カルシウム (Ca) がヒトの生命維持に必須であることはよく知られている。Caの必須性についての研究は, 生化学や分子生物学の分野で明らかにされてきている。しかしながら, 日本人のCaの必要量については, 余り多くの報告は認められない。それは, Caの生体内の利用がその他のミネラルや他の栄養素によって影響されることによる。
この報告では, これまで我々が行ってきたCa栄養に関しての基礎的・疫学的研究について報告した。
まず, たんぱく質摂取とCa出納について, 3~6歳の小児27名と19~21歳の6名の成人男子において研究を行った。次に尿中窒素, Ca排泄ならびに成長との関連を9~15歳の男女児217名を対象に調査を行った。その結果, たんぱく質摂取とCaの尿中排泄には有意な相関が認められた。また, 結果としてたんぱく質摂取とCaの体内保留には負の関連が認められた。これらの結果は, 日本人においてもたんぱく質の摂取が, Caの体内利用に影響していることを示唆している。
その後, 骨密度と体組成ならびに生活習慣について, 20歳の女性214名を対象に10年間の追跡調査を行った。また, 19~40歳の女性2,652名について横断的研究を行った。その結果, 骨密度と除脂肪量, BMIには有意な相関が認められた。また, 体脂肪率は骨密度と負の相関が認められた。
Caの体内利用性については, 他のミネラルや栄養素との関連について明らかでないことが多くある。
食生活のあり方やヒトでのマクロな栄養研究から, 栄養素の働きについての研究が必要であると言える。なぜなら, それは栄養学が, 人々の健康と幸せに寄与する予防医学であることによる。
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