漁獲管理規則は,資源や漁獲の状態などに依存して毎年の許容漁獲量を決定する規則である。本研究は,マイワシ2系群を例に,複数の漁獲管理規則のパフォーマンスを比較し,2021年から管理に導入された規則と同程度の漁獲を得ながら,不確実性に対してはより頑健な規則があることを示した。また,現在の将来予測手法は将来のリスクを過小評価していることも示した。リスクの推定が過小である状況下では,不確実性に対して頑健であることが確かめられている規則との相対的な比較によって漁獲管理規則を選択することが望ましい。
1978年から2019年に日本海沖合で調査船によるイカ釣操業を行い,漁獲したスルメイカの外套長を測定し,体サイズの長期変化を調べた。2000年代から2010年代にかけて体サイズは小さくなる傾向にあった。外套長の季節変化を調べたところ,1990年代以降,成体になる時期が遅れ,2000年代以降,成長速度も低下し,成体になる時期の遅れと成長速度の低下が相まって,2000年代以降,魚体の小型化が急速に進んだと判断した。この魚体の小型化には1980年代末以降の長期的な水温上昇が関係していると考えられた。
携帯型ステレオカメラを用いて,クロマグロ幼魚5個体の個体間距離,網地と魚群の距離を海上生簀にて3次元計測した。ステレオカメラの性能テストの結果はカメラから36, 100 cmの距離で,それぞれの計測値は実測値の100.6, 101.9%の長さとなった。5個体が撮影された連続5フレームを3次元計測したところ,個体群の最近接個体間距離は17.6±5.36 cmで,魚群の重心と網地との距離は28.0±0.26 cmだった。2%弱の計測誤差は確認されたが先行研究と遜色ないことから,魚群モニタリングに携帯型ステレオカメラは有効である。
沖縄県内で発生しているシガテラの原因検体から,分子系統解析による魚種の種判別を目的とした。沖縄島および周辺離島海域で漁獲されたシガテラの主な原因魚種であるバラハタ,イッテンフエダイ,バラフエダイとそれらに類似した形態をもつ5種を収集した。証拠標本として種毎に1個体は博物館相当施設に収蔵された。さらに沖縄衛環研へ搬入されたシガテラの原因検体からDNA抽出し,16S rDNAによる分子系統樹解析を行った。その結果,シガテラ原因検体の種判別に成功し,証拠標本に基づく分子系統樹判別の有効性が確認された。
シーケンス解析から全国のアサリ漁場干潟で25科の線虫類が検出された。Oncholaimidae, ChromadoridaeおよびXyalidae科は何れの干潟でも認められ,殆どの干潟で検体数の50%以上を占めた。篩によるサイズ分画別の線虫類の個体数は,上記3科の個体数を反映している可能性がある。OncholaimidaeとChromadoridae科の個体数は,アサリが大部分を占めるマクロベントス湿重量と正の相関を示した。線虫の科を用いたアサリ漁場評価のための基礎的知見が得られた。
本研究では成熟したトラフグの養殖個体に対するテトロドトキシン(TTX)投与実験を行い,成熟個体におけるTTX蓄積の雌雄差を検討した。TTX含有餌料を経口投与したトラフグ雌雄5個体ずつを,投与24時間後に取り上げ,皮,筋肉,肝臓,生殖腺(卵巣もしくは精巣),および消化管を摘出した。各部位から調製した試験液を,高速液体クロマトグラフィー蛍光検出法によるTTXの測定に供した。分析の結果,肝臓および生殖腺におけるTTXの蓄積に雌雄差が認められた。
2018-2019年に播磨灘南西部で麻痺性貝毒原因プランクトンの出現状況を調べるとともに,トリガイとアカガイの毒力と毒成分組成を調べた。二枚貝の毒化はAlexandrium catenella(Group I)の出現時に確認された。天然トリガイの毒力は50.7 MU/gと規制値を超え,主要毒はGTX1/4,2/3であった。アカガイの毒力は天然物では4.8 MU/gと規制値を超えたのに対し養殖物では規制値以下で推移した。アカガイの毒成分はGTX1/4,2/3,STXが主要毒であった。