2000年以降のサクラマス沿岸漁獲量は,日本海側で減少傾向,北海道太平洋側およびオホーツク海側で増加傾向,本州太平洋側ではどちらともいえなかった。毎年の沿岸漁獲量には,気候変動など,経年的に変化する自然環境要因が各年級群に与える影響が強いことが示唆された一方,ふ化放流事業の効果は不明瞭であった。したがって,サクラマスの資源管理にはふ化放流事業よりも自然選択を受けながら再生産を続ける野生魚を活用した方がよいと考えられた。
雌雄別に最終脱皮による成長の停止を組み込んだ年齢構成モデルを用いてベニズワイガニ日本海系群の資源量を推定した。データは1978-2018年の漁獲量と資源量指数,2000-2018年の漁獲物の平均体重,1979-2005年の平均体重の指数及び生物特性値である。最小二乗法による推定値の誤差評価はBootstrap法で試算した。Base caseの推定結果では2015年の親魚量は204千トン(CI 184-224千トン)であった。推定方法の改良や課題などについて議論した。
マコガレイ成魚30個体に水温・深度ロガーを装着し,2017年7月3日に周防灘姫島地先で放流して2個体から12-1月までのデータを得た。高水温となる9月の2個体の経験水温の最頻値は24-25℃(53.9-57.6%)であった。最高経験水温は27℃に達したが26℃以上の頻度は3.9-4.5%と低かった。深度データからは離底行動が観測され,連続した離底行動後に生息水深,生息水温,分布域等が変化した。よって,天然海域では26℃未満の水温帯で生息可能であり,離底行動は移動に関連していたと考えられた。
本研究では日本海南西海域産アカムツを対象とし,耳石横断薄層切片を用いた年齢査定により年齢体長キーを作成し,山口県下関漁港および島根県浜田漁港における漁獲情報から年齢別漁獲尾数を推定した。さらに,沖合底びき網漁業の漁獲成績報告書からデータフィルタリングによりアカムツの狙い操業を抽出した標準化CPUEを算出した。チューニングVPAにより資源量などを推定し,レトロスペクティブ解析により推定結果の妥当性を確認した。推定資源量より,本海域産アカムツの資源状態は高い水準にあると判断した。さらに,アカムツ小型魚の保護を目的とした管理方策について検討した。
ベニズワイガニ雄の成長を解明するため,2004年から2012年にかけて富山湾において桁網とかにかごで採集を行い,甲幅組成に見られる峰を複数の正規分布に分解した。雄の第3齢から第13齢の甲幅平均値は,それぞれ6.3,9.1,12.9,18.0,25.5,34.1,44.6,58.3,74.0,88.3,105.8 mmと推定された。相対的に大きな鉗脚を有する成体雄の割合は,第10から第12齢では2.8,11.4,34.9%と小さかったが,第13齢において半数以上の74.0%と推定された。
日本におけるサザエの分布範囲を網羅する11地域から標本を収集しミトコンドリア16S rDNAとCOI塩基配列及び殻の棘タイプを分析した。塩基配列は2つのハプログループに分けられ,ハプログループ間の平均塩基置換率は16S rDNAで1.247%,COIで1.429%であった。日本海-東シナ海と太平洋の集団間でその頻度が大きく異なっていた。また各海域内地域集団間にも有意な遺伝的分化が検出された。ごく近隣の地域間でも棘の有無や大小に大きな変異がみられ,環境要因の影響が示唆された。
加入変動を考慮した資源動態シミュレーションにおいて,バイアス補正項を考慮した対数正規分布が使われることが多い。しかし,加入尾数の変動が過程誤差であれば,バイアス補正により本来の加入尾数の変動と同じ分布は再現できない。一方,観測誤差による見かけ上の変動であれば変動させる必要がない。最大持続生産量(MSY)の推定において,バイアス補正は行わず実際の変動のみでシミュレーションを実施し,バイアス補正ありの結果と比較した。バイアス補正を行う現在の推定方法では,MSY等を過小または過大評価する可能性がある。
日本水産学会誌第88巻4号(July 2022)294-299頁「トラフグTakifugu rubripes成熟個体におけるテトロドトキシン蓄積の雌雄差」に誤りがありましたので,訂正いたします。
誤:
295頁右1行目
TTXを含む餌料(約0.4 μ/g 魚体重)
正:
295頁右1行目
TTXを含む餌料(約0.4 μg/g 魚体重)