日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
56 巻, 4 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • 稲垣 公治
    1990 年 56 巻 4 号 p. 443-448
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネの単一株内から分離した赤色菌核病菌の多くの菌株は,培養的性質が著しく類似していた。これらの菌株間の菌糸融合の様式は完全融合であり,したがってイネの単一株に感染している赤色菌核病菌は1種類の融合群(2菌株間の菌糸融合が完全融合である菌株のグループ)が占有していることが判明した。赤色菌核病は水田(面積6∼9a)内で比較的広く発生していたにもかかわらず,融合群数は1∼6種類と少なかった。また,同一の融合群が同じ水田において3∼6年間残存しているのが確認された。水田内において広く分布している融合群が後年まで残存して,赤色菌核病をひき起こす場合の多いことが推察された。以上のように,水田内における菌核病の発生と病原菌との相互関係を把握するのに,融合群の調査が有効である。
  • 和田 拓雄, 久津間 誠一, 竹中 允章
    1990 年 56 巻 4 号 p. 449-456
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    全国各地のイネばか苗病罹病種子からばか苗病菌518株を分離し,ペフラゾエートに対する感受性を検定したところ,MIC値は0.78∼12.5ppmの範囲にあった。ペフラゾエートと同様にエルゴステロール生合成阻害剤(EBI)であるトリフルミゾールの場合に報告されている低感受性菌(MIC>1,000ppm)の存在は認められなかった。しかし,両剤に対する本菌の感受性傾向は類似しており,トリフルミゾールに低感受性の菌株はペフラゾエートでも感受性が低かった(MIC 6.25∼12.5ppm)。一方,ばか苗病菌の薬剤感受性をEBIおよびベノミルとの関係でみると4タイプに分類された。すなわち,(I): EBIに感受性でベノミルにも感受性の菌株,(II): EBIに感受性でベノミルに耐性の菌株,(III): EBIにやや感受性が低くベノミルには感受性の菌株,(IV): EBIにやや感受性が低くベノミルにも耐性の菌株であり,おのおのの分布比率は,8.5, 83.0, 8.1および0.4%であった。これら菌株のジベレリン産生およびフザリン酸産生について検定したところ,(I), (II)および(IV)の菌株はジベレリンを産生したが,(III)の菌株はいずれも非産生株であった。フザリン酸の産生は全菌株で認められ,薬剤感受性との間に明らかな相関関係はなかった。(IV)の菌株を人為接種した種籾をペフラゾエートで種子消毒したが,(I)タイプの菌株を接種した種籾の場合とまったく同様の高い効果を示し,in vitroでのMIC検定による感受性差は実際の種子消毒効果とは相関していなかった。
  • 古市 尚高, 鈴木 譲一
    1990 年 56 巻 4 号 p. 457-467
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ジャガイモ疫病菌の過敏感反応サプレッサー(抑制因子)を2種類の異なったレースより抽出し,HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により精製した。サプレッサー活性をもつ分画は,親和性菌,非親和性菌ともに分子量(Mr) 4,700と280の成分であった。これらの成分をジャガイモスライス切片(直径,14mm)に滴下処理したあと,非親和性菌遊走子を接種して,ファイトアレキシン(PA)生成をマーカーとして活性の強さを調べた。HPLCにより純化する前のグルカン成分と,両レースのMr 4,700とMr 280のサプレッサー分画は,12.5∼50μg/diskの濃度ではレース間で統計的に有意の差は示さなかった。以上の結果から,疫病菌の分子量の異なった本グルカン2成分が,レースにかかわりなくサプレッサー活性を有することが示唆された。標準糖と本サプレッサー成分のTLCによる解析の結果,Mr 280の成分はグルコースモノマーとRf値が近似した。また,HPLCにより遊走子発芽液中にMr 280の成分が検出されることから,感染初期の過程において機能している可能性が示唆された。
  • 梅本 清作
    1990 年 56 巻 4 号 p. 468-473
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ナシ黒星病菌の2種類の胞子,すなわち子のう胞子と分生子の分散に関して検討した。子のう胞子は葉面上最高でも7.67mmまでしか放出されなかった。しかし,圃場で地面から高さ別に子のう胞子を捕捉した実験では,高くなるにつれて捕捉される子のう胞子数は減少したが,一般のナシ園の棚の高さまたはそれより高い位置に相当する180cmの高さでも1カバーグラス当り約3個捕捉された。この関係を式として求めたところY=78.886e-0.0199xが得られた。子のう胞子の横への分散距離を調べたところ,10mまでは明らかに分散した。これらの関係を式として求めたところ,Y1(東)=11.429e-0.175x, Y2(西)=20.352e-0.281xおよびY4(北)=18.344e-0.238xが得られた。実験式から,東方向では発病葉率が1%となるのは伝染源から14m離れた場所と推定された。分生子の横への分散距離について検討したところ,伝染源から8m離れた場所でも発病した。これらの関係を式として求めたところ,Y1(東)=25.586e-0.184x, Y2(西)=24.66e-0.152x, Y3(南)=25.936e-0.254xおよびY4(北)=23.714e-0.209xが得られた。実験式から,南方向へ10m離れた場所の発病葉率は約2%, 15mでは約0.6%と推定された。
  • 福田 徳治, 上原 勝江, 畔上 耕児, 田部井 英夫, 西山 幸司
    1990 年 56 巻 4 号 p. 474-480
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1985年8月から,沖縄県平良市(宮古島)で,マンゴー(品種:アーウィン)の葉および果実に黒褐色の隆起斑点を生ずる細菌性の病害が発生している。罹病組織からはコロニーの外観が均一な細菌が分離され,これらはマンゴー(品種:アーウィン)葉への接種により原病徴と同一の症状が発生した。また病原細菌は,約70項目の細菌学的性質の調査結果から,白∼クリーム色のXanthomonas campestrisであることが明らかになった。これらの結果とマンゴーbacterial cankerあるいはbacterial black spotに関する既往の報告から,分離細菌はXanthomonas campestris pv. mangiferaeindicaeと同定された。わが国における本細菌によるマンゴーの病害発生は,今回初めて確認された。病名はその病徴からマンゴーかいよう病(bacterial canker)とすることを提案した。
  • 久保 進, 池田 勉, 今泉 誠子, 高浪 洋一, 三上 洋一
    1990 年 56 巻 4 号 p. 481-487
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    オシロイバナ(Mirabilis jalapa L.)に強力な抗植物ウイルス蛋白質(MAP)が含まれていることを見いだした。MAPはタバコモザイクウイルス(TMV),キュウリ緑斑モザイクウイルス,キュウリモザイクウイルス,ジャガイモYウイルス,カブモザイクウイルスの汁液接種による感染を高率に阻害した。タバコ(Xanthi nc)とTMVの系において,接種1日前の葉表塗布処理では,MAP濃度0.8μg/mlでほぼ完全な感染阻害を示した。葉裏処理-葉表接種および下位葉処理-上位葉接種でも高率な感染阻害が認められ,MAPがシステミックな抗ウイルス効果を示すことが知られた。MAPはウイルス接種後の処理では無効であった。MAPの抗血清は,抗ウイルス物質を含むことが報告されているアカザ目植物のナハカノコソウ,ブーゲンビリア,ツルムラサキ,Chenopodium amaranticolor,ヨウシュヤマゴボウの葉汁液とは反応せず,MAPがオシロイバナ独特の蛋白質であることを示唆していた。MAPの抗血清を用いてELISAを確立し,オシロイバナに含まれるMAPを定量した。MAPは花,葉,茎,根の各部に含まれるが,根部の含量が最も高く,その量は秦野市で採集した黄花系統の生根で1.1mg/gであった。オシロイバナが抗植物ウイルス剤の原料として有望であることを述べた。
  • 高浪 洋一, 桑田 茂, 池田 勉, 久保 進
    1990 年 56 巻 4 号 p. 488-494
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    オシロイバナ(Mirabilis jalapa L.)の根部には植物ウイルスに対して強力な感染阻止作用を示す蛋白質(MAP)が含まれる。この蛋白質を硫安沈澱ならびにCM-SepharoseとDEAE-Sepharoseを用いたイオン交換クロマトグラフィにより精製した。MAPはSDS-ポリアクリルアミド電気泳動で分子量24,200の位置に泳動され,その沈降係数はS20,w=2.5,リジンに富む,等電点9.8の糖を含まない強塩基性単純蛋白質であった。MAPの耐熱性は材料としたオシロイバナの系統により異なった。根部組織の粗抽出物中のMAP含量はSDS-ポリアクリルアミド電気泳動あるいは陽イオン交換樹脂を用いた高速液体クロマトグラフィによって定量が可能であった。
  • 片岡 二郎, 増田 税, 高浪 洋一
    1990 年 56 巻 4 号 p. 495-500
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    CMV RNA2の完全鎖長に相同な連続したcDNAをおもにガブラー&ホフマン法により作出し,その全塩基配列をダイデオキシ法により決定した。5'および3'末端のcDNAにはそれぞれ制限酵素PstIとNotIの認識配列を合成プライマーにより付加した。RNA2は3,051塩基よりなり,その翻訳産物にはGDDで示されるpolymerase siteと一致する配列が存在し,その近傍の配列の特徴もよく保存されていた。他のCMV系統RNA2と塩基配列の比較を行ったところ,Y系統はFny系統ときわめて高い相同性(98.4%)を示したがQ系統との相同性(71.4%)はあまり高くなかった。これらの結果からCMV-YはCMV-Fnyが属するSubgroup Iに分類されるものと考えられる。
  • 片岡 二郎, 増田 税, 高浪 洋一
    1990 年 56 巻 4 号 p. 501-507
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    CMV RNA1の完全鎖長に相補的なcDNAを作成しその全塩基配列を決定した。RNA1は3,361塩基よりなり分子量111,462のタンパク質をコードしていた。このタンパク質にはGXXGXGKTで示されるnucleotide binding siteとGDT motifに似た配列とが認められた。RNA1間の塩基配列の比較を行った結果,Y系統はFny系統と高い相同性(96.4%)を示し,Q系統とは低い相同性(76.1%)を示した。Y系統内の5'非翻訳領域を比較すると,RNA1はRNA2と部分的に相同性があったがRNA3とは相同性が認められなかった。3'末端非翻訳領域をFny, OおよびD系統と比較したところ各RNAについて95%以上の相同性があり,認められる塩基置換も一つのステムループに集中する傾向があった。
  • 大島 一里, Alice Kazuko INOUE, 石川 陽, 四方 英四郎, 萩田 孝志
    1990 年 56 巻 4 号 p. 508-514
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ジャガイモYウイルス(PVY)の普通系統(PVYO)およびえそ系統(PVY-T)に対してモノクローナル抗体(MoAb)を作製した。スクリーニングに用いた間接二重抗体サンドイッチ酵素結合抗体法(IDAS-ELISA)で作製したMoAbを用いてウイルスの感染したN. sylvestrisの葉汁液について検討すると,PVYO-11G03, 12F05, 12H01, 21H05, 22D01, 41G07および42A08がPVY-Oに対して,またPVYT-4E7および6C11はPVY-Tに対して特異的であった。さらに,PVYO-11C01, 12H03および22A02はPVY-OおよびPVY-Tに共通に反応した。一方,直接二重抗体サンドイッチELISA (DAS-ELISA)に利用可能でかつPVY-Oに対して特異的なMoAbはPVYO-12H01, 21H05, 22D01, 42A08および51E04であり,PVY-Tに対して特異的なMoAbはPVYT-4E7および6C11であった。このなかで検出感度の高いPVYO-42A08, PVYT-4E7 MoAbおよびPVY-O, PVY-Tのポリクローナル抗体(PoAb)を用いてDAS-ELISAにより,圃場で採集したジャガイモ葉からウイルスの検出を試みた。その結果,PVY-OあるいはPVY-Tに単独感染している株,PVY-OおよびPVY-Tに混合感染している株,さらにPoAbでは反応が認められるがPVY-OおよびPVY-T MoAbの両方に反応の認められない株が認められた。
  • 後藤 正夫, 小玉 一務, 黄 奔立
    1990 年 56 巻 4 号 p. 515-522
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    チャ芽に居住する氷核活性細菌Xanthomonas campestrisErwinia ananasの生態および霜害との関係を研究するため選択培地を作成した。X. campestrisの分離培地(略称SGNC)の組成はNH4H2PO4 1g, MgSO4・7HO2 0.2g, KCl 0.2g,グリコゲン10g,ノボビオシン100mg,シクロヘキシミド100mg,寒天15g,蒸溜水1,000ml, pH 6.8である。またE. ananasの分離培地(略称NSVC)は,普通寒天培地(酵母エキス5g,ペプトン10g,寒天15g,蒸溜水1,000ml, pH 6.8)にNaCl 50g,バンコマイシン100mgおよびシクロヘキシミド100mgを加えた。両選択培地の平板効率は普通寒天培地のそれと同じであった。X. campestrisはSGNC培地上で3∼4日目に,またE. ananasはNSVC培地上で2日目に集落を形成した。チャ芽に居住する一般細菌は種類が比較的少ないため,両培地の選択性はきわめて高く,氷核活性細菌の生態を定量的に解明することが可能となった。しかし降雨が数日続くとNSVC培地上に生育する一種の細菌の増殖がみられたが,降雨が止むと24時間以内に消失した。NSVC培地はイネ内穎褐変病の病原細菌にも適用できる。
  • 竹内 洋二, 吉川 正明, 堀野 修
    1990 年 56 巻 4 号 p. 523-531
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ダイズ組織には疫病菌(Phytophthora megasperma f. sp. glycinea)の不溶性細胞壁から可溶性のエリシターを遊離する活性が存在し,部分的に純化されたエリシター遊離因子にはβ-1,3-endoglucanase活性が存在することが示されている。本研究においては,ダイズ子葉組織よりβ-1,3-endoglucanaseを高度に精製し,この精製した酵素に対するウサギ抗血清を用い,エリシター遊離因子とβ-1,3-endoglucanaseの同一性について解析を行った。精製したβ-1,3-endoglucanaseには,疫病菌細胞壁からエリシターを遊離する活性が認められた。純化酵素に対する抗血清は精製酵素のβ-1,3-glucanase活性およびエリシター遊離活性をほぼ完全に阻害するとともに,ダイズ組織の磨砕液による両活性をも顕著に阻害した。さらに,切断ダイズ子葉組織によるβ-1,3-glucanase活性およびエリシター遊離活性も本抗血清により阻害された。しかし,本抗血清によって阻害されないβ-1,3-glucanaseをもつ他の数種植物のエリシター遊離活性は,本抗血清によって阻害されなかった。また,細菌の一種(Arthrobacter luteus)より調製されたβ-1,3-endoglucanase標品であるzymolyase 100Tもエリシター遊離活性を有していた。以上の結果は,エリシター遊離活性がβ-1,3-endoglucanase活性によるものであり,ダイズ組織に存在するβ-1,3-endoglucanaseが本組織中のエリシター遊離活性を担うものであることを示唆する。
  • 山田 哲治, 塚本 浩史, 白石 友紀, 野村 哲也, 奥 八郎
    1990 年 56 巻 4 号 p. 532-540
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    サクラてんぐ巣病菌(Taphrina wiesneri),モモ縮葉病菌(Taphrina deformans),スモモふくろみ病菌(Taphrina pruni)など,植物に増生病を引き起こすタフリナ属病原糸状菌はインドールピルビン酸(IPyA),インドールアセトアルデヒド(IAAld)を中間代謝物としてトリプトファン(Trp)からインドール酢酸(IAA)を合成する。これらの糸状菌はまた,インドールアセトニトリル(IAN)をIAAに転換する能力をもつ。IANをIAAに転換する酵素,IANニトリレースは基質誘導を受ける適応酵素であるが,TrpをIPyAに転換する酵素,Trpアミノトランスフェラーゼは基質によって誘導を受けない。
  • Susamto SOMOWIYARJO, 佐古 宣道, 野中 福次
    1990 年 56 巻 4 号 p. 541-548
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    WMV-2で免疫したマウス脾細胞とミエローマ細胞を用いて,MCAを産生する13個の融合細胞株を作製した。これらのMCAによりWMV-2には少なくとも3種類の抗原決定基の存在が明らかになった。このウイルスに対する第3グループのMCAは,non-precoated間接エリザ法により,炭酸水素ナトリウム・炭酸ナトリウム緩衝液,pH 9.6で処理したズッキーニ黄斑モザイクウイルス(ZYMV)と反応し,ウサギ抗WMV-2抗体を用いるprecoated間接エリザ法では反応しなかったことから,両ウイルスは1種類の抗原決定基(cryptotope)を共有していることが判明した。このことは両ウイルス間の血清学的関係についてより明確な実証を示したものと考えた。MCA WMV-2 15は圃場試料からの本ウイルスの検出および診断に利用できると結論した。
  • 渡辺 恒雄
    1990 年 56 巻 4 号 p. 549-556
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    北海道地方の土壌に生息するPythium菌の種と分布を明らかにするため,キュウリ種子とジャガイモ塊茎円盤(直径4mm,厚さ3mm)による捕捉法と直接接種法を用いて菌を分離し,調査した。供試した29試料中28試料から1試料当り1∼5種のPythium菌が分離されたが,1試料からはまったく分離できなかった。分離した合計297菌株は,H-Zs(糸状胞子嚢から遊走子を形成するが,生殖器官は未形成の一群)を含む14種に分類・同定できた。最も一般的に分布していたのが,P. sylvaticumで,22ヵ所から94菌株が分離された。次いで,P. torulosum, P. rostratumP. ultimumの分布が広く,7∼11ヵ所から21∼28菌株が分離された。また日本では未報告のP. conidiophorumP. dissimileが分離された。
  • 向 本春, 大木 理, 尾崎 武司, 井上 忠男
    1990 年 56 巻 4 号 p. 557-560
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    えそ輪紋病徴を示すインパチエンスから2種のひも状ウイルスが分離されたので同定を試みた。一つは長さ750nmのpotyvirusで,インパチエンスにはえそ輪紋病徴を表し,諸性質からclover yellow vein virusと同定された。ウイルス和名をクローバ葉脈黄化ウイルス,インパチエンス病名をえそ輪紋病(necrotic ring)としたい。第2のウイルスは長さ約640nmのcarlavirusで,インパチエンスに無病徴感染したほかChenopodium amaranticolorC. quinoaに局部感染した。精製ウイルスの理化学的性質は既報のcarlavirusにほぼ一致し,5種のcarlavirusのうち,strawberry pseudo mild yellow edge virusとのみ免疫電顕法で遠い血清関連が認められた。未記載ウイルスと考えられるのでウイルス名としてインパチエンス潜在ウイルス(impatiens latent virus)を提案したい。
  • 関沢 泰治, 芳賀 実, 加納 大聖
    1990 年 56 巻 4 号 p. 561-564
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    感染葉身細胞の原形質膜リン脂質からα-リノレン酸を切り出す酵素は,膜情報伝達系の作動によって活性化されるホスホリパーゼの一つの型であるので,本報ではin situで活性化されるこの酵素の型の同定を試みた。噴霧接種苗の葉身ではα-リノレン酸の蓄積は,非親和性組合せで接種後9時間,親和性組合せで接種後18時間で観察され,後者では接種後13時間にパルミチン酸の蓄積が認められた。総放出脂肪酸中のα-リノレン酸および同時間でのパルミチン酸の百分率を合せ考え,不飽和脂肪酸の大半はSn 2位に結合するとのリン脂質化学の一般則に照し,α-リノレン酸を切り出すこの酵素はA2型と推定された。このホスホリパーゼA2は10mM Ca2+の存在で感染葉身でのみ,その酵素活性が認められた。
  • 関沢 泰治, 芳賀 実, 加納 大聖
    1990 年 56 巻 4 号 p. 565-567
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    いもち病菌に感染した,あるいは同菌エリシターで処理した葉身組織片で膜情報伝達系の作動によって活性化されるスーパーオキシドアニオン生成酵素は,原形質膜結合性酵素でフラボタンパク質であり,おそらく一電子伝達素子が共存していると考えられている。この種の酵素では酵素学上からNADPHが基質と考えられるが,本例では明確にされていなかった。既報のニトロブルーテトラゾリウム還元法でO2生成動態を調べたところ,NADPHを基質として高初速度でO2生成を持続するにはNADHの共存を必要とすることが観察された。葉身細胞の細胞質にはNADP+に絶対依存性を示す脱炭酸性リンゴ酸酵素の強い活性が認められている。NADPHの供給系がリンゴ酸供給系に依存し,NADHがリンゴ酸供給系に関与しているとするとよく符合する。諸実験結果を総合して,本O2生成酵素はNADPHオキシダーゼの一種と考えられた。
feedback
Top