離島であり漁村である答志地区主婦の食生活の実態および, 夫婦単位で漁業を営んでいる漁業従事者である主婦の食生活の実態を把握するために, 三重県鳥羽市答志島に居住する25~34歳の主婦69名を対象に調査を行った。
調査方法は, 58年10月12~22日の土・日曜日を除く3日間の各食事ごとの料理名, 食材料名および使用概量を, 調査用紙の記入方法を説明したうえ対象者自身に記入させた。
結果は次のとおりである。
1) 3大栄養素の摂取量は所要量を充足していたが, その他の栄養素の摂取量は栄養所要量に比べて, カルシウム30%, 鉄27%, ビタミンA25%, ビタミンB
2 6%の不足が認められた。
2) エネルギーの栄養素別摂取構成比は, たん白質15.9%, 脂肪23.3%, 糖質60.8%であった。
3) 食品群別摂取量を, 食料構成の基準値 (高居らの案) と比較すると, 魚介類の摂取量は2.6倍であったが, 野菜類, 乳類の摂取量は少なかった。
4) 1人1日当たりの魚からのたん白質摂取量は28.7gであり, これは摂取した動物性たん白質の61.3%を占める。
5) 当地区住民の最高血圧は, 昭和56年国民栄養調査全国平均値に比較して, 男女の各年齢群において, 有意に低い値を示した。
6) 漁業従事者の主婦は他に比べ, ビタミン, ミネラル, 特にカルシウムの摂取量が有意に低く (
p<0.01), 所要量の約55%であり, 鉄, ビタミンA・B
1・B
2・Cも低値であった。また1日の食事配分も特に朝食のPFCエネルギー比のバランスが悪く, 食事を構成する食品数も少なく, 調理形態も簡易であった。早朝から漁業に従事する影響と思われる。
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