1) 前年に採集後およそ8カ月間冷蔵庫および実験室に保存したY, YG, GYおよびG病もみ上の各厚膜胞子を陸稲農林糯1号の幼芽への接種に供試した。幼芽長が1∼3mmの発芽もみに厚膜胞子浮遊液 (900倍) 1視野当り80∼100個を噴霧あるいは浸漬接種した。接種した幼苗は1958年は20°C, 1959と1960年には25°Cでそれぞれ3∼5日間保ち, その後幼苗を圃場に植え, イネの成熟期まで生育させた。
2) イネ幼芽が1∼10mmの時期にY胞子で接種を行なつた場合に発病は容易であつたが, 12mm以上では無発病となつた。GY胞子では3∼5mmの幼芽に接種した場合に良結果をえたが, 8mm以上では発病しなかつた。幼芽のごく短かい時期に接種を行なうと発病率が高まることがわかつた。厚膜胞子の病原力はYG胞子が最も強く, GYおよびY胞子は相当強かつたが, G胞子は弱かつた。Y胞子の濃度が1視野当り400個 (900倍) で接種した時に発病率は最高, 胞子濃度が低くなるほど低率となり, 40個では全く発病しなかつた。接種時の温度が25°Cで最も発病しやすく, 次いで20°C, 30°Cでは発病率が低かつた。粉衣接種法は噴霧あるいは浸漬接種に比較して発病が少なかつた。
3) 発病株中の各茎の発病率は主稈から生じた穂が最も高く, 分けつ順位の進むほど低かつた。発病穂の病もみの分布は穂の基部のやや上部に最も多く, 次いで基部であつたが, 中央から先端部はきわめて少なかつた。1病もみ着生穂が発病穂の50%以上, 2∼4個着生穂は比較的多く, 5個以上は少なかつた。しかし15, 16, 19個着生穂が1穂あて認められた。発病穂における病もみの集団塊数は1穂当り病もみ数の増加するほど多くなつていた。病もみの菌核形成率は23.3%であつた。
幼芽接種による発病稲の上述の調査結果から, 分けつ順位による発病, 穂における病もみの分布および病もみの集団的発生において, 自然感染した陸稲と一致していた。
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