栄養素摂取量の簡便な測定方法として, 1点80Calを基準とした点数換算によるアンケート式食物摂取状況調査方法 (簡易法, A法) が, 実際の栄養素摂取状況と近似の値を把握できるものかどうかを検討した。対照として喫食した食品重量を記録させる方法 (重量法, B法) により同時に同一対象者の喫食状況を調査し, ここでは一応, 実際の栄養素摂取量の把握とみなした。
(1) A法によるエネルギー, 糖質, たん白質の摂取量は, B法のそれと有意の相関を示した。しかしながら, 脂肪については, A法とB法との間に相関関係は認められなかった。
(2) 脂肪エネルギー比率の高い食事の者は, 簡易法では摂取エネルギーが低い値に算出され, 回帰線からはずれる傾向にあった。
(3) 脂肪の摂取量を把握するための質問の方法が適切でなく, 油脂使用料理の喫食回数が実際の回数より少なく回答されており, A法とB法の合致率は9%であった。また1点80Calより多い量の油脂の場合も1点に換算され, 脂肪の場合, これらのことがA法とB法の相関性を低くしている。
(4) 脂肪含量の多少の違いによる肉の判別が, 調査対象者の主観により左右され, 脂肪摂取量の把握にバラツキを生じる原因となっていた。
(5) たん白質食品の魚, 肉, 大豆製品からのたん白質, 脂肪の摂取量の換算値は, 実際の摂取量よりも過少評価されていた。このことは, 対象者の主観が原因しているよりは, 換算のための配点が適切でないためであった。
(6) 実際に喫食された魚, 肉, 大豆製品各群からの1点80Cal中たん白質, 脂肪含量は, 簡易法の換算のための配点値と異なっていた。
(7) 簡易法の一部を修正したあとの各栄養素についてのA法とB法の相関関係は改善された。特に相関がみられなかった脂肪については, 設問, 配点の修正により有意の相関に変わった。
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