2018-2020年の夏から冬に伊勢湾,三河湾,浜名湖の干潟において,えびかきソリネットによるクルマエビの採集を行った。いずれの地点でも夏から秋にかけて着底直後のポストラーバを確認したことから,資源量低迷期の現在でもこれらの海域の干潟が天然個体の着底場となっていることが明らかとなった。一方,7月下旬に着底のピークがみられていた資源量高水準期に比べて,現在の着底のピークは1-4か月遅くなっており,生息密度の低下も観察された。これらの要因として,早く産卵を行う大型親の減少が考えられた。
小型海藻藻場の有効性を検討するため,長崎県樫山町の磯焼け域でウニの密度管理を行った。2015年6月から11月に大型海藻藻場の造成が困難な区域でウニを13.9個体/m2から0.7個体/m2にまで減少させ,低密度状態を維持した。2016年5月にはコブソゾやテングサ類などが増加した。水槽実験により,多くの小型海藻は大型海藻よりもノトイスズミ等の食害を受けにくい傾向が確認された。小型海藻藻場では磯焼け域に比べウニの身入りが良く,小型海藻藻場の造成でもウニ漁業の漁獲量の増加に貢献できると考えられる。
サクラエビ筋肉の脂肪酸組成を用いて産地判別と食性推定を試みた。サクラエビ筋肉の主要な脂肪酸はC16:0, C18:1n-9, C20:5n-3, C22:6n-3であった。脂肪酸組成を用いて構築した判別式による駿河湾産と台湾産の予測的中率は90%であったことから,脂肪酸組成による両者の判別は可能と考えられた。また,駿河湾産,台湾産ともにサクラエビの体重とC18:1n-9/C18:1n-7比との間に正の相関がみられたことから,サクラエビは成長に伴い植食から肉食へと食性を変化させていく可能性が示唆された。
赤身魚肉の水晒し廃液から脂質,タンパク質を回収後,晒し水として再使用するすり身製造法について検証した。晒し水を5回再使用しても各晒し肉の脂質,タンパク質,鉄含有量は水晒し前に比べ有意に低く,晒し水の再使用により脱脂及び水晒し効果は低下しなかった。晒し廃液中に流出したタンパク質の57-70%が加熱凝集物として回収され,廃液量が5分の1になることから廃液の汚濁負荷は大幅に低減される。回収した脂質,タンパク質及び再使用した晒し水を有効活用すれば,廃棄物をほとんど出さないすり身製造が可能になると考えた。
本稿では,トピックモデルを用いてオンライン投稿を分析し,水産物のオンライン販売拡大に繋がる示唆を得ることを目的とした。データは,実店舗とECサイトを運営する水産物販売サービスSに関する,3つのメディアの投稿を用いた。全データを対象に形態素解析を行い,プログラミング言語PythonのライブラリであるGensimを用いてトピックを抽出し意味づけを行った。結果として,水産物の品質への期待が実態から乖離しすぎないよう調整し,消費者がより安心して購買できるようにすることが重要であるという示唆を得た。
無キズ珠率に及ぼす養生と水温の影響を検証するため,水温17-28℃の時期に塩分25 psu海水入り水槽に8日間収容する低塩分海水養生と現行の海上養生を行い,キズ・シミの無い真珠の出現率(無キズ珠率)と真円真珠の出現率(真円真珠率)に及ぼす養生方法と水温の影響を推定した。その結果,養生方法は無キズ珠率,真円真珠率に及ぼす影響が大きく,低塩分海水養生は海上養生よりも無キズ珠率を2.1倍,真円真珠率を2.0倍向上させると推定された。一方,水温は無キズ珠率や真円真珠率に与える影響が小さいと考えられた。