栄養学雑誌
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69 巻, 2 号
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原著
  • 高田 和子, 別所 京子, 田中 茂穂, 田畑 泉
    2011 年 69 巻 2 号 p. 57-66
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/02
    ジャーナル フリー
    【目的】秤量法による食事記録から調査した総エネルギー摂取量(TEI)を二重標識水法により測定した総エネルギー消費量(TEE)と比較することにより,TEIの推定精度を検討した。
    【方法】20~69歳の48名(男性24名,女性24名)を解析対象とした。TEIは,秤量法による食事記録と同時に撮影したデジタルカメラによる映像から計算した。体重補正済TEE(cTEE)は,二重標識水法により2週間の平均として求めたTEEと調査期間中の体重変動から計算した。
    【結果】TEEとTEIは,男性では 2,819±620 kcal/day,2,308±466 kcal/dayで女性では 2,045±501 kcal/day,1,823±414 kcal/dayであった。男性では,TEIは有意に過小評価されたが(-15.5±21.5%),女性でのTEIは有意な過小評価はみられなかった。TEIの評価にはTEIの大小による系統誤差は見られなかった。Intraclass correlation coefficient(0.344:95%信頼限界 0.063~0.574),Spearmanの順位相関(0.460,p=0.001)は中程度から弱いであった。TEIの推定精度には,男性では記録した食品数,食事回数3日間合計,女性では年齢が影響していた。
    【結論】今後さらに,調査方法や対象ごとのTEIの推定精度の程度を明らかにすること,食品群別や栄養素別の摂取量の推定精度を明確にしていくことが必要であると考えた。
短報
  • 堀川 翔, 赤松 利恵, 伊能 由美子, 堀口 逸子, 丸井 英二
    2011 年 69 巻 2 号 p. 67-74
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/02
    ジャーナル フリー
    【目的】児童に対する食の安全教育について,現状及び今後の課題に関する情報を小学校の教職員から質的に収集すること。
    【方法】2010年4月に,グループインタビューを実施した。対象者は,東京都内の小学校に勤務する栄養教諭・学校栄養職員(以下,学校栄養士とする)6名,家庭科教諭6名,養護教諭4名であった。グループインタビューは,職種別に各90分ずつ実施した。グループインタビューのテーマは,現在行っている食の安全教育の内容,及び今後の課題であった。逐語録の作成後,職種別に,KJ法によってカテゴリ化し,構成図を作成した。
    【結果】現在行っている食の安全教育の内容について,学校栄養士では,「安心できる食材の利用」,「食中毒・感染症の予防」などの5つの大カテゴリに,家庭科教諭では,「食品添加物」,「事故・けがの防止」などの5つの大カテゴリに,養護教諭では,「食物アレルギー」,「歯磨き指導」などの4つの大カテゴリにまとめられた。3職種の共通項目は,「食中毒・感染症の予防」,「食物アレルギー」であった。今後の課題は,「食の選択能力」,「食への興味・関心」など,7つの大カテゴリにまとめられた。
    【結論】小学校に勤務する教職員がとらえる食の安全教育の概念および内容は,幅広い分野にわたることが示された。今後は,量的調査によって,食の安全教育の内容をさらに検討する必要がある。
  • 安部 景奈, 赤松 利恵
    2011 年 69 巻 2 号 p. 75-81
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/02
    ジャーナル フリー
    【目的】学校給食の食べ残しに関連する要因を検討すること。
    【方法】2009年5~6月,都内の小学校に通う5~6年生112名を対象に,自己記入式質問紙調査を行い,その日の給食についてたずねた。調査は2日間,給食の後に行った。調査当日の給食の食べ残しの状況を従属変数とし,食前の空腹感,食後の満腹感,献立の嗜好,喫食時間の過不足,食具,性別,BMIを独立変数として,ロジスティック回帰分析を行い,食べ残しの要因を検討した。同一の対象者に2回ずつ調査を実施したため,一般化推定方程式(generalized estimating equation: GEE)を用いて延べ224名として解析を行った。
    【結果】有効回答数は延べ222人であった(回収率99%)。多変量ロジスティック回帰分析の結果,喫食時間(オッズ比[OR]=45.31,95%信頼区間[95%CI]=13.46~152.53),嗜好(OR=2.71,95%CI=1.04~7.09),BMI(OR=0.80,95%CI=0.65~0.99)が食べ残しと関連していた。
    【結論】本研究により,給食の食べ残しに関連する要因には,喫食時間,嗜好,BMIがあることが示唆された。今後は,児童の食べ残しを減らすための栄養教育を行うとともに,学校全体として食べ残しの問題に取り組む対策を考えていく必要がある。
資料
  • 森 光寿, 立石 小百合, 戸谷 永生
    2011 年 69 巻 2 号 p. 82-89
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/02
    ジャーナル フリー
    【目的】大量調理に使用される揚げ油の劣化に関するデータを収集し,揚げ油劣化の簡便な検査方法について検討する。
    【方法】大学内食堂で連続的に揚げ作業に使用している油の化学性状分析と色相の測定を行った。
    【結果】本大学食堂の揚げ油は,1日に3時間,連続9日間使用される場合,酸価(AV)は食品衛生法に定められる範囲内にあり,カルボニル価(COV),極性化合物量(PC),トリアシルグリセロール量(TG),色相はそれぞれ2~10,5~18%,90~98.5%,G1~12となった。AV,COV,PCと色相ガードナーの変化の相関性は高かったが,AV,COV,PC,色相ガードナーとTGの変化は相関性が低かった。
    【結論】本大学食堂で揚げ調理に使用される油のAV,COV,PCと色相ガードナーの変化はよく相関するため,測定が簡便・安価な色相ガードナーを,揚げ油劣化の進捗を測定する方法として調理現場で利用可能なことが示唆された。
  • 祓川 摩有, 佐野 美智代, 大橋 英里, 田辺 里枝子, 五関-曽根 正江
    2011 年 69 巻 2 号 p. 90-97
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/02
    ジャーナル フリー
    【目的】児童生徒における健全な食生活や食習慣は,心身の発達に重要であるばかりでなく,成人後の健康にも大きく影響する。そこで本研究では,対象者の実態把握を目的とし,特に健康と食生活への意識に着目し,小・中学生の食生活への意識と食習慣との関係について検討した。
    【方法】埼玉県H市内の小学5年生(計6校)および中学2年生(計6校)を対象に,2009年7月に質問紙調査(自記式)を実施し,小学生433名,中学生442名を解析対象とした。「自分の健康と食生活を意識している」と回答した「意識あり」群と意識していないと回答した「意識なし」群に分けて,男女別に小・中学生でそれぞれ比較した。
    【結果】小・中学生では,男女とも「意識あり」群が「意識なし」群に比べ,朝食欠食率が低く,主食とおかず・汁ものが揃った朝食を摂取している者の割合が高かった。また,「おやつは時間や量を決めて食べている」と回答した者が「意識あり」群で多かった。さらに,小学生の女子では,「意識あり」群が,「給食を残さず食べる」や「食事の準備・片づけを手伝う」と回答した者が有意に多く,朝食を「ひとりきり」で食べていると回答した者の割合は低かった。
    【結論】小・中学生において,自分の健康と食生活を意識している者では,朝食や間食,給食の摂取状況など望ましい食習慣を実践しており,「健康と食生活への意識」が,健全な食習慣につながることが示唆された。
  • 堀川 翔, 赤松 利恵, 谷口 貴穂
    2011 年 69 巻 2 号 p. 98-106
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/02
    ジャーナル フリー
    【目的】年代による米飯の摂取頻度を比較し,年代別に米飯の摂取頻度と食習慣,健康状態との関連を検討する。
    【方法】自己記入式質問紙による横断的調査を,15歳以上の3,033名に実施した。質問紙では,年代,米飯の摂取頻度,食習慣,健康状態,身長及び体重をたずねた。クロス集計及びχ2検定によって,年代(10・20歳代,30・40歳代,50歳以上)と米飯の摂取頻度を比較した。また,単変量及び多変量ロジスティック回帰分析によって,年代別に米飯の摂取頻度と食習慣,健康状態との関連を検討した。
    【結果】769名の対象が質問紙に回答した(有効回答率25.4%)。米飯の摂取頻度は,年代によって異なっていた。50歳以上の人の米飯の摂取頻度が最も高かった。また,年代によって,米飯の摂取に関連する食習慣,健康状態は異なっており,10・20歳代,30・40歳代では「主食・主菜・副菜のそろった食事」と「食欲」,50歳以上では「主食・主菜・副菜のそろった食事」であった。
    【結論】米飯の摂取頻度に関連する食習慣,健康状態が年代別に示された。今後は年代別に米飯摂取の推進方法を検討する必要があると考えられた。
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