本研究は, 腎不全治療食調製において, 食酢を活用することによる野菜中のミネラル (K, Na, Ca, Mg) の溶出率を調べるために行われた。その結果は以下のとおりである。
1) 野菜 (ごぼう, れんこん, ほうれん草, キャベツ, きゅうり) 中のミネラル含量は, Kがいずれの食品でも高い値を示した。
2) 振り洗い洗浄操作では, 野菜 (ごぼう, れんこん, ほうれん草, キャベツ) 中のミネラル溶出率は, 10%食酢液でも純水でも差異はなかった。
3) 浸漬操作では, 2) で述べた野菜中のKとれんこんのMgの溶出率が3%食酢液使用で増加した。
4) ゆで操作では, 2) で述べた野菜中のK, Na, Ca, Mgがいずれも高い溶出率を示した。特にK, Mgの溶出率は3%食酢液で著しく高かった。
5) 煮物操作 (塩, 砂糖及び一部食酢で調味) では, 2) で述べた野菜のKとMgでは, 食酢使用のいかんにかかわらず高い溶出率を示した。
6) 漬け物操作では, 酢漬けの場合はキャベツときゅうり中のK, Ca及びMgの溶出率が高く, Naの溶出率は低かった。一方塩漬けの場合は, きゅうりのCa, Mg量は生の含有量より高い含量を示した。
これらの結果は, 食酢には, 浸漬操作, ゆで操作及び漬け物操作により, 野菜中のKとMg量を減少させる効果があることを示唆している。
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