最大持続生産量(MSY)に基づく管理基準値が我が国の水産資源管理に用いられるようになった。MSYは主に再生産関係を用いて推定されているが,再生産関係とMSYの関係は良く知られているわけではない。本稿では,親魚が単年の場合と複数年級から成る場合について,ホッケースティック型,ベバートンホルト型,リッカー型再生産式からのMSY管理基準値の導出方法を示し,さらに幾つかの系群を例に加入の確率変動を導入した場合におけるこれらの値の変化について検討した。
ピンガーを装着したノトイスズミ15尾を壱岐南西部に放流し,南北の沿岸約17 kmの範囲に設置した10台の受信機で追跡した。受信期間は1–366日間であり,9個体が185日以上受信された。3個体は両端を含むほぼ全ての地点で受信されたが,1個体は受信期間を通じて3箇所の受信機でのみ受信され,移動範囲に個体差が見られた。個体ごとの月別受信地点数は1–5月はその他の期間よりも少なく,季節的に移動範囲が異なると考えられた。
タイムラプスカメラを用いて兵庫県瀬戸内海域における養殖ワカメの育苗期の食害実態を調べた。ウマヅラハギ,クロダイ,ニジギンポ,メジナが出現し,ウマヅラハギとクロダイがワカメ幼胞子体を多く摂食していたため,この2種が食害の原因種と考えられた。考案したプラスチック製の防除カゴを用いて種枠を保護したところ,カゴに収容した種枠では幼胞子体が本養殖用種苗サイズまで生長したが,収容しなかった種枠では食害により本養殖用種苗サイズまで生長しなかった。このことから,実用性のある食害防除カゴを開発することができた。
「巣ごもり消費作用」と「外食食材流入作用」の2点からコロナ禍の水産物市場への影響を説明した既存研究の部分均衡理論に第3の効果として「加工仕向け食材流出作用」を追加し,コロナ前後の水産物の数量・価格データを用いて四象限マトリクスで魚種別に分析した。第三象限に位置する魚種はなく,本研究の想定を否定する結果は得られなかった。第一象限にはタコなど2魚種,第二象限にはアジなど5魚種,第四象限にはカニなど7魚種が該当し,魚種によって3つの作用の強さが異なることを示唆する結果を得た。
新規原料としてアメリカミズアブ(ミズアブ)粉末を含む飼料でマダイの長期給餌を実施した。マダイ幼魚に魚粉主体の飼料を給餌するFM区と,魚粉の5または10%をミズアブ粉末とした飼料を給餌するBSF5,10区を設定し,18か月間飼育した。FM区と比較してBSF5,10区の体重,尾叉長,肥満度で有意差は無く,飼料効率の低下も認められなかった。試験区ごとの反復を行わなかったが,幼魚から成魚の長期間ミズアブ粉末で魚粉を10%置換しても,マダイの成長に顕著な悪影響は認められなかった。