西湖で発見されたクニマスは,近縁種であるヒメマスと区別されずに釣獲されている。毎年,解禁から2日間,ビクのぞき調査を行い,鱗による年齢査定,遺伝子解析による種判定を行った。Age-length keyから,体長組成分布を年齢組成に変換した。年齢組成から,平衡状態を仮定して全減少係数Zを推定し,寿命から得られた自然死亡係数を用いて,漁獲係数Fを推定した。総釣獲尾数CとF, Zの関係から資源尾数Nを推定し,クニマスの比率を乗じた結果,クニマス資源量は4,300-11,000尾と概算された。
北海道におけるケガニの形態による齢期判別と甲長組成解析から齢期と甲長の関係を明らかにするとともに,標識放流試験,標本採集,および飼育実験から得られた脱皮前後甲長を基に定差成長式を算出した。甲長組成解析と定差成長式から得られた齢期別甲長には大きな差がなく,両者の結果は妥当と考えられた。また,北海道の3海域における雄(9齢期以上)の定差成長式に有意差はなかったことから,北海道の雄成体の定差成長式として,Ln+1=1.035Ln+10.575を提示した。
網袋と人工芝のアサリ,バカガイ,シオフキガイに対する天然採苗機能に影響する要因を明らかにするため,東京湾盤洲干潟で2週間単位の採苗実験を2012年10月~2013年12月の間連続的に28回繰り返した。貝の大きさ,0.3 N m−2以上の底面せん断応力の出現回数,水温の3つを説明変数とした重回帰分析で,3種の捕集速度に最も大きく影響したのは貝の大きさであった。二枚貝の洗掘移動に影響する強い底面せん断応力の出現回数と,貝の潜砂速度に影響する水温は捕集速度と明確な関係を示さなかった。
2009年から2012年の高津川で漁獲されたアユの側線上方横列鱗数度数分布に多重正規分布を当てはめ,天然魚と放流魚の混合率を推定した。高津川のアユの系統は,海産(天然魚)と2種類の人工産(放流魚)の3種類であった。アユの遡上を阻害する堰堤の上流・下流側の漁場における天然魚の混合率のブートストラップ平均はそれぞれ26.3-58.8%および82.6-100%であり,アユの遡上状況を反映した妥当な推定値が得られた。
瀬戸内海をはじめ各地の藻類養殖漁場で不足しているDINを補うための新しいタイプの施肥剤(硝酸アンモニウム溶液をゼラチンで固めたのもの)を開発した。ケースに入れない2タイプと穴の開いたケースに充填したもの2タイプを作製し,実験水槽内への溶出量を硝酸塩センサーで測定した。その結果,肥料成分60-70%の溶出に,ケースに入れないタイプはおよそ5日,ケース入りのタイプはおよそ20日を要した。このことから,施肥剤を入れるケースの穴の径と数を変えることにより肥料成分の溶出速度を調整できることが示唆された。
養殖クロマグロに最適な飼料の開発を目指して,EP給餌と生餌給餌の体成長と消化関連因子の比較を行った。EP給餌のクロマグロの体成長は胃のペプシン活性が減少した後に一旦停滞したが,その後,幽門垂の肥大化に伴うプロテアーゼ活性の増加により生餌給餌と同程度に回復した。EPは生餌に比べて難消化であるため胃での滞留時間が長く,消化関連因子(cck, pyy)は生餌より遅れて発現した。成長関連因子(ghrelin)は餌の消化管内での移動に伴って発現が変動し,EP飼料では有意に増加する事が明らかとなった。
2015年10月中旬から11月下旬に,北海道函館湾において,魚介類に斃死をもたらす渦鞭毛藻Karenia mikimotoiによる有害赤潮が北日本で初めて発生した。赤潮の発生期間中に斃死した魚介類は,サケOncorhynchus keta,スルメイカTodarodes pacificusおよびエゾアワビHaliotis discus hannaiの3種に及んだ。K. mikimotoi赤潮(3,200-11,500 cells/mL)の発生時における水温および塩分は,それぞれ9.9-15.7℃および31.8-32.2の範囲にあった。K. mikimotoiが北日本へ分布を拡大した原因としては,対馬暖流/津軽暖流による自然な来遊,あるいは船舶バラスト水による人為的輸送が想定される。
褐藻類のAscophyllum nodosumに酸・アルカリ処理を行って凝集剤とし,処理条件の違いによる凝集効果の相違を成分組成から考察した。0.06 M塩酸で処理し,炭酸ナトリウム水溶液に24時間浸漬して調製した凝集剤の効果が最も高く,ついで効果が高かったのは0.6 M塩酸で処理し,炭酸ナトリウム水溶液に1時間浸漬して調製した凝集剤であった。成分分析によって,前者では多量のフコイダンの存在,後者では灰分の著しい減少が確認され,それらが各凝集剤の高い凝集効果の要因であることが示唆された。
外来魚の影響を加味しながら,在来タナゴ類の保全候補地の相補的選択を試みた。タナゴの保全目標数は各種の出現割合に,外来魚の影響は種数と侵略リスクに応じて設定した。外来魚の影響を加味しない場合とする場合の2通りを解析した結果,タナゴ類の分布のみを考慮した優先保全地域から,外来魚の影響の大きい地点が外れ,残りの地点から外来魚の影響が小さく,タナゴ類が生息する地点が代替された。本結果は,外来魚の影響を受けにくい保全候補地を示すとともに,タナゴの保全に寄与する外来魚駆除候補地も明示している。
秋に漁獲される「落ちアユ」と夏に漁獲される「夏アユ」を用いたあゆなれずしを製造し,食味や成分の比較を行った。原料魚の肥満度および脂質含量は夏アユが有意に高かった。本漬け40日後の乳酸量および遊離アミノ酸量は落ちアユが有意に高かった。官能検査では,落ちアユなれずしの評価について,なれずしを好むパネルは高い評点を示したが,その他のパネルは低い評点を示した。このことから,落ちアユなれずしは食べ慣れた人に好まれるが,食べ慣れていない人にとっては,夏アユなれずしの方が受け入れられやすいと考えられる。