日本人食生活の基本的パターンを模索する目的で, ブラジル在住日系移住者について調査・集録した食品摂取量を18種類の食品群に分類して構造分析を行い, 得られた結果を日本 (神奈川県中井町) における調査結果と比較検討し, 次の諸点を明らかにした。
1) 食品群別摂取量間の相関行列において, 移住地では, 米に対してみそ, つけ物が, パンに対して砂糖, 緑黄色野菜が有意の正相関を示した。米とパン・めん類との関係では, 中井町では負相関を示したが, 移住地では正相関の傾向が認められた。
2) 野菜類と他の食品との相関関係から, 野菜料理のレパートリーは移住地の方が狭いと考えられた。
3) 乳は, 中井町では油脂, 肉等のいわゆる洋風食品と正相関を示すが, 移住地では有意の相関を示す食品はみられなかった。
4) 各食品に対して有意の正相関を示す食品数は移住地の方が少ない。これは移住者の食生活がバラエティーに乏しく単調であることを示すものと理解された。
5) 相関行列を因子分析した結果, 第1因子では, つけ物, 魚介類, 米, めん類, 肉, みそ, しょうゆ等に比較的大きい因子負荷量を示し, 第2因子では, 油脂, 肉, 砂糖, 卵, 果実, いも, つけ物に負荷量が高いことが認められた。ここで, 第1因子は日本型食生活を, 第2因子はブラジル型食生活を示し, これらは移住者の食生活における二重構造を示すものと考えた。これに対して, 中井町では, 第1因子は副食対主食を示し, 第2因子は米飯型対パン及びめん類型を示すものと考えられた。
6) つけ物及び肉は両因子にまたがって広くかなりの負荷量を示している。これは日本型とブラジル型との間で食生活上の相互交流が起こっているものと解釈された。
7) 調査移住地間の類似率行列をクラスター分析した結果, 移住者の食生活は大きく2つのクラスターに分けられたが, これは地理上の地域区分とは関係がなく, 日本におけるような地域特性は認められなかった。
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