アユ継代種苗の遺伝的変化を検討するため,F4 から F31 のマイクロサテライト DNA の変異性を野生集団と比較した。その結果,種苗の変異性(
A:平均アリル数および
He:平均へテロ接合体率)は野生集団に比べて明らかに低かった。変異性と継代数は強い負の相関を示し,
He が直線で近似され,
A は指数曲線で近似された。このことから,継代数の増加に伴い
He は直線的に減少し,
A はさらに急激に減少することが示唆された。種苗間の継代数の差と
FST 値の間には強い正の相関がみられ,変異性の低下によって分化の増大がもたらされていると考えられた。また種苗内ではホモ接合体過剰が特徴的にみられ,近親交配が生じていることも示された。
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