女子大生12人を10日間宿泊させ, その間同一の食事を給与しながら, 連続3日 (第1班は前半3日間, 第2班は後半3日間), 寒冷暴露, 暗黒椅座, 連続計算の3種類のストレスを負荷し, 身体計測, 血圧, 体温, 自覚症状, 尿中カテコールアミン排泄量等を調査した。その結果は次のとおりである。
1) 朝の収縮期血圧及び体温はストレス負荷日に相当して上昇する傾向がみられた。
2) 疲労検査に使われる30項目の自覚症状調べでは, 夜の自覚症状がストレス負荷日に一致して増加傾向を示した。
3) 自覚症状のうち, ストレス負荷と有意の相関を示す17項目を選んで調べたところ, 後半負荷群に有意差がみられ, 30項目よりもストレスの影響を明確に表すことができた。
4) ストレスの種類別の自覚症状の日内変化では, 対照日に比べ, 連続計算で有意の増加が, 寒冷暴露でも増加傾向が現れたが, 暗黒椅座ではむしろ自覚症状は減少した。
5) 尿中カテコールアミンの排泄量はストレス負荷日に相当して増加傾向にあったが, 特に後半負荷群で有意差が認められた。
6) ストレスの種類別のカテコールアミンの日内変動は, 連続計算でノルアドレナリン及びアドレナリンが, 寒冷暴露でアドレナリンが有意に増加したが, 暗黒椅座ではほとんど変化は認められなかった。
7) 被験者自身の感じた主観的負荷度では, 暗黒椅座が最も負担を感じ, 連続計算がこれに次いだが, 自覚症状や尿中カテコールアミン排泄量からみるとストレスの強さは, 連続計算, 寒冷暴露, 暗黒椅座の順に大きかったと考えられる。
8) 血液検査では赤血球数, 白血球数, ヘマトクリット値の3項目でストレス負荷による増加傾向が認められた。
9) 体重は, 被験者の1人を除き給与した食事がすべてエネルギー所要量を上回っているにもかかわらず, むしろ減少傾向が認められた。
以上の結果から, 血圧, 体温, 自覚症状, 尿中カテコールアミンは, ストレス負荷の程度を知る上で重要な指標となり得ることを示唆するものと考えられた。
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