ある国家公務員事務系職員の年齢, 肥満度, 血中TG, TCおよびUA値を指標に, 食生活のおおよその実態と食品知識, アルコール摂取と健康障害についての認識を調査し, 以下の結果を得た。
1) 主食は, 約90%の者が米飯を好み, 要因別ではいずれの群も差異がなかった。副食のうち, たん白質性食品は魚類を好む傾向が強く, 要因別では50歳以上群で多い傾向を示し, 110.1%以上の肥満群ではやせ群と比べて有意に少なかった。大豆製品も好んで摂取され, 要因別にも特に差異がなかった。脂肪については, 約1/3があぶらっこいものを好み, 要因別には110.1%以上の肥満群, UA7.1mg/dl以上群に多い傾向がみられた。野菜の摂取は, 110.1%以上の肥満群, TC200mg/dl以上群, およびUA7.1mg/dl以上群で少ない傾向を示した。食塩摂取も約1/3が気にしないと回答した。
2) 果物を毎日摂取するとした者は, 要因別にみると, それぞれ31.4~50.0%程度を示すにとどまった。栄養知識については, 多くはビタミンを含むとし, 糖質を含むとしたものは約半数のみであった。牛乳に関しては, 毎日摂取するものが, 50歳以上群, TG200mg/dl以上群, TC200mg/dl以上群, UA7.1mg/dl以上群で多い傾向を示したが, 完全食品として理解している者は極めて少なかった。
3) アルコールをほぼ毎日摂取する者は, 年齢では39歳以下の若年者に, 肥満度では90.0~110.0%の正常体重者にやや多く, 血中脂質のうえではTG99mg/dl以下群, TC149mg/dl以下群でむしろ多い結果を示した。またUAでは7.1mg/dl以上群で多い傾向を示した。
4) アルコールが健康に及ぼす影響では, 少量であれば心配がないとの肯定的な回答が多く, 肝疾患や胃腸疾患との関連性を指摘した者は比較的多かったが, 糖尿病, 心疾患・高血圧症, あるいは高脂血症と回答した者は極めて少数だった。
以上より, 食生活習慣は, 肥満, 高脂血症, あるいは高尿酸血症とある程度の関連性が認められたが, アルコールとははっきりとした関係を認め難かった。しかし, 食品に関する栄養知識がかなり不足し, またアルコールと臓器障害に関する認識も不十分と考えられた。今回の対象者が, 比較的均質な国家公務員の事務系職員であることから, 今後は一般の人々に対する食品知識やアルコール摂取に関する保健指導を, 積極的に行うことが必要と考えられる。
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