かった。大阪湾湾奥部や燧灘の中央部,および広島湾のマクロベントス現存量は,10-15年前に対して減少していると推察された。
アコヤガイ貝殻真珠層の結晶層一層の厚さ(結晶層厚)の遺伝を明らかにするため,2系統の親集団を左殻内面真珠層の色で赤,緑およびそれ以外の3グループに選抜して9家系の次代を生産し,親と子世代における結晶層厚を計測した。また,9家系中2家系および別の4家系の合計6家系における結晶層厚と殻高を継時的に調査した。両親と子世代の平均結晶層厚には強い相関関係が認められたことから,結晶層厚は遺伝形質である可能性が高いと考えられた。一方,各家系の平均結晶層厚は,貝の成長に伴い一定の割合で薄くなることが示唆された。
アワビ類の好適な初期餌料である針型珪藻Cylindrotheca closteriumが,水温20℃,照度1500-2000 Lxで良好に増殖することを明らかにした。加えて,針型珪藻を事業規模での飼育に用いるために,大量培養法と採苗板への付着方法を検討した。本種は付着力が弱く,攪拌培養すれば大量の珪藻細胞を懸濁液として得られる。この懸濁液を採苗板を収容した水槽に添加して,懸濁液中の珪藻の一部を採苗板に付着させた後,付着した一部の珪藻細胞を増殖させることで,板上で本種を優占させることができた。
オホーツク海の豊かさを支える仕組みを明らかにするため,能取湖沖において5年間,クロロフィルa濃度と環境要因の季節変動を調べた。晩春~晩秋に宗谷暖流水がみられ,栄養塩濃度は低く,晩秋~春季に東樺太海流水がみられ,栄養塩濃度は高かった。春季には大型(>10 μm)の植物プランクトンのブルームがみられ,通常よりもクロロフィルa濃度は一桁程度高く,10-30 μg/Lであった。春季ブルーム後~晩秋は大型の植物プランクトンが優占する場合が多く,晩秋~春季ブルーム前は小型や中型(<10 μm)が多かった。
食塩の代わりにクエン酸塩を用いて調製する魚肉の新たな加熱ゲル化方法を開発し,本方法で調製した加熱ゲルがラットの血圧や脂質濃度に及ぼす影響を検討した。新規または従来法で調製した加熱ゲルをAIN-76組成の食餌に添加した。新規加熱ゲルの摂取は,高血圧自然発症ラットの血圧上昇を抑制させた。また,調製方法に関わらず加熱ゲルの摂取は,血清コレステロールおよび肝臓トリグリセリド濃度を減少させ,肝臓の脂肪合成酵素活性を抑制させた。新規加熱ゲルは,血圧上昇抑制および脂質代謝改善作用を有することが明らかになった。
NaCl処理によるツノナシオキアミタンパク質回収中の自己消化抑制および回収物の加熱ゲル形成能改善を試みた。タンパク質の分解は脱水工程において顕著に進行したが,セリンプロテアーゼ阻害剤(50 mmol/kg Benzamidine, 1.0 mg/g SBTIおよび5 mmol/kg PMSF)により抑制された。またこれら阻害剤を添加した場合,回収物の加熱ゲル物性が向上した。以上より,セリンプロテアーゼ阻害剤を用い自己消化を抑制することで,練り製品原料適性を改善したタンパク質を回収可能であった。
海苔に含まれる水溶性食物繊維は,生活習慣病のリスク低減効果が期待されている。本研究では,海苔由来水溶性食物繊維(NP画分)を用いて食事脂質吸収に及ぼす影響をラットで検討した。その結果,NP画分投与群で血中脂質濃度が有意に低い値を示した。食品で広く利用されている水溶性食物繊維であるアラビアゴムでも同じ結果を示したことから,海苔由来水溶性食物繊維画分の作用は,エマルション安定性,加熱による水溶性食物繊維の低分子化による影響の可能性が示された。
魚肉への通電時の抵抗値(インピーダンス)が脂質含量により変化することを利用し,マサバの脂質測定技術の開発を行った。解析はヒトで実績のある50 kHzを基準とし,その前後の20 kHz, 100 kHzの周波数で行った。各周波数の抵抗値と脂質含量で回帰分析を行うと,単周波数ではいずれも推定精度は低かったが,20 kHzおよび100 kHzの2種類の周波数で解析すると推定精度が向上した。また供試魚を2つの尾叉長階級に分け,同様の解析を行うと,尾叉長が大きいグループでは,高い推定精度が得られた。
酵素吸着能に優れた濾過材の作製を目的として,各種金属酸化物のアミラーゼ吸着能について調べた結果,酸化鉄,酸化アルミニウム及び酸化マンガンの吸着能が高いことが判明した。これらの金属酸化物及びこれら固化物に吸着したアミラーゼは,アルカリ性域の反応性が向上し,pH安定性や熱安定性も向上した。以上のことから,酸化鉄,酸化アルミニウム及び酸化マンガンは,優れた酵素吸着能力を有し,これらを用いることで微生物の増殖による溶存酸素濃度の低下を伴わない高機能な濾過材を作製できる可能性が示唆された。
マイワシとカタクチイワシの食性を明らかにするため,2014年春季に日本海各地の同時同所採集物(それぞれ計158尾,149尾)を用いて胃内容物を調べた。両種はカイアシ類や端脚類などを捕食していたが,5回のうち4回でマイワシはカタクチイワシ卵を捕食していた。捕食されていた卵数は,調査地点や調査個体によるばらつきが大きく,このような変動はカタクチイワシの産卵域とマイワシの索餌域との一致度合が関与すると考えられ,卵分布と卵捕食量との関係を更に研究する必要がある。
エゾアワビの採苗における省コスト化を目的として,緑藻Ulvella lens(アワビモ)の浮遊幼生に対する着底・変態誘引能を検証した結果,平均63%の着底・変態率が得られた。さらに,アワビモに初期稚貝にとって好適な餌料である針型珪藻Cylindrotheca closteriumを付加した場合でも,平均68%の着底・変態率であることが確認できた。アワビモの被度は着底・変態率に影響しなかったため,被度がばらつきやすい種苗生産現場においても同等の採苗率が期待できると考えられる。