ラットの発育, 自発運動量および遊泳持久力に及ぼす白米食, 玄米食および新強化米食の影響を比較検討した。新強化米は玄米を精白米にする過程で失われる幾つかの栄養素を充足することを目的につくられたものである。SD系雄ラット (平均体重72.4kg) 30匹を白米食群, 玄米食群, 新強化米食群の3群に分けた。実験食飼育期間は85日間とし, その間摂食量, 発育の状況を観察した。第2週目に各実験食のたん白質の消化吸収率を測定し, 第3週目より自発運動を4日目ごとに全群のラットに行わせた。45日と46日に尿を採集し, 尿中ビタミンB
1, B
2排泄量を測定した。また実験期間中3回遊泳持久力テストを行った。実験食飼育終了後解剖し, 体重, 体長, 尾長, 腎周囲脂肪量および血清総コレステロールを測定した。結果は以下のとおりである。
1) 白米食群の体重増加は他の2群よりも劣り, 最終の解剖時には, 体重, 体長ともに有意差をもって, 新強化米食群>玄米食群>白米食群の順であった。尾長においては有意差はみられなかった。
2) 摂食量は自発運動をすることにより, 3群ともに一時的に減少したが, その後徐々に回復し, 5週目以降はほぼ一定であった。全体的に白米食群が明らかに他の2群よりも少なく, 多くの時期において有意差がみられた。42日以後, 新強化米食群が玄米食群より多い傾向がみられたが有意差はなかった。
3) たん白質の, みかけの消化吸収率は玄米食群が有意に他の2群より劣り, 白米食群と新強化米食群とでは差はみられなかった。
4) 自発運動量は3群ともに43日目までは徐々に増加したが, 第1回目の遊泳持久力テストにより3群ともに急速に減少した。さらに2回目, 3回目のテスト後, 白米食群は明らかに減少し, 玄米食群はやや減少の傾向を示したが, 新強化米食群はほぼ同量の自発運動量を維持した。統計的には59日以降白米食群は他の2群に比べて有意に運動量が少なかった。
5) 遊泳持続時間は白米食群が最も劣り, 新強化米食群と玄米食群の間には有意な差は認められなかった。
6) 血清コレステロール値は3群間に有意な差はなく, 尿中ビタミンB
1, B
2排泄量はともに有意差をもって, 新強化米食群>玄米食群>白米食群の順であった。
7) 解剖時の脂肪組織重量は白米食群が他の2群よりも有意に軽く, 玄米食群と新強化米食群との間には有意な差はみられなかった。
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