栄養学雑誌
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70 巻 , 3 号
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原著
  • 溝下 万里恵, 赤松 利恵, 山本 久美子, 武見 ゆかり
    2012 年 70 巻 3 号 p. 165-172
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/29
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】成人の男女を対象に,メタボリックシンドローム(MetS)と生活習慣および体重変化の関連を検討する。
    【方法】2009年度,特定健康診査と自記式の標準的質問票に回答したA健康保険組合員の被保険者または被扶養者3,342人(男性1,614人,女性1,728人)のデータを解析に用いた。標準的な質問票には,性別,年齢,生活習慣(運動行動:3項目,食行動:6項目,喫煙:1項目,休養:1項目),体重変化(長期的な体重の増加,短期的な体重の増減:各1項目)が含まれる。MetSの判定基準に従って対象者をMetS該当者,予備群,非該当者の3つに分類し,特定健康診査の結果およびMetSの判定とリスクの組み合わせを記述統計で示した。また,MetSの該当者と予備群を従属変数とし,生活習慣と体重変化との関連を,単変量と多変量ロジスティック回帰分析を用いて検討した。
    【結果】全体のMetS該当者は275人(8.2%),予備群は335人(10.0%)であり,男性のMetS該当者は236人(14.6%),女性のMetS該当者は39人(2.3%)だった。MetSのリスクのうち,血圧のリスクを持つ者が多かった(752人,22.5%)。MetS該当者および予備群と関連する生活習慣および体重変化は,男性において,歩行速度(オッズ比〔OR〕=1.56,95%信頼区間〔95%CI〕=1.20~2.02),食べる速さ(OR=1.46,95%CI=1.12~1.91),長期的な体重の増加(OR=7.91,95%CI=6.05~10.34)だった。女性では,歩行速度(OR=1.66,95%CI=1.02~2.72),長期的な体重の増加(OR=11.97,95%CI=6.93~20.67),短期的な体重の増減(OR=2.04,95%CI=1.25~3.34)であった。
    【結論】MetS該当者と予備群には,男女とも歩行速度と長期的な体重の増加が関連しており,これらの項目に加えて,男性では食べる速さ,女性では短期的な体重の増減が関連していた。
短報
  • 大宮 めぐみ, 清原 昭子, 木野山 真紀
    2012 年 70 巻 3 号 p. 173-180
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/29
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】栄養士・管理栄養士養成課程卒業者のうち,食品製造業,食品流通業等の企業への就職者について,就業実態を調査し,職場で要求される知識・能力を検討する。
    【方法】半構造化面接法による予備調査を経て,本調査では企業で勤務する栄養士・管理栄養士を対象として,デルファイ法による二回連続の質問紙調査を実施した(対象者数は186人および147人)。調査の期間は第一回調査が平成22年4月中旬から6月下旬,第二回調査は,平成22年8月中旬から10月上旬である。第一回,第二回調査を通じて,自由記述回答の分析には,Berelsonの内容分析法を採用した。
    【結果】第一回調査は調査対象者186名,回答者数147名(回収率79%,有効回答141名)であり,第二回調査は調査対象者147名,回答者数83名(回収率56%,有効回答81名)であった。回答者の多くが「販売」,「研究開発」,「営業」等の部署で,栄養や食品に関する情報提供に関わる業務に就いていた。また,内容分析の結果,「職場において栄養士・管理栄養士として求められていると感じる知識・能力」については「コミュニケーション能力・相手の話を聞く,立場を理解する能力」,「栄養・栄養学に関する知識」等の31カテゴリが形成された。
    【結論】食品関連の企業で働く栄養士・管理栄養士は,高いコミュニケーション能力,とりわけ栄養・健康に関する専門知識を理解し,わかりやすく伝える能力が期待されることが示唆された。
資料
  • 會退 友美, 赤松 利恵, 林 芙美, 武見 ゆかり
    2012 年 70 巻 3 号 p. 181-187
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/29
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】成人を対象とした食に関する主観的QOL(subjective diet-related quality of life (SDQOL))の信頼性と妥当性を検討する。
    【方法】平成21年11~12月に内閣府が実施した「食育の現状と意識に関する調査」に回答した2,936名分のデータを用いた(回収率58.7%)。対象者の性別は,男性1,344名(45.8%),女性1,592名(54.2%)であった。SDQOLの項目として作成された6項目について,信頼性の検討では,内的整合性としてクロンバックα係数を確認し,妥当性の検討では,構成概念妥当性と基準関連妥当性を検討した。基準関連妥当性の検討には,生活のゆとり感と生活満足度の項目を用いてSpearmanの順位相関係数(rs)を求めた。
    【結果】探索的因子分析,確証的因子分析を行った結果,4項目から成るモデルで適合度が良いことが示された(モデル適合度指標:GFI=0.99,AGFI=0.96,CFI=0.99,RMSEA=0.08; 90%CI: 0.06~0.10)。クロンバックα係数は,0.72であり,信頼性も確認された。また,基準関連妥当性の検討では,SDQOLと生活のゆとり感(rs=0.16,p<0.001)および生活満足度(rs=0.38,p<0.001)の間に正の相関がみられ,これらが高いと回答した者の方が,SDQOLの合計得点が高かった。
    【結論】本研究により,SDQOLの信頼性と構成概念妥当性,基準関連妥当性が確認された。今後は,SDQOLと食生活との関連を検討する必要がある。
  • 須藤 紀子, 吉池 信男
    2012 年 70 巻 3 号 p. 188-196
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/29
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】災害時の食生活支援は,管理栄養士に求められる役割の一つである。養成施設における卒前教育においても,災害時の栄養に関する教育をおこなうことが望まれるが,どの程度実施されているのかは不明である。災害時の栄養にかかわる教育の現状や,教育を実施するうえでの障害等を調査することを目的とした。
    【方法】2011年(平成23年)7月に,全国の管理栄養士養成施設(四年制大学)117校の公衆栄養学と給食経営管理論担当教員を対象に,郵送法による質問紙調査を実施した。
    【結果】回収率は68.4%であった。平成22年度あるいはそれ以前の授業で,災害時の食生活支援(公衆栄養学)や給食管理(給食経営管理論)について,講義や臨地実習の中で扱っていたのは,公衆栄養学担当教員の48.8%,給食経営管理論担当教員の89.7%であった。東日本大震災後の平成23年度以降,シラバスに組み入れるか,何らかの対応をすると回答していたのは,公衆栄養学担当教員の80.5%,給食経営管理論担当教員の94.9%であった。被災,災害支援,調査研究,講演やシンポジウムの聴講経験がいずれもないと教育をおこなわない傾向がみられた。
    【結論】 教育の実施状況や今後の実施予定には,科目や教員の経験によって差がみられた。教員の自信やスキルのなさ,よい教材がないなどの問題を解消する必要がある。
  • 安川 澄子, 高田 健人, 岩部 万衣子, 吉池 信男
    2012 年 70 巻 3 号 p. 197-206
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/29
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】母子保健事業の中で,妊娠期から子育て期における母親の食知識・食行動および生活習慣に関して横断的調査を行い,各時期における特徴を記述し,どの時点における教育的支援が望ましいかを検討する基礎資料を得ること。
    【方法】北海道Y町(人口1.9万人)における妊娠期から子育て期に該当する妊婦および3歳までの子供をもつ母親を対象に,自記式質問紙調査を行った。質問紙は,妊娠期(妊娠届時),出産直後(0ヶ月)(出生届時または新生児訪問時),子育て期(3ヶ月・1歳・ 1歳6ヶ月・3歳児健康診査時)の3種類とした。2010年5月から2011年4月にデータ収集を行った。
    【結果】772名から有効回答を得た(有効回答率86.7%)。食事バランスの改善に関わる行動変容ステージが維持期の者の割合は,妊娠期7.3%に対して,出産直後(0ヶ月)17.5%と2倍以上であり,その後,子育て期の時期が進むとその割合は高くなり,3歳児健康診査時点では約4倍であった。一方,実行期については,その期間中に増加はしなかった。また,現在の食生活への満足度は,妊娠期(53.6%)は,出産直後(0ヶ月)(78.1%)よりも低かった。飲酒や喫煙習慣者の割合は,妊娠期より出産直後(0ヶ月)に高かった。
    【結論】妊娠期から子育て期の母親の食知識・食行動および生活習慣は,各時期で異なり,この期間,特に妊娠期間中の適切な教育的支援が重要であると考えられた。
  • 大池 奈津希, 川俣 幸一
    2012 年 70 巻 3 号 p. 207-212
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/29
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】野菜類と比べて果実ポリフェノールの抗酸化活性への加熱処理の影響に関する報告は少ないため,果実に含まれる総ポリフェノール量および抗酸化活性への加熱処理の影響について明らかにする目的で行った。
    【方法】実験材料は,主に長野県南部地域で栽培されている果実8種類(リンゴ,梨,白桃,黄桃,ネクタリン,スモモ,プルーン,ブドウ)を用いた。果皮付きの果実を均一に3等分し,生果実用,電子レンジ(沸騰確認後1分)加熱用,湯煮(2分)加熱用として以下の測定を行った。すなわち,ポリフェノールの抽出溶媒は1%HCl-MeOHを使用した。果実のポリフェノール量はフォーリンチオカルト法,抗酸化活性の測定はα, α-diphenyl-β-picrylhydrazyl(DPPH)法を実施した。還元型ビタミンCはHPLC法により測定した。
    【結果】電子レンジ加熱または湯煮加熱により,大部分の果実では総ポリフェノール量に変化がみられなかったが,白桃湯煮加熱においてのみ有意な低下が確認された。また電子レンジ加熱または湯煮加熱において,大部分の果実の抗酸化活性に変化はみられなかったが,白桃湯煮加熱,リンゴの電子レンジ加熱において有意な低下が確認された。これらの全てのサンプル液内に還元型ビタミンC量は殆ど含まれていなかったことから,今回の結果がポリフェノール量の減少または抗酸化活性の質の低下によって導かれたものである可能性が示唆された。
    【結論】8種類の果実についてブランチング程度の短時間の加熱処理を実施したところ,白桃などの一部の果実において有意な抗酸化活性の低下が見られた。その原因として,還元型ビタミンCでなくポリフェノールの茹で汁への流出による可能性が大きいことが示唆された。
  • 安井 有香, 東山 幸恵, 永井 亜矢子, 久保田 優
    2012 年 70 巻 3 号 p. 213-218
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/29
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】入院患者の食物アレルギー対応食の実態を調査し,その課題を検討する。
    【方法】食物アレルギー対応食に関する調査用紙を作成し,2010年7~9月に近畿圏の60総合病院に郵送した。
    【結果】回答は34病院から得られた(回収率57%)。患者自身の申告に基づいたアレルゲンは,全体(小児+成人)では1位魚類(67%),2位甲殻類(33%),3位そば(22%)であり,小児では1位鶏卵(96%),2位乳製品(82%),3位小麦(24%)であった。病院毎に作成しているアレルギー確認用紙が送付された9病院を比較したところ,小児のアレルゲンに頻度の高い鶏卵・乳製品・小麦は9病院全ての確認項目に含まれていた。一方,成人に頻度の高いアレルゲンである甲殻類・そばは1病院(11%),魚類は2病院(22%),果物類は7病院(89%)で確認項目に含まれていなかった。アレルギー患者への管理栄養士の訪問は90%以上の病院で実施されていたが,他職種との月1回以上の話し合いは4病院(13%)でしか行われていなかった。ヒヤリ・ハットの報告は,誤配(59%)や調理過程でのアレルゲン混入(41%)が多かったが,その対策の面からは誤配に比べ調理過程への混入の対策が十分でないことが窺われた。
    【結論】食物アレルギー対応食に関して,確認用紙は小児だけでなく成人にも配慮した確認項目を作成する,他職種との話し合いの機会を増やす,調理過程でのアレルゲン混入への対策を進める,等の改善対策が必要と思われる。
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