遊漁対象種の希少性や生物学的特性の違いに着目し,北海道然別湖,朱鞠内湖および洞爺湖における遊漁者を対象に,遊漁者の満足度と釣果の関係を比較した。その結果,1)希少魚の釣果は1尾の釣果が遊漁者の満足度を大きく高める,2)希少魚の釣果はその魚種が1番の狙いの魚種でなくとも遊漁者の満足度に影響を与えうる,3)大型に育つ遊漁対象種では釣獲尾数よりも体サイズに満足度の主眼がおかれる,4)遊漁対象種に食用としての価値が高い場合,遊漁者にとって満足といえる釣獲尾数はより多くなる,という傾向が明らかになった。
サケ科魚類の人為雑種において,性比が一方に偏る例が報告されてきたが,これらは生殖腺の表現型に基づく。本研究では,カラフトマスとサクラマス間の正逆雑種について,雄特異的な性決定遺伝子sdYの有無による遺伝的性を検討した。その結果,カラフトマス雌×サクラマス雄,サクラマス雌×カラフトマス雄の8か月齢魚の遺伝的性は雌に,サクラマス雌×カラフトマス雄の12か月齢魚は雄に偏った。初期胚と孵化仔魚の遺伝的性比は1:1であったことから雑種の性比の偏りは成長過程における生残率の雌雄差により生じたと考えられた。
アコヤガイ真珠の干渉色と光沢に及ぼす真珠層の厚さ及び結晶構造の影響を明らかにするため,それらの強度と真珠層の厚さ,炭酸カルシウム結晶(Ca結晶)の厚さ及びその変動係数との関係,並びに強度に及ぼす各要素の影響について調査した。干渉色度と真珠層及びCa結晶の厚さとの間には有意な正の,変動係数との間には有意な負の相関関係がみられた。光沢度と各要素との間には有意な相関がみられなかった。重回帰分析の結果,干渉色の強度に対して,真珠層厚さ,Ca結晶厚さ,変動係数の順で影響度が大きいことが明らかとなった。
日向灘産ハモに含まれるイミダゾール化合物の部位別含有量を調べた。このうち胴中央部にはバレニン(Bal)とカルノシン(Car)がそれぞれ329±69.6および979±227 µmol/100 g(n=6)含まれていた。Carは胴部の前方に,Balは後方に多かった。筋肉を5℃で保存すると,3日目でCarは2%にまで減少した一方で,Bal量はほとんど変化しなかった。このことから,ハモ筋肉におけるイミダゾールジペプチドの分解活性はCarで高く,Balでは低いと推測された。
イムノクロマト法を用いた麻痺性貝毒簡易測定キットを,アカガイ,トリガイの毒化モニタリングに実験的に導入した。試験部,対照部のライン強度比(T/C比)とマウス毒力で回帰式を作成し毒性を推定した。試料は2019年に原因プランクトンが大阪府の警戒密度を下回った後大阪湾東部の漁港で入手した。トリガイの毒性がキットで4 MU g−1未満と推定後,マウス試験で分析した結果,トリガイは3週連続で規制値を下回った。以上から,同キットの導入でマウス試験の回数を減らし,麻痺性貝毒監視コストを削減できることが実証された。
サケ科魚類において,産卵後に雌体内に残された卵数は,再生産効率を定量的に評価するうえで重要な指標となる。本研究では米代川8支流で産卵後に死亡したサクラマス降海型雌の体内残留卵数を調査した。調査した43個体の標準体長は395 mmから570 mmであり,推定抱卵数の範囲は2151粒から4763粒であった。推定抱卵数に占める体内残留卵数の割合の平均値±標準偏差(範囲)は0.1±0.3%(0-1.8%)であった。そのため,米代川支流に遡上したサクラマス降海型雌は,体内の卵をほとんど残すことなく産むことができたと推察される。