栄養学雑誌
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68 巻, 5 号
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報文
  • 田口 素子, 辰田 和佳子, 樋口 満
    2010 年 68 巻 5 号 p. 289-297
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    競技特性の異なる女性スポーツ選手の安静時代謝量(Resting energy expenditure: REE)を比較することを目的として,81名の女子選手(年齢:20.3±1.2歳,身長:162.3±6.5cm,体重:56.4±7.9kg,体脂肪率:20.4±5.1%,除脂肪量(LBM):44.8±5.0kg)および同年代の運動習慣のない女子大学生16名を対象として測定を行った。選手群は競技特性により持久系21名,瞬発系40名及び球技系20名の3つの競技特性群に分類した。REEは間接法にて測定し,身体組成は空気置換法にて測定した。1日当たり,体重あたり,LBMあたりのいずれの単位においても全ての群間で有意差は認められなかった。REEと体重およびLBMとの間には,選手群,コントロール群ともに有意な正の相関関係が認められた。競技特性群別のREEとLBMとの回帰式の傾きと切片には差は認められなかった。また,重回帰分析の結果,選手群のREEの説明因子としてLBMとT3が抽出され,LBMで45.0%,T3を加えることにより50.3%が説明できることが明らかとなった。
    以上より,競技特性の異なるスポーツ選手のREEに差は認められず,競技特性よりも身体組成(LBM)に影響を受けることが明らかになった。
    (オンラインのみ掲載)
研究ノート
  • 野末 みほ, Jun Kyungyul, 石原 洋子, 武田 安子, 永井 成美, 由田 克士, 石田 裕美
    2010 年 68 巻 5 号 p. 298-308
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    本研究は,小学5年生の児童における学校給食のある日とない日における栄養素等と食品群の摂取量について明らかにすることを目的とした。さらに,1日の食事における食事区分別の比較の検討も行った。東京都と岡山県において,2007年10月から2008年2月に横断研究を実施した。学校給食の摂取量の把握は観察者による秤量と観察,家庭での食事調査については写真画像を併用した児童による目安量記録法により行った。調査期間は連続しない学校給食のある日(平日)2日と学校給食のない日(土曜日または日曜日)1日の3日間とし,体格が普通の児童82名を対象とし解析を行った。カルシウム,ビタミンB1,野菜類と乳類において,学校給食のない日よりもある日に摂取量が有意に高く,食塩と調味料類においては学校給食のない日よりもある日に摂取量が有意に低かった。昼食において,カルシウム,ビタミンB1,ビタミンB2について,学校給食のない日に比べて学校給食のある日の摂取量の割合が大きかった。本研究の結果より,学校給食のあり,なしが,児童の一日全体の栄養素等及び食品群の摂取量に違いを与えていることが示唆された。
    (オンラインのみ掲載)
  • 開元 多恵, 渋谷 まゆみ, 前田 英雄
    2010 年 68 巻 5 号 p. 309-314
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    コレステロールを添加した高脂肪食を投与し,タラの芽摂取がラットの血清および肝臓の脂質に与える影響を調べる目的で実験を行った。タラの芽は凍結乾燥し,粉末は600μmのふるいを通し,一部はエチルアルコールによる抽出に用いた。タラの芽粉末,抽出物,抽出残渣は別々に高脂肪食に添加し,20%カゼイン食(普通食)と比較した。Sprague-Dawley系雄ラット(4週齢)は食餌によって5群に分け,4週間飼育した。5%タラの芽粉末およびエチルアルコール抽出物や抽出残渣を添加しても摂食量や体重増加,血清中の肝臓や腎臓機能を表す指標についても差は認められず,添加による影響はほとんどないと考えられた。高脂肪食での飼育により,肝臓の脂質含量は顕著に増加し,血清のHDL-コレステロールは低下したが,タラの芽粉末あるいはアルコール抽出残渣を添加した群では,肝臓のトリアシルグリセロールの増加が抑制された。これらの結果からタラの芽には肝臓の脂質代謝に有効な成分が含まれている可能性が示唆された。
    (オンラインのみ掲載)
  • 東元 稔, 糸賀 寛子, 新畠 直
    2010 年 68 巻 5 号 p. 315-321
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    著者らは,自家発酵ヨーグルトの冷蔵,植え継ぎ,ならびに味付け食品や酒類との共存下における生菌数の変動を検討した。冷蔵庫で保存したヨーグルト中の生菌数は1週間で約1/4ずつ経時的に減少した。植え継ぎによる生菌数の変化はヨーグルトの種類による差が多少見られたが,実用上問題になるほど大きいものではないと考えられた。また,他の食品との共存によるヨーグルト中の生菌数への影響を検討した結果,通常の味付け食品による影響はほとんどみられなかったが,高濃度のアルコールを含む酒類の共存によって生菌数が減少した。しかし,低濃度のアルコールを含む酒類の共存下ではヨーグルト中の細菌の増殖が有意に増強されることが分かった。これらの結果は,我々が,比較的簡便に,自分で作製した好みの手作りヨーグルトを日常的に食べ続けることが可能であることを示唆している。
    (オンラインのみ掲載)
資料
  • ~管理栄養士の調査より~
    今本 美幸, 栗原 伸公, 熊谷 聡子, 土江 節子
    2010 年 68 巻 5 号 p. 322-327
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    【目的】管理栄養士が行う栄養教育では,対象者が理解しやすく的確な内容が伝えられる「言葉」が必要である。このうち「控える」という言葉は,対象者に塩分や動物性脂肪など摂取の減量を指示する言葉であるが,その方法や量などの明確な指示はしていないと考える。そこで我々はアンケート調査を行い,日本の兵庫県で働く管理栄養士が用いる「控える」という言葉の概念を明らかにするため,栄養指導における言葉の効果を調べた。【方法】我々は控える対象としてエネルギー,甘いもの,アルコール,動物性脂肪,塩分の5項目を選び,「控える」という言葉の指導者側の意識を調査した。【結果】管理栄養士は50%以上が栄養教育において「控える」という言葉を使用していた。管理栄養士は,対象者が行うと期待する控える方法や量に個人差があった。また管理栄養士の勤務年数3年未満,3年以上20年未満,20年以上の3群による経験年数別の比較では,塩分で差があった。
    【結論】「控える」という言葉はとても不明瞭であり,この言葉のみで対象者が食生活改善できるとは限らない。管理栄養士は「控える」という言葉を単独ではなく,可能な限り具体的な言葉とともに用いることが必要である。
    (オンラインのみ掲載)
  • 須藤 紀子, 澤口 眞規子, 吉池 信男
    2010 年 68 巻 5 号 p. 328-334
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    新型インフルエンザの流行に際して,全国の災害拠点病院592施設を対象に,平成22年1月~3月にかけて,栄養・給食部門における人員計画や業務継続計画等について質問紙調査を実施した。
    回答が得られた392施設(回収率=66%)のなかで,病院全体の対策ガイドラインのなかに,栄養・給食部門の対応についても書かれていると回答した施設は43%であった。人員計画では,「欠勤の可能性が大きい従業員(年少の子どもや要介護の家族がいる等)の把握」までは55%の施設で実施しているものの,「突然の欠員がでた場合の要員確保の準備」(36%)や,「食事提供方法や献立内容の変更準備」まで実施している施設は24%にとどまった。2009年の新型インフルエンザウイルスは,結果として弱毒性であり,一部地域で学校閉鎖がおこなわれたものの,日常生活の制限や食料品・生活必需品の不足,公共サービスの停止はみなれなかった。そのためか,「取引先に問題が生じた場合の代替業者の選定」や「調達困難となることが予想される原材料の備蓄」も「感染が拡大したら実施予定」としているところが最も多かった。今後,強毒性の新興感染症の流行も想定されるため,感染が拡大したときにすぐに対応できる事前の準備が重要である。
    (オンラインのみ掲載)
  • 野末 みほ, 石川 みどり, 草間 かおる, 三好 美紀, 西田 美佐
    2010 年 68 巻 5 号 p. 335-341
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    近年,途上国における栄養問題とその解決に向けた取り組みへの関心は以前よりも増し,管理栄養士養成課程で学ぶ学生等で国際協力に携わりたいと考える者など国際栄養の学び手のニーズは高まっている。しかし,ガイドラインで定められている内容と講義等で使用される市販のテキストの内容,そして学び手のニーズとの間で必ずしも合致していない可能性が示唆されている。本研究では,管理栄養士養成課程で用いられている栄養教育論及び公衆栄養学の市販のテキスト21冊を整理し,国際栄養に関する市販のテキストの現状を把握することを目的とした。いずれの科目においても,ガイドラインを満たしていない市販のテキストが確認された。また,「諸外国の食事ガイド」及び「諸外国の食生活指針」などの資料の紹介にとどまっている市販のテキストが多くみられ,途上国の事例は少なかった。しかし,国際協力に携わりたいと考える者が勤務する場所は,多くの場合,開発途上国であることが多いことから,それらの国の健康・栄養問題を理解することが必要である。今後は,栄養問題を示すと同時にその問題を解決するための各国の方策や事業,またその視点について情報を提供していくことが求められているのではないかと考えられる。
    (オンラインのみ掲載)
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