和歌山県において県民栄養調査を実施し, 県民の食生活の実態を把握するとともに, 食生活の地域差について検討した。その結果, 次のような特徴が明らかになった。
1) 栄養素等の摂取は全国平均に比べて, 脂肪, 鉄, ビタミン類, 脂肪エネルギー比が少なく, 穀類エネルギー比, 動物性たん白質比及び動物性脂肪比は多かった。地域別にみると, 特に農山村において脂肪, ビタミンA, ビタミンB
1, ビタミンB
2の摂取が少なく, 逆に糖質の摂取の多いことが目立った。
2) 食品群別摂取量については, 全国平均に比べて和歌山県では米類, 砂糖類, 魚介類の摂取が相当多く, 一方, 小麦類, いも類, 野菜類, 油脂類, 調味嗜好飲料, 卵類, 乳類の摂取がかなり少なかった。この傾向は特に農山村において顕著にみられた。
3) エネルギー摂取量に占める米類の割合は, 農山村48.8%, 漁村42.2%, 平地農村41.9%, 都市近郊39.5%の順になっており, 各地域とも全国平均の36.1%を上回っていた。全国平均に比べて摂取量の少ない脂肪, 鉄, ビタミン類については, 野菜類や肉・卵・乳類の摂取が少ないことが影響していた。
以上の結果より, 和歌山県では全体的に伝統的な日本型食生活が維持されていた。地域別にみると都市部では多様な食品がバランスよく摂取されていたが, 農山村では数少ない副食で米飯を多食する伝統的な食形態がみられ, 食生活に地域差の存在することが明らかになった。
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