成人の歯を失う最大の原因は, 生活習慣病としての歯周病であり, その修飾因子の1つとして食生活が重要視されている。そこで, その両者の関連性を把握する一助として, 成人女性歯周病患者の臨床病態と食生活との関連性について調査した。対象者は, 歯周炎女性患者50人 (48.1±0.7歳, 40-59歳) である。なお, 対象者は, 軽度慢性歯周炎群 (SCP) 20人, 重度慢性歯周炎群 (ACP) 14人, 若年期から進行性の歯周炎に罹患していた侵襲性歯周炎群 (AP) 16人に分けて比較した。対象者の身長, 体重, 肥満度, BMIでは顕著な差異はみられなかった。ACP群とAP群では, 歯を多く喪失していた (p<0.01)。また, 現在歯の歯周病の罹患度合は, ACP群で進行していたが, AP群では更に重度に進行していた (p<0.01)。エネルギーは, AP群がSCP群とACP群に比べやや高い値を示した (p<0.01)。脂質は, AP群がSCP群とACP群に比べ過剰であった (p<0.01)。カルシウムと鉄は, 3群とも栄養所要量を下回っていた。ビタミンの充足率は, 3群とも栄養所要量を下回ることはなかった。動物性たんぱく質比率は, 3群ともほぼ適切で差異はなかった。緑黄色野菜摂取量は, 3群ともかなり低かった。P/Ca比は, 3群とも差異はみられず, ほぼ適切であった。食品摂取頻度は, 3群とも約5回で, 不適切であった。ET-Indexは, 3群とも高値で, 特にAP群がSCP群より顕著に高かった (p<0.05)。NPF-Indexは, 食事では適切であったが, 間食では3群とも不適切で, ACP群がSCP群より高値であった (p<0.05)。SH比は, 3群とも特に間食で低く, 軟食化が示唆された。従って, 歯周病治療における食生活の改善を含めた歯周基本治療の重要性が示唆された。
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