栄養学雑誌
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70 巻 , 2 号
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原著
  • 入山 八江, 村山 伸子
    2012 年 70 巻 2 号 p. 83-98
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    【目的】トランスセオレティカルモデル(TTM)を応用し,職場の男性を対象に栄養教育と食環境介入を6か月間実施し,体重コントロールに及ぼす効果を検証する。
    【方法】無作為化比較試験。新潟市内の5つの事業所で,肥満および肥満予備群の男性対象者を募集した。解析対象者は65例(介入群32例:平均年齢45.6歳,対照群33例:46.0歳)であった。介入は,TTMを応用した栄養教育と給食でのヘルシーメニュー,栄養情報の提供を6か月間行った。一次アウトカムは体重とBody Mass Index (BMI) とした。二次アウトカムは栄養素等摂取量と減量,食生活,運動,セルフモニタリングの行動変容ステージとし,影響評価として食行動,食知識,体重コントロールへの態度,社員食堂へのアクセスを質問紙法で調査した。
    【結果】体重とBMIは,対照群の増加量が介入群より有意に多かった。栄養素等および食品群別摂取量のうち,穀類の減少量が介入群で有意に多かった。行動変容ステージのうち「健康のために食生活を変える」と,影響評価のうち「社員食堂での情報へのアクセス」は,介入群の得点の増加量が対照群より有意に多かった。
    【結論】TTMを応用した栄養教育と食環境介入を6か月間実施することで,対象者の社員食堂での情報へのアクセスが高まり,「健康のために食生活を変える」行動変容のステージが前進し体重をコントロールさせる可能性が示唆された。
  • 日名子 まき, 衛藤 久美, 武見 ゆかり
    2012 年 70 巻 2 号 p. 99-109
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    【目的】食品企業従業員の会社の食育活動に参加する行動意思とその関連要因を明らかにすることを目的とした。
    【方法】中食企業O社の従業員501名を対象に,集合法による自記式質問紙調査を実施し,390名から有効回答を得た(有効回答率77.8%)。調査項目は合理的行動理論に基づき設定し,「会社の食育活動に参加しようと思うか」という行動意思への回答から,「大いに思う群(23.6%)」「少し思う群(37.4%)」「どちらともいえない又は思わない群(39.0%)」の3群に分け,会社の食育活動に関する態度,主観的規範,消費者支援のための態度,知識・スキル,会社へ期待するサポートと,個人についてのQOL,健康状態,食育活動による変化,従業員個人の特性について比較検討した。さらに,行動意思に関連する要因を検討するために,多項ロジスティック回帰分析を行った。
    【結果】会社の食育活動に参加しようと大いに思うこと(行動意思)には,食育に関心がある(オッズ比[95%信頼区間]:5.34[2.86~9.95]),主観的規範が高い(同2.65[1.81~3.88]),食育という言葉も意味も知っている(同2.40[1.19~4.82])ことが関連していた。
    【結論】食品企業従業員の食育活動への行動意思には,食育への関心と主観的規範が強く関連していることを明らかにし,従業員の行動意思を高めるための具体的方策を示唆した。
  • 赤松 利恵, 永井 成美, 長幡 友実, 吉池 信男, 石田 裕美, 小松 龍史, 中坊 幸弘, 奈良 信雄, 伊達 ちぐさ
    2012 年 70 巻 2 号 p. 110-119
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    【目的】管理栄養士教育の到達度を評価するために作成したコンピテンシー項目のうち,基本コンピテンシーの高い学生の特徴について検討することを目的とした。
    【方法】2010年12月に管理栄養士養成施設(111施設)に自記式質問紙を送付し,102施設の4年次在籍者より6,895人の有効回答を得た(推定回収率75.7%)。40項目のコンピテンシー(5段階評価,基本4項目,共通29項目,職域別7項目)の他,属性(性・年齢,卒業後の進路状況等)をたずねた。基本コンピテンシー合計得点の10・50・90パーセンタイル値(十分位数,decile)を基準に4群に分け(得点の高い順よりD4,D3,D2,D1),属性,共通・職域別コンピテンシーの得点を比較した。
    【結果】97.6%が21~25歳であり,90.1%が女性であった。基本コンピテンシーの4群の分布は,D4:662人(9.6%),D3:3,113人(45.1%),D2:2,166人(31.4%),D1:948人(13.7%)であった(欠損6人,0.1%)。基本コンピテンシーの高い群(D4)に比べ,基本コンピテンシーの低い群(D3~D1)で,女性,既卒者,社会人経験者,卒業研究実施者,国家試験受験予定者が少なかった。また,基本コンピテンシーの低い群では,就職内定者が少なく,さらに,管理栄養士を採用条件とする就職内定者が少なかった。共通・職域別コンピテンシーの全ての項目で,基本コンピテンシーの高い群の得点は高かった。
    【結論】基本コンピテンシーの高い学生の特徴として,卒業研究の実施,国家試験受験の他,就職・進学が内定していることが示された。また,基本コンピテンシーが高い学生は,その他のコンピテンシーも高かった。
短報
  • 野口 知里, 小林 身哉, 小山 洋一
    2012 年 70 巻 2 号 p. 120-128
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    【目的】サプリメントとしてのコラーゲンの経口摂取による効果に関する報告は多いが,食事から摂取したコラーゲン量の詳細に関してはほとんど報告されていない。そこで,男性に比べてコラーゲンの効果に関心が高いと思われる女性を対象にして,食事由来のコラーゲン摂取量を明らかにすることとした。
    【方法】対象者は20代から50代までの女性61名とし,平日2日間の全食事内容を目安量記録法により調査した。動物性食材中のコラーゲン量は,コラーゲンに特徴的なアミノ酸であるヒドロキシプロリン量から算出した。
    【結果】20代から50代女性の1日あたりのコラーゲン摂取量は平均 1.9 gであった。全対象者が2日間で摂取した食材ごとの摂取量を算出したところ,肉類からのコラーゲン供給率が60.5%と多く,その中でも特に豚肉由来のコラーゲン摂取量が全体の33.4%と高く,摂取頻度も最も高かった。一方,魚類の摂取頻度は豚肉の7割程度で,摂取量も豚肉の約6割であり,全体として魚類からのコラーゲン摂取量が少ない結果となった。コラーゲンを多く含む魚の皮の摂取率は54.0%であった。さらに,コラーゲンの摂取量は米を主食とした食事で有意に高く,パンと麺を主食とした食事では低かった。この主食別のコラーゲン摂取量の差は,副食の品数に関係していることが明らかとなった。
    【結論】今回調査した成人女性の1日あたりのコラーゲン摂取量は平均 1.9 gであった。食事からのコラーゲン摂取量には,食材の選択だけでなく主食の種類と副食の品数も関与していることが示唆された。
実践報告
  • 堀川 翔, 赤松 利恵, 堀口 逸子, 丸井 英二
    2012 年 70 巻 2 号 p. 129-139
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    【目的】小学校高学年向けの食の安全教育に用いるカードゲーム教材「食のカルテット」のルールや内容,受け入れやすさについて利用可能性を検討すること。
    【方法】2011年9月から11月に,A県1市1町の小学校計6校の5年生,6年生,教職員を対象に,「食のカルテット」の施行及び自己記入式質問紙調査を実施した。「食のカルテット」は,食の安全の内容を中心とした,食に関する全般的な知識を習得することを目標としたカードゲーム教材である。ゲームの実施前及び実施後に「食のカルテット」の内容を10問質問し,ゲーム実施前後の回答を,各問題の正答率はMcNemar検定,合計得点はWilcoxonの符号付き順位検定によって比較した。また,児童及び教職員にゲームの内容やルールについての評価を質問した。
    【結果】児童294人,教職員28人が質問紙に回答した。「食のカルテット」の内容の問題は,実施前より実施後で正答率が上がったものと下がったものがみられたが,10問の合計得点は実施後が有意に高かった(Z=-3.657,p<0.001)。91.8%の児童がゲームを「とても楽しかった」と回答しており,自由記述(84.0%が回答)でも「楽しみながら・遊びながら学べた」という記述が回答者の34.0%にみられた。教職員の自由記述(63.3%が回答)でも「食に関する知識が身につく」,「楽しみながら学べる」などの意見が得られた。
    【結論】児童の回答から,「食のカルテット」のルールは児童に受け入れられ,楽しく学べる教材であることが示された。今後は,教材としての効果を検討する必要がある。
資料
  • 神田 知子, 高橋 孝子, 久保田 恵, 小林 奈穂, 村山 伸子, 齊藤 陽子, 増田 利隆, 河野 美穂, 石田 裕美
    2012 年 70 巻 2 号 p. 140-151
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    【目的】特定給食施設において適切な栄養管理が行われているかを把握し,必要な指導・助言を行うために,各自治体は特定給食施設に栄養管理報告書の提出を求めている。日本人の食事摂取基準(2010年版)には,給食施設での食事摂取基準の活用の基礎理論としてPDCAサイクルに基づく栄養管理の手順が示されている。本研究では,特定給食施設における食事摂取基準の活用の実態を把握するために,各自治体の栄養管理報告書の書式から基礎理論の手順に基づく栄養管理の実施が把握できるかを調査した。
    【方法】栄養管理報告書の書式は2010年3~4月に厚生労働省が収集した。114の自治体(都道府県,保健所を設置する市および特別区)から提出のあった書式のうち,「病院・介護保険社会福祉施設用」の87自治体と「事業所用」86自治体の書式について集計した。集計内容は『対象集団の特性の把握』,『身体状況や食事摂取量の把握』,『食事計画の決定と実施の評価』とした。
    【結果】『対象集団の特性の把握』に必要な給食対象集団の特性と人数の両方の記載を求めていない自治体が,「病院・介護保険社会福祉施設用」,「事業所用」ともに2.3%認められた。『身体状況や食事摂取量の把握』に必要な項目として,半数以上の自治体が把握している項目は,「病院・介護保険社会福祉施設用」の身長と体重に関する項目のみであった。『食事計画の決定と実施の評価』に必要な項目として,給与栄養目標量の記載を求めている自治体は「病院・介護保険社会福祉施設用」,「事業所用」ともに約95%であったが,食事摂取量の記載を求めている自治体は約11.5%に過ぎなかった。
    【結論】本研究で収集された栄養管理報告書において,給食の食事計画とその評価・計画の見直しにつながる食事摂取量の評価を把握できる項目は限られていた。給食の栄養管理の手順に即した書式の検討が必要である。
  • 長幡 友実, 吉池 信男, 赤松 利恵, 永井 成美, 石田 裕美, 中坊 幸弘, 小松 龍史, 奈良 信雄, 伊達 ちぐさ
    2012 年 70 巻 2 号 p. 152-161
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/24
    ジャーナル フリー
    【目的】卒業時点で到達が必要な専門的実践能力として作成した,卒前教育レベルのコンピテンシー測定項目を用いて,新カリキュラムで教育を受けた管理栄養士養成課程4年生のコンピテンシー到達度を評価する。
    【方法】2010年12月に管理栄養士養成施設(111施設)に自記式質問紙を送付し,102施設の4年次在籍者より6,895人(推定回収率75.7%),栄養教育論,臨床栄養学,公衆栄養学,給食経営管理論を担当する専任教員より374人(各教科1名,推定回収率84.2%)の有効回答を得た。学生は,40項目のコンピテンシー(基本4項目,共通29項目,職域別7項目)の到達度を5段階で自己評価した。教員は,基本を除く36項目について自施設学生全体の到達者割合を5段階で評価した。学生,教員において,項目別に平均点数を算出し,順位化した。
    【結果】学生による自己評価では,倫理的配慮やコミュニケーション,衛生管理,食事摂取基準,食品成分表等の基礎的内容に関する項目の点数順位が高く,調査研究や疫学,公衆栄養,行動科学の理論・モデルやカウンセリングスキルの活用等の専門的内容に関する項目の点数順位が低かった。教員による評価も,ほぼ同様の結果であった。
    【結論】新カリキュラムで教育を受けた学生のコンピテンシーについて,自己評価及び他者評価により項目間の相対的な順位を記述した。到達度の低かった内容については,今後重点的な教育が必要であることが示唆された。
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