栄養学雑誌
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78 巻, 2 号
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総説
  • 土橋 卓也
    原稿種別: 総説
    2020 年 78 巻 2 号 p. 49-56
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/05/27
    ジャーナル フリー

    食塩の過剰摂取は,高血圧の発症,重症化はもとより脳卒中,心臓病,腎臓病など心血管合併症発症の要因となり,健康寿命延伸の阻害要因となることは明らかである。日本高血圧学会が2019年5月に改訂した高血圧治療ガイドライン(JSH2019)は,従来「正常高値」としていた血圧区分 130~139/80~89 mmHgを「高値血圧」として管理対象としたこと,降圧目標をより低値としたことより,非薬物療法,特に 6 g/日未満を目標とした減塩の重要性を強調している。また厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2020年版)」でも,一般人の食塩摂取の目標量を男性 7.5 g未満/日,女性 6.5 g未満/日と引き下げ,国民レベルでの減塩の推進を提唱している。さらに,2018年,「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中,心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(脳卒中・循環器病対策基本法)が成立したことから,循環器病の一次・二次予防を目的とした減塩の推進はきわめて重要な課題となった。日本高血圧学会では,国民レベルでの減塩を目指して様々なアプローチでの取り組みを行っている。依然として食塩摂取量が多いわが国において,どこまで減塩が可能となるか,今後の取り組みの成果が問われている。

原著
  • 大野 公子, 野澤 美樹, 伊藤 早苗, 佐藤 理恵子, 石田 裕美, 上西 一弘
    原稿種別: 原著
    2020 年 78 巻 2 号 p. 57-65
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/05/27
    ジャーナル フリー

    【目的】中学1年生女子における鉄欠乏を横断的に把握し,鉄欠乏のリスク因子を明らかにして,鉄欠乏の予防に役立てることを目的とした。

    【方法】我々は,都内にある私立中高一貫校において,身体組成,血液検査等を継続して実施している。本研究の解析対象者は2012~2017年度に入学した中学1年生女子715名のうち,本研究で使用する全てのデータに不備のない493名である。調査項目は,身体組成,血液検査結果,食物摂取頻度調査,日常生活に関するアンケートとした。なお血清フェリチン 12 ng/ml未満を鉄欠乏群, 12 ng/ml以上を正常群として解析を行い,二項ロジスティック回帰分析を用いて鉄欠乏のリスク因子を検討した。

    【結果】正常群に比べ,鉄欠乏群は肥満度,体脂肪率,体脂肪量,初経発来者率が有意に高値で,初経後経過月数が有意に長かった(p<0.05)。正常群に比べ,鉄欠乏群は魚や肉を昼食に「食べない」と回答した者の割合が有意に高く,自分の体型に「満足している」と回答した者の割合が有意に低かった(p<0.05)。初経発来してない者に比べ,発来している者は鉄欠乏のリスクが9.44倍高く,魚や肉を昼食に「食べない」者に比べ,「普通に食べる」「たっぷり食べる」者は鉄欠乏のリスクが0.28倍,0.09倍それぞれ低かった(p<0.05)。

    【結論】中学1年生女子の鉄欠乏を予防するためには,体外への鉄損失量を食事で補うことが必要であり,鉄欠乏のリスクは,昼食に肉や魚を食べる者において低いことが示唆された。

研究ノート
  • 塩原 由香, 村山 伸子, 山本 妙子, 石田 裕美, 中西 明美, 駿藤 晶子, 硲野 佐也香, 野末 みほ, 齋藤 沙織, 吉岡 有紀子
    原稿種別: 研究ノート
    2020 年 78 巻 2 号 p. 66-77
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/05/27
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究は,小学生の日常の食卓に並び,かつ喫食した料理から1食の食事パタンの出現状況を明らかにする。

    【方法】対象者は,K県の小学5年生235人のうち,4日間の食事記録がある185人(有効回答78.7%)。調査は,2013年10~11月の平日,休日の各2日の連続する4日間に児童自身が写真法を併用した秤量法または目安量記録法によって実施した。解析対象の食事は,185人の朝・昼・夕の3食×4日間の12食/人のうち,学校給食の2食を除く1,850食から,欠食を除いた1,820食とした。料理は食事記録に記載された料理名,主材料並びに食事の写真を照合し,16の料理区分(主食,主菜,副菜,主食と主菜等を合せた料理等)に分類した。食事パタンは,料理区分を組合せた13の食事パタン(「主食+主菜+副菜」「主食と主菜等を合せた料理+主菜+副菜」等)に分けた。解析方法はχ2 検定を用いた。

    【結果】13の食事パタン全てが出現した。多い順に「主食」19.9%,「主食+主菜+副菜」17.3%であった。食事区分別では,朝食は平日・休日共に「主食」が30.8%,33.4%と多かった。夕食は「主食+主菜+副菜」が多かったが,4割以下の出現に留まった。

    【結論】食事パタンは全体で「主食」が多かった。夕食は平日・休日共に「主食+主菜+副菜」が多かったが,出現数は4割に留まり,その他10種以上の食事パタンが出現した。

  • 神田 聖子, 仲田 瑛子, 小田島 祐美子, 中野 都, 佐藤 清香, 江木 伸子
    原稿種別: 研究ノート
    2020 年 78 巻 2 号 p. 78-87
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/05/27
    ジャーナル フリー

    【目的】日本食品標準成分表2015年版において,調理前(原材料)と調理後食品を用いた献立の栄養価の差を明らかにし,栄養価計算を行う際の留意事項を検討する。

    【方法】学内の給食管理実習における30日分の昼食献立を対象に,調理を考慮しない「作成時」と考慮した「提供時」について対応のあるt検定またはWilcoxon符号順位検定を用いて1食あたりの栄養価を比較した。食品群別による比較も行なった。

    【結果】エネルギーの平均値±標準偏差は作成時で 719±70 kcal,提供時で 699±65 kcalであり,提供時で有意に低かった(p<0.001)。提供時で有意に低値となった栄養素は脂質,飽和脂肪酸,カリウム,カルシウム,鉄,ビタミンA,ビタミンB1,ビタミンB2,ビタミンCであり,食物繊維のみ提供時で有意に高かった。食品群別にみると,肉類と野菜類で提供時の栄養価の減少が目立った。

    【結論】作成時と提供時の栄養価には統計的な差があり,栄養価計算は調理後食品で行うことが望ましいとわかった。両者の差は肉類及び野菜類で調理後食品を用いることにより解消できると考える。やむを得ず原材料で栄養価計算を行う際は,カリウム,鉄,水溶性ビタミンの給与栄養目標量を食事摂取基準の110~140%に設定すること,または,肉類の使用量を予定原材料の115%,野菜類を132%にすることで提供時の値に近似することが示唆された。

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