栄養学雑誌
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71 巻 , Supplement1 号
70巻記念特別号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
巻頭言
特別報告
総説
  • 横山 徹爾
    2013 年 71 巻 Supplement1 号 p. S7-S14
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル オープンアクセス
    【背景】日本人の食事摂取基準(2010年版)を活用し,食事改善を目的として集団の食事摂取状態の評価を行うためには,当該集団において測定された栄養素等の摂取量の分布を,推定平均必要量,目標量,耐用上限量等と比較する必要がある。その際に注意すべき点として,食事摂取基準は「習慣的な摂取量」の基準を与えるものであり,短期間(例えば1日間)の食事の基準を示すものではないので,集団の食事摂取状態の評価を行う際にも,当該集団における栄養素等の「習慣的な摂取量」の分布を把握する必要がある。本稿では,複数日の食事調査から習慣的な摂取量の分布を推定するために提案されている理論を解説し,活用例を紹介する。
    【主な理論】National Research Council(NRC)法は分散分析を応用した比較的簡単で基本的な方法であるが,非正規分布のデータを扱いにくい。Best-Power(BP)法は,非正規分布のデータを扱えるように改良されている。Iowa State University(ISU)法は,より現実に近い状況を想定しているが,BP法との性能の差はあまりない。AGE MODE法およびAGEVAR MODE法は,年齢階級別に分布を推定する際に,高い精度が得られると期待される。Iowa State University Foods(ISUF)法は,摂取量ゼロが多く出現する食品の習慣的な摂取量の分布を推定することができる。
    【応用例】近年,長野県,熊本県,埼玉県の健康・栄養調査で複数日調査を行い,習慣的な摂取量の分布を推定して,食事摂取基準を活用した集団の食事摂取状態の評価が行われている。
    【まとめ】これらの理論を応用し,食事摂取基準を活用して集団の食事摂取状態の評価を行うために,複数日調査が広く行われていくようになることが望まれる。
  • 今井 絵理, 坪田(宇津木) 恵, 中出 麻紀子, 笠岡(坪山) 宜代
    2013 年 71 巻 Supplement1 号 p. S15-S25
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では,栄養に関連するガイドラインを作成するためのガイダンスが公開されている国内外の研究機関等(WHO,コクラン共同計画,米国Agency for Healthcare Research and Quality,Medical Information Network Distribution Service診療ガイドライン選定部会)を対象に,レビューシステムについて体系的分類を行い,「日本人の食事摂取基準(2010年版)」との比較を行った。対象とした4つのガイダンスにおいて,作成手順は研究機関によって大きな違いがなく,「PICO形式を用いた疑問の定式化」,「情報源としてプライマリーデータベースと非出版物を使用」,「研究デザインは出来る限りランダム化比較試験とし,観察研究をも含む」は,共通していた事項であった。エビデンスの質,推奨度を判断するスケールは,「日本人の食事摂取基準(2010年版)」では決まったものは公表していなかったが,「GRADEシステム」を推奨しているガイダンスが多くみられた。
     本研究では,系統的レビューに基づいて策定されている国内外のガイドラインのガイダンスから,作成と手順,レビューシステムについて調査し,共通する部分を明らかにした。今後,「日本人の食事摂取基準」を策定する上で,目的に応じた系統的かつ網羅的なレビューシステムのさらなる構築が期待される。
原著
  • 渡辺 優奈, 善方 裕美, 石田 裕美, 上西 一弘
    2013 年 71 巻 Supplement1 号 p. S26-S38
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】妊娠期を通じた横断的および縦断的な鉄摂取量と鉄栄養状態の実態を明らかにし,妊娠期の鉄摂取基準の妥当性を検討した。
    【方法】妊娠5~12週の妊婦160名をリクルートし,妊娠初期,中期,末期,出産時,産後1ヵ月の調査で身体計測,出産時および新生児調査,鉄剤投与の有無,血液検査,食事記録調査のデータがすべてそろった103名に対し,鉄摂取量と鉄栄養状態を評価した。
    【結果】妊娠期の鉄摂取量において妊婦の鉄の推奨量を下回った者の割合は妊娠初期71.8%,中期98.1%であった。一方,鉄栄養状態は妊娠初期と比較して中期,末期では赤血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット値および血清鉄濃度は有意に減少したが,産後1ヵ月までに初期と同様の値まで回復した。また妊娠貧血(Hb<11.0 g/dl,Ht<33.0%)の割合は妊娠初期4.9%,中期41.7%,末期53.4%であったが,MCV,MCHの中央値は基準範囲(MCV: 79.0~100.0 fl,MCH: 26.3~34.3 pg)の下限値を下回ることはなかった。なお,低出生体重児は3名,早産児は1名のみであった。
    【結論】本研究で明らかになった鉄の摂取量で十分であったとはいえないが,鉄需要の亢進にともなう鉄吸収の亢進の可能性が示唆され,現在の妊婦の鉄の摂取基準ほど多くの鉄を摂取せずに鉄栄養状態が維持された。また,鉄の吸収がどの程度亢進しているかまではわからず,体内の総鉄量も評価できなかった。今後は妊婦の体内総鉄量の動態を評価することなど,さらなる検討が必要である。
資料
  • 小林 奈穂, 村山 伸子, 稲村 雪子, 久保田 恵, 神田 知子, 髙橋 孝子, 石田 裕美
    2013 年 71 巻 Supplement1 号 p. S39-S45
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】日本人の食事摂取基準の給食管理における活用の現状を把握することを目的として,質問紙調査を実施した。
    【方法】新潟県内すべての病院及び介護老人保健施設210施設を対象とした郵送法による自記式質問紙調査により,日本人の食事摂取基準の活用の現状についての調査を実施し,89施設より回答を得た(有効回収率42.4%)。
    【結果】病院及び介護老人保健施設の約90%の施設が,給食の栄養計画策定に食事摂取基準を用いていた。提供する食事の給与エネルギー目標量の設定数は3から4パターンが多く,エネルギー区分の刻み幅は 200 kcal刻みが多かった。また,個人ごとの食事摂取量の把握は80%以上の施設で実施していたが,食事摂取量把握の対象者,把握方法は多様であった。
    【結論】今回の調査の結果,多くの施設で食事摂取基準を使用していることが明らかになった。その一方,栄養管理上発生する多くの作業段階(献立管理や食材料管理,作業管理,摂取量把握など)での各作業の具体的な考え方や手法については今回の調査では明らかにすることができず,さらなる調査の必要性が出てきた。これらの疑問点を明らかにした上で,給食施設における食事摂取基準の適切な活用方法を検討することが今後の課題である。
  • 小林 奈穂, 村山 伸子, 稲村 雪子, 久保田 恵, 神田 知子, 髙橋 孝子, 金光 秀子, 辻 ひろみ, 石田 裕美
    2013 年 71 巻 Supplement1 号 p. S46-S55
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】日本人の食事摂取基準の給食管理における活用理論を適用し,給食施設における各作業の実施状況,および給食運営のプロセスで生じ得る栄養量の誤差を明らかにすることを目的とした。
    【方法】5都府県16施設の高齢者施設を対象として,予め用意したインタビューガイドに沿ってインタビュー方式で調査を行った。調査概要は,給与栄養目標量の設定から提供量,摂取量の把握に至るまでの給食管理の実態である。
    【結果】給与栄養目標量の設定に際しては,多くの施設が日本人の食事摂取基準2010年版もしくは2005年版のどちらかを何らかの参考にしており,実際に数値を設定する際には,食事摂取基準の値を荷重平均して使用する施設が多かった。給食施設における各作業の実施状況の結果から,給食運営のプロセス上,栄養計算の段階での「給与栄養量(予定)」と,発注から調理までの段階の「給与栄養量(実際)」の2つの工程に栄養量の誤差が生じ得る場合が多かった。また,「摂取量の把握」には,介護職員や看護師による「目視」を用いている施設がほとんどだった。
    【結論】今回の調査から,給食の計画から摂取量把握までの工程の中で給食運営上避けられない誤差が存在することがわかった。これらの誤差の程度を明らかにし,さらにその誤差をできる限り小さくするための対策の立案や整理をしていくことが今後の課題である。
  • 孫田 みなみ, 笠岡(坪山) 宜代, 瀧沢 あす香, 坪田(宇津木) 恵, 今井 絵理, 岡 純
    2013 年 71 巻 Supplement1 号 p. S56-S63
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】本研究は,食事摂取基準の位置づけを明らかにすることを目的とし,政府が策定している食事に関する指針およびガイドが,食事摂取基準を活用しているかどうか,している場合はどのように活用しているかを検討した。
    【方法】管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)およびインターネットを用いた検索により政府が策定している食事指針・ガイドを抽出した。各食事指針・ガイドの策定に関する報告書,論文等から策定時期,食事摂取基準または栄養所要量の活用の有無,活用内容について調査した。
    【結果】抽出された12種類の食事指針・ガイドのうち,10種類は策定当時の食事摂取基準または栄養所要量を活用していた。食事バランスガイドは食事摂取基準の改定に伴う見直しがされていたが,それ以外の食事指針・ガイドは現行の食事摂取基準との間に策定のタイムラグが生じていた。食事摂取基準のどの指標を活用したのか明記されていたのは,学校給食実施基準のみであり,その他の食事指針・ガイドには活用した指標が明記されていなかった。
    【結論】食事摂取基準は政府が策定している食事指針・ガイドの策定根拠として用いられている事が明らかとなった。食事指針・ガイドのうち,給食のための具体的な摂取量の提示等を目的する場合には,食事摂取基準の内容を適切に反映させること,食事摂取基準の改定と共に,その結果を取り入れて,それらの食事指針・ガイドの改定を進めることが望まれる。
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