【目的】小学生に調理を伴う食育活動が実施されていることから「調理経験が食事観,自尊感情,心身の健康,学習に対する意欲・関心と関連する」という仮説を立て,検証した。
【方法】2015年12月~2016年4月,近畿圏の市街地に位置する小学校3校の4~6年生749名を対象に自記式質問紙調査を行った。分析対象者は全ての質問項目に回答した485名とした。質問紙を6分類94項目で構成し,調理経験34項目,食事観8項目,自尊感情22項目,学習意欲12項目,教科に対する関心12項目,心身の健康6項目とした。分類ごとに探索的因子分析を行い,得られた因子を用いて仮説モデルを構築し,共分散構造分析により検証した。
【結果】探索的因子分析の結果,全17因子が得られた。調理経験では6因子,食事観では1因子,自尊感情では4因子,学習意欲では2因子,教科に対する関心では3因子,心身の健康では1因子が抽出された。共分散構造分析を行ったところ,調理経験,食事観,自尊感情,教科に対する関心の4変数によるモデルの適合度は良好な値を示した(GFI=0.967,AGFI=0.939,RMSEA=0.045)。調理経験は食事観,自尊感情に対して有意なパス係数0.87,0.68を示し(p<0.001),食事観,自尊感情はいずれも教科に対する関心に対して有意なパス係数0.25,0.57を示した(p<0.001)。
【結論】小学生の調理経験は,食事観,自尊感情に直接影響を及ぼし,間接的に教科に対する関心に影響を及ぼすことが示唆された。
【目的】主食・主菜・副菜を組み合わせた食事と健康・栄養状態および食物・栄養素摂取との関連について国内の研究動向を把握した。
【方法】2000~2017年に発表された論文を対象に,医学中央雑誌とNII学術情報ナビゲータ(CiNii)を用い「主食AND主菜AND副菜」で検索した。表題,抄録,本文を,本研究の以下の採択基準と照合・精査し,包含基準(日本人対象,分析疫学研究,曝露が主食・主菜・副菜を組み合わせた食事摂取,アウトカムが食物・栄養素摂取状況及び健康・栄養状態,対象集団の特徴明記)と除外基準(介入研究,ケースレポート,ケースシリーズ,エコロジカル研究)を満たす12件を採択した。
【結果】採択論文はすべて横断研究で,研究対象者は成人期が最も多かった。主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の把握は,質問紙調査法によるものが過半数を占め,それらの質問項目は様々であった。食物・栄養素摂取との関連を検討した研究6件では,いずれも主食・主菜・副菜の揃った食事回数の多い人ほど,エネルギー,たんぱく質,各種ビタミン・ミネラルの摂取量が多く,日本人の食事摂取基準に合致していることが報告されていた。健康・栄養状態との関連を検討した8件の研究は,一貫した結果を示さなかった。
【結論】主食・主菜・副菜を組み合わせた食事は必要な栄養素の十分な摂取に関連していることが示唆された。健康指標との関連については,縦断研究を含めたさらなる研究が必要である。
【目的】学校における食育の計画並びに評価の実施状況と関連する知識を把握し,管理栄養士免許の有無と免許取得時期による比較検討を行うこと。
【方法】2016年5~12月,栄養教諭・学校栄養職員(1,406人)を対象に,食育計画と評価と関連する知識について,横断的調査を行った。記述統計後,管理栄養士免許の有無,および旧カリキュラムと新カリキュラムでの免許取得で,各項目の回答の違いをχ2 検定およびMann–WhitneyのU検定で検討した。さらに,属性等を調整し,各項目を独立変数,管理栄養士免許または免許取得時期を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。
【結果】904人(回収率64.3%)が回答した。食育計画の実施状況では,約半数が実態把握の実施や行動目標の設定を行っている一方で(各々45.5%,49.1%),7割以上の者が評価指標や数値目標の設定を計画時に行っていないと回答した(各々70.9%,73.3%)。また,数値を用いた目に見える形での子どもの変化を評価している者は14.1%であった。群間の比較では,管理栄養士免許所有者および新カリキュラムでの取得者で,知識はある者が多かったが,実施状況に違いはなかった。ロジスティック回帰分析でも同様の結果であった。
【結論】学校における食育の計画と評価の実施状況を調査した結果,目に見える形での子どもの変化を評価している者は約1割であった。また,新カリキュラムでの管理栄養士免許取得者の知識は高かったが,実践している者は少なかった。