東アジア, 東南アジアでは, 魚しょうゆは日常生活に密着した調味料として使われているが, 日本における魚しょうゆは一部の地方で使われているにすぎない。
魚しょうゆは製造に長期間を要し, また特有の魚臭があり, 改善すべき点がある。
この魚しょうゆの改良を目的としてマアジを原料に用い, (1) 筋肉のみ使用, (2) 筋肉に内臓を添加, (3) アジ全量を使用, (4) アジ全量にパインアップル果汁を添加, の4種の魚しょうゆを24時間から60日間, 45℃で熟成させて製造し, 特にパインアップル果汁を酵素源として使用した効果について検討した。
呈味成分であるアミノ酸とペプチドの熟成時の挙動と同時に, 臭気成分の有機酸, 脂肪酸, 魚臭の成分であるトリメチルアミン, しょうゆや酢の香りの成分のメチオナールについて調べた。
アジ筋肉に種々の量の内臓を加えて製造した魚しょうゆは, 内臓の添加量が多いほど, アミノ態窒素の増加が認められたが, 内臓無添加ではアミノ態窒素の値が低く, 筋肉のみではたん白質の分解が少ないことが示された。
魚しょうゆにパインアップル果汁を添加した場合, 窒素, アミノ態窒素ともに高い値であった。また有機酸はクエン酸, リンゴ酸が多く, ギ酸, 酢酸の生成は少なかった。脂肪酸は不飽和脂肪酸のオレイン酸, リノール酸, リノレン酸の変化も少なく, ドコサヘキサエン酸も減少が少なく, このようにポリエン酸が他の魚しょうゆに比べて多く残存していたことは, パインアップル果汁添加によって, 魚しょうゆが酸化されにくくなっていることを示していた。
魚臭の要因であるトリメチルアミンの経時的変化をみると, 特に熟成の初期に著しく低い値であり, 24時間でも増加の割合が低かった。メチオナールも他の魚しょうゆに比べて低いことなどから, パインアップル果汁添加により魚臭の少ない魚しょうゆ製造が行えることが明らかとなった。
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