日本植物病理学会報
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27 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 後藤 正夫, 岡部 徳夫
    1962 年 27 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1962/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. E. carotovora のPME活性測定法としては, PGまたはDPを分離しない限り, Smith 変法によるpH法がよく, Ca-pectate 法および粘度測定法は適当ではない。また培養中に生産されるPMEの活性は比較的低いので, Kertesz のアルカリ滴定法も必ずしもすべての場合に好適な方法とはいい得ない。
    2. PMEの生産には空気が最も大きな影響を与え, 好気的な条件ほどよく生産される。
    3. pHは中性に近いほどPMEの生産は良好である。
    4. PMEは pectin を基質として適応的に生産されるが, 好気的条件下では glucose および pectic acid を基質にしてもかなり生産される。
    5. 前培養の如何は特にPMEの生産に影響をおよぼさない。
    6. E. carotovora は菌株の如何を問わず好気的条件下では, 発育さえすれば pectin 培地中にPMEを生産する。
  • 後藤 正夫, 岡部 徳夫
    1962 年 27 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 1962/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. C1, 551および547の3菌株の生産するPMEの性質をジャガイモ, ニンジンおよびタマネギから分離したPMEと比較検討した。
    2. いずれの酵素も透析と樹脂処理によつて著しく活性を減ずるが, 塩類を添加すると再び活性を回復する。この場合, 植物性酵素は主に2価のカチオンで, また細菌性酵素は主に1価のカチオンで活性を回復する傾向が強い。
    3. 細菌性酵素はすべて50°Cで最高の活性を示すが, 植物性酵素はその種類によつて40∼60°Cで最高の活性を示す。
    4. 547菌株のPMEを除くと, いずれもpH4.0および7.0で活性のピークを示す。547株のPMEは7.0まではpHが高い程活性が高い。
    5. 547菌株は培養後期 (5日目培養) に100°C10分の加熱でも不活性化しない耐熱性酵素を生ずる。その他の細菌性酵素は60°C10分で, また植物性酵素は60∼70°C 10分で不活性化する。
  • V. 稲こうじ病菌厚膜胞子のイネ幼芽期接種
    池上 八郎
    1962 年 27 巻 1 号 p. 16-23
    発行日: 1962/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1) 前年に採集後およそ8カ月間冷蔵庫および実験室に保存したY, YG, GYおよびG病もみ上の各厚膜胞子を陸稲農林糯1号の幼芽への接種に供試した。幼芽長が1∼3mmの発芽もみに厚膜胞子浮遊液 (900倍) 1視野当り80∼100個を噴霧あるいは浸漬接種した。接種した幼苗は1958年は20°C, 1959と1960年には25°Cでそれぞれ3∼5日間保ち, その後幼苗を圃場に植え, イネの成熟期まで生育させた。
    2) イネ幼芽が1∼10mmの時期にY胞子で接種を行なつた場合に発病は容易であつたが, 12mm以上では無発病となつた。GY胞子では3∼5mmの幼芽に接種した場合に良結果をえたが, 8mm以上では発病しなかつた。幼芽のごく短かい時期に接種を行なうと発病率が高まることがわかつた。厚膜胞子の病原力はYG胞子が最も強く, GYおよびY胞子は相当強かつたが, G胞子は弱かつた。Y胞子の濃度が1視野当り400個 (900倍) で接種した時に発病率は最高, 胞子濃度が低くなるほど低率となり, 40個では全く発病しなかつた。接種時の温度が25°Cで最も発病しやすく, 次いで20°C, 30°Cでは発病率が低かつた。粉衣接種法は噴霧あるいは浸漬接種に比較して発病が少なかつた。
    3) 発病株中の各茎の発病率は主稈から生じた穂が最も高く, 分けつ順位の進むほど低かつた。発病穂の病もみの分布は穂の基部のやや上部に最も多く, 次いで基部であつたが, 中央から先端部はきわめて少なかつた。1病もみ着生穂が発病穂の50%以上, 2∼4個着生穂は比較的多く, 5個以上は少なかつた。しかし15, 16, 19個着生穂が1穂あて認められた。発病穂における病もみの集団塊数は1穂当り病もみ数の増加するほど多くなつていた。病もみの菌核形成率は23.3%であつた。
    幼芽接種による発病稲の上述の調査結果から, 分けつ順位による発病, 穂における病もみの分布および病もみの集団的発生において, 自然感染した陸稲と一致していた。
  • 達山 和紀
    1962 年 27 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 1962/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    さきに7)硫酸銅または昇汞溶液に接触したいもち病菌の泳動たんぱくが, 無処理のものに比較して減少することがみとめられたので, 硫酸銅ほか9種類の殺菌剤のいもち病菌菌糸の窒素成分におよぼす影響を比較検討した。
    いもち病菌菌糸中の泳動たんぱくは接触した殺菌剤の濃度が大きく, 接触時間の長い場合に減少するが, この傾向は硫酸銅, 昇汞, PMFなど重金属系殺菌剤においてはるかに強く, Captan, Blasticidin-S などの作用はゆるやかである。また, 菌糸中の全窒素の含量も同じような傾向であるが, たんぱく態窒素の含量は泳動たんぱくの減少と必ずしも一致しない。しかし菌糸中の遊離アミノ酸の含量におよぼす影響は殺菌剤の種類によつてかなり異なり, 一般に重金属系殺菌剤ではすべてのアミノ酸が減少するようであるが, Blasticidin-S では100γ/mlの濃度で48時間接触させると, 未知の発色部が現われ, 泳動たんぱくあるいはアミノ酸など菌の代謝に関係の大きいと思われる成分の検索が, 殺菌剤の作用機作を究明する一つの方法として重要であると考えられる。
  • 小室 康雄
    1962 年 27 巻 1 号 p. 31-36_1
    発行日: 1962/01/25
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    1) カボチャ・モザイク・ウイルスは Lindberg ら (1956) の melon mosaic virus に該当すること, および同ウイルスは, 日本カボチャ, 西洋カボチャ, ペポカボチャ, シロウリ, トウガなどのモザイク症状株から分離されることをすでに報告した (小室, 1957)。今回, キュウリの葉脈えそ症状株およびモザイク症状株 (キュウリ・モザイク・ウイルスによるモザイクよりも粗い大型のモザイク) からも, カボチャ・MVが分離されることが明らかになつた。岩手, 埼玉の材料では葉脈およびそれに沿つた部分に褐~黒褐色のえそをつくり, 後この患部は枯死してしまう。植物体は節間が短縮し, 葉は葉脈えそとともに若干奇形になる。高知の材料ではこれら葉脈えそとともに小さな ringspot 状のえそ斑点を示していた。これら材料ではモザイク症状はみられなかつた。東京および埼玉の材料では, えそ症状はみられず, 粗い大型のモザイクの病徴のみであつた。埼玉の一部材料では葉脈えそとモザイクの両者の病徴がみられた。
    2) キュウリ (新埼落, 新T号) にカボチャ・MVを汁液接種するとカボチャ・MVに特異な粗い大型のモザイクの病徴が得られた。これらモザイクとともに葉脈に褐色~茶褐色のえそ症状を示す株もみられた。しかし, 高知の材料にみられるような小さな ringspot 状のえそ斑点の再現には成功しなかつた。
    3) 沖繩でスイカのモザイク株が畠で多数発生しており, これからもカボチャ・MVが分離された。
    4) カボチャ・MVはソラマメ, エンドウ, オクラに寄生性があり, これらはいずれも veinclearing, mosaic の病徴を示す。ソラマメ, エンドウでは夏期には接種による感染が困難である。
  • 村山 大記, 横山 竜夫
    1962 年 27 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 1962/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. オオムギ, コムギおよびトウモロコシを寄主植物としてオオムギ斑葉モザイク病ウイルスに対する抗血清を得た。
    2. 硫安塩析法による精製ウイルスを注射して得た抗血清は, ウイルスに対する抗体とともに, 正常植物成分に対する抗体をも産生した。
    3. 分画遠心法による純化ウイルスを注射して得た抗血清のうち, 寄主植物をオオムギとした場合はウイルスに対する抗体のみを産生したが, コムギおよびトウモロコシを寄主植物とした場合にはウイルスに対する抗体と正常植物成分に対する抗体とを生そじた。
    4. オオムギとコムギおよびコムギとトウモロコシの植物成分間に血清反応の結果から類縁関係が認められたが, オオムギとトウモロコシの間にはその関係は認められなかつた。
    5. 上述の2つの純化法のうちオオムギを寄主植物とする場合には分画遠心法によつて比較的純化された抗原 (免疫原) を得ることができた。
    6. 免疫に用いた罹病植物と同種の健全植物粗汁液にて吸収試験を行ない健全植物成分に対する抗体を吸収することができた。
  • 村山 大記, 横山 竜夫
    1962 年 27 巻 1 号 p. 44-48_2
    発行日: 1962/01/25
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    1. Ouchterlony 法に基く寒天ゲル中沈降反応によつて, オオムギ斑葉モザイク病ウイルス (BSMV) 罹病植物汁液中に抗BSMV血清に対して特異的に反応する抗原物質が存在することが認められた。
    2. この抗原物質に対する反応は常に抗原を入れた凹みの近くに現われ抗原側に凹形を示す鋭三日月形または弓形の不透明な沈降帯であり, これはウイルスに対する反応であると考えられた。
    3. 硫安塩析法による純化ウイルス試料を用いて調製した抗血清は, ウイルスに対する抗体のほかに, 健全植物蛋白に由来すると考えられる抗体をかなり含んでいた。
    4. 分画遠心法による純化ウイルス試料を用いて調製した抗血清と健全植物汁液との間では, ほとんど反応が認められなかつた。
    5. ウイルスに対する抗体以外のすべての抗体は寄主植物蛋白に由来するものと考えられた。
  • 後藤 和夫, 平野 喜代人, 深津 量栄
    1962 年 27 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 1962/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Yellow spot of leaves of sorghum (Holcus sorghi var. japonicus, or Sorghum vulgare) was found in Chiba prefecture near Tokyo since 1940. The disease is characterised by chlorotic (yellow, but not necrotic) and rectangular spots with white powdery appearnce (conidial formation), especially on their under surface. Later, the spots will change into light brownish necrotic lesions without conspicuous border colorations.
    Conidiophores extrude through stomata singly or in tuft of 2 to about twelve, geniculate then denticulate towards apex, 22-80×3.6-6.9μ and 0-5 septate. Conidia are obclavate with obconic then truncate bottom and attenuate then blunt apex, 21-55×3-6μ and 1-6 (mostly 3) septate.
    There can not find no identical sorghum fungus, but sugar cane yellow spot fungus (Cercospora koepkei Krüger) is similar in many respects on the morphology. Therefore, the sorghum fungus is to be inferred as C. koepkei Krüger var. sorghi, var. nov. The difference in description has been given.
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