栄養学雑誌
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81 巻, 2 号
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原著
  • 中易 萌香, 赤松 利恵, 小島 唯, 新保 みさ
    原稿種別: 原著
    2023 年 81 巻 2 号 p. 53-60
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル フリー

    【目的】調理頻度が主食・主菜・副菜のそろった食事の摂取につながるかを探るため,単身世帯における調理頻度と主食・主菜・副菜のそろった食事の摂取頻度との関連を検討した。

    【方法】2020年11月に実施したインターネット調査で得られた,全国の20~64歳の男女6,000人のデータのうち,単身世帯1,076人のデータを二次利用した。調理頻度により5群に分け,属性,主食・主菜・副菜のそろった食事の摂取頻度,1日あたりの野菜料理の皿数,外食,中食等の利用頻度をχ2 検定で比較した。その後,ロジスティック回帰分析を用いて調理頻度と主食・主菜・副菜のそろった食事の摂取頻度との関連を検討した。

    【結果】体重の回答に不備のあった者2人を除いた1,074人(男性647人,女性427人)を解析対象者とした。属性と外食,中食等の利用頻度を調整しても,調理頻度が毎日の群は,調理をほとんどしない群と比べて主食・主菜・副菜のそろった食事の摂取頻度がほとんど毎日の者が有意に多かった[オッズ比2.55(95%信頼区間1.63~3.98)]。

    【結論】単身世帯において,毎日調理をしている者は主食・主菜・副菜のそろった食事の摂取頻度が高かった。今後は,調理頻度が毎日でなくても主食・主菜・副菜のそろった食事の摂取頻度が高い者の特徴を調べ,主食・主菜・副菜のそろった食事の摂取に向けた調理頻度について,さらに検討する必要がある。

研究ノート
  • ─1年間の縦断研究─
    小林 道, 岡田 栄作
    原稿種別: 研究ノート
    2023 年 81 巻 2 号 p. 61-67
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究は大学生を対象に就寝前の夕食習慣が睡眠障害に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。

    【方法】2016年11~12月に北海道のA大学の1・2年生360名が研究に参加した。睡眠障害は,the Pittsburgh Sleep Quality Index:PSQI日本語版(PSQI-J)を用いて評価し,合計得点6点以上を睡眠障害に分類した。就寝前の夕食習慣は,「就寝前の2時間以内に夕食をとることが週に3回以上」で就寝前の夕食有り群に分類した。追跡調査は,1年後の2017年11~12月に実施した。解析では,就寝前の夕食習慣と1年後のPSQI得点の変化を共分散分析にて検討した。更に,ベースライン時に睡眠障害が認められた者を除外し,就寝前の夕食習慣と1年後の睡眠障害発症の関連についてポアソン回帰分析を用いて検討した。

    【結果】256名を対象とした共分散分析の結果,就寝前の夕食無し群と比較して有り群でPSQI得点の差の平均値が有意に高かった。加えて,ベースライン時に睡眠障害が認められなかった109名を解析対象としたポアソン回帰分析の結果,ベースライン時における就寝前夕食有り群の睡眠障害の発症リスク比と95%信頼区間は,Risk Ratio: 1.97(95%Confidence Interval: 1.09~3.77)であり,就寝前の夕食習慣無し群と比較してリスク比が上昇した。

    【結論】大学生において就寝前の夕食習慣が睡眠障害発症のリスクを高めることを明らかにした。本研究の結果は,若年成人の睡眠障害の改善に役立つ可能性がある。

  • 西田 依小里, 赤松 利恵, 頓所 希望
    原稿種別: 研究ノート
    2023 年 81 巻 2 号 p. 68-74
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル フリー

    【目的】飲食店における適量注文は,食品ロス削減と健康維持増進の両面に貢献できる。本研究では,飲食店において,適量注文をする者の特徴を調べた。

    【方法】2021年9月にインターネット調査会社に登録されている20~64歳の男女1,000人を対象に調査を行った。飲食店で1人分の食事を注文する際の行動として,「事前に量を調べたり,量がわかっているお店や量を調節できる店を選ぶ」等の4項目各々の実施頻度を「まったくしない」(1点)~「よくする」(4点)の4件法でたずねた。実施頻度の合計得点を求めた後,低・中・高得点群の3群に分け,属性,健全な食生活の実践,主観的健康感,体格はχ2 検定,BMIはKruskal-Wallis検定を用いて比較した。

    【結果】適量注文の分布は,低得点群317人(31.7%),中得点群322人(32.2%),高得点群361人(36.1%)であった。適量注文をする者は,女性,高学歴の者が多く(各々p=0.009,p=0.001),低収入の者が少なかった(p=0.047)。また,健全な食生活を実践しており(p < 0.001),主観的健康感が高く(p=0.014),BMIは低かった(p=0.009)。

    【結論】適量注文は,健康維持と関連する可能性が示された。さらなる普及のため,男性,低学歴,低収入の者へのアプローチと,飲食店の環境整備が求められる。

資料
  • 千田 茉登佳, 田中 景子, 佐藤 実
    原稿種別: 資料
    2023 年 81 巻 2 号 p. 75-83
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル フリー

    【目的】生活習慣病予防と食環境改善研究へ貢献する目的で秋田県内のスーパーマーケットで販売されている弁当について「健康な食事(スマートミール)」の6項目の基準から栄養評価を行った。

    【方法】弁当を食材別に秤量して栄養計算を行い,スマートミールの2段階の基準(「650 kcal未満」,「650 kcal以上」)に分けて6項目について,基準値との比較,魚弁当(n=11)と肉弁当(n=14)の間での比較を統計解析により検討した。

    【結果】調べた25個の弁当は「650 kcal未満」,「650 kcal以上」に10個(40%)ずつ,上限値 850 kcal以上に5個(20%)あった。基準6項目全てを満たす弁当はなく,5項目と4項目を満たすものでも11個(44%)に留まった。PFC%エネルギーの3項目全てを満たす弁当は44%,食塩相当量が過剰のものは40%,野菜等重量不足は全てでみられた。肉弁当と魚弁当との間でエネルギー量に有意な差はなかった(p=0.071)が,脂質%エネルギーは魚弁当よりも肉弁当で有意に高かった(p=0.011)。さらに,肉弁当は野菜等重量できのこや海藻と同様に魚弁当より少なかった(p=0.018)。

    【結論】本研究で調べたスーパーの弁当のうちスマートミールの基準全てを満たすものはなく,全てで野菜等重量不足,PFC%エネルギー非充足弁当が約半分,食塩相当量過剰なものが40%と栄養バランスに課題のあるものが多くみられた。

  • 飯田 晃生, 湯面 百希奈, 髙山 祐美, 鈴木 新, 半澤 史聡, 永井 成美
    原稿種別: 資料
    2023 年 81 巻 2 号 p. 84-92
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル フリー
    電子付録

    【目的】グアテマラ共和国(以下,グアテマラ)学童の栄養課題を,日本の戦後以降の学童の体格データや学校給食の歴史との比較により明らかにすること,その上で,グアテマラ学童の栄養状態改善に学校給食が果たす役割と必要な方策について考察すること。

    【方法】2017年にグアテマラS市(以下,S市)で測定した学童3,282名の身長と体重を,学校保健統計より得た日本の学童のデータと比較した。両国の学校給食の歴史や内容の情報は,文献調査とグアテマラ現地調査で収集した。学校給食の栄養量は,写真資料(文献・現地撮影)等から使用食品と分量を推定して算出した。

    【結果及び考察】2017年のS市の6~12歳学童の平均身長と体重は,同年の日本の学童よりも低値を示し,特に身長は,深刻な栄養不足下にあった1948年の日本の学童に近い値であった。両国の学校給食の歴史を比較すると,日本では戦後,昼食として中断なく提供されてきたが,グアテマラでは補食として提供され複数回の中断があった。また,日本では1947年の学校給食開始後7年で学校給食法が制定されたが,グアテマラでは1959年の学校給食開始から同法制定に58年を要した。

    【結論】学校給食開始約60年後にも,S市の学童において,単なる栄養不良のみでなく年齢相応に身長が伸びない発育阻害の存在が示唆された。日本では学童の体格向上に学校給食が寄与したことから,S市学童の栄養改善と体格向上には学校給食法に基づく栄養価の高い給食の持続的提供が必要と考えられる。

  • 外園 海稀, 佐藤 清香, 赤松 利恵, 鮫島 媛乃
    原稿種別: 資料
    2023 年 81 巻 2 号 p. 93-100
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル フリー

    【目的】日本における栄養教育での皮膚カロテノイド(SC)スコアの活用に向けて,日本人のSCスコアと野菜摂取皿数の関連を検討する。

    【方法】2020年6月~11月,日本国内の企業など19施設から551人を対象に,SCスコア測定と質問紙調査を実施した。t検定,一元配置分散分析を用いて属性,食品摂取状況ごとにSCスコアを比較した。その後,単回帰分析にてSCスコアと野菜摂取皿数の関連を検討した。

    【結果】解析対象者520人(解析対象率94.4%)のSCスコア平均値(標準偏差)は377(109)であった。SCスコアは野菜摂取皿数が多い者,女性,60歳代以上,非喫煙者,および果物,野菜ジュース,青汁,サプリメント摂取ありの者で高かった。単回帰分析の結果,野菜摂取皿数が多いほどSCスコアが高く(p<0.001),単回帰式はSCスコア=22.6×野菜摂取皿数の代表値+324で表された。また,属性や野菜以外の食品摂取状況を調整しても,野菜摂取皿数はSCスコアに影響していた(p<0.001)。

    【結論】SCスコアが高いほど野菜摂取皿数は多く,野菜の摂取状況の指標としても使用できることが示唆された。単回帰分析で得られた回帰式によって,SCスコアを用いて野菜摂取皿数を推定することが可能となったことから,今後の栄養教育における活用が期待される。

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