栄養学雑誌
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69 巻 , 3 号
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総説
  • 佐中 孜
    2011 年 69 巻 3 号 p. 109-114
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
     CKD(Chronic Kidney Disease;慢性腎臓病)治療には(1)CKDの原因となる腎臓病(原疾患)治療,(2)食事療法,(3)アンジオテンシンII受容体拮抗薬,(アンジオテンシン変換酵素阻害薬,(4)経口吸着薬,(5)合併症治療(虚血性心疾患,高血圧,脂質代謝異常症(高脂血症),貧血など)による集学的治療など5つの基本戦略がある.
     これらのうち,食事療法のもつ意義は次のようにまとめられる。
     1 生活習慣が関与している場合は,これを是正することにより原疾患の治療につながる。
     2 たんぱく質の過剰摂取はたんぱく尿の悪化を招くので,その是正が必要である。
     3 食塩の過剰摂取は高血圧,動脈硬化,更には糸球体細動脈硬化の原因になるので,食塩の過剰摂取の是正は不可欠となる。
     4 糸球体に続く尿細管で起きている有機酸の過剰負荷をとることはCKDの進展抑制をもたらす。
     5 アンモニア,リンの体内蓄積を抑制するための食事療法は有用と期待される。
     6 CKDにおける鉄欠乏性貧血,ビタミンB12,葉酸欠乏による貧血を治療することにより,進展を阻止することが期待される。
     7 高尿酸血症を伴うCKDにはプリン体の摂取の適正化が必要である。
     8 脂質代謝異常症(高脂血症)も悪化要因になるので,食事療法は不可欠となる。
原著
  • 虎石 真弥, 上西 一弘
    2011 年 69 巻 3 号 p. 115-125
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    【目的】大学生男子陸上長距離選手における骨障害の早期予知・予防を目的とし,骨におけるビタミンK栄養状態の変化と骨状態について検討した。
    【方法】我々が栄養指導を行っている大学生男子陸上長距離選手のうち,骨塩量および骨密度,身体測定,血液検査,尿検査,食物摂取頻度調査,陸上長距離競技歴,月間走行距離量に関する調査のデータがすべて揃った42名に対し,骨状態と栄養素摂取を横断的,縦断的に検討した。
    【結果】栄養指導前における骨状態は骨吸収マーカーが基準値を上回り,骨吸収の亢進が示唆された。カルシウム摂取量は日本人の食事摂取基準2010年版の推奨量を下回り,ビタミンK摂取量は目安量を上回る値であった。骨でのビタミンK栄養状態の指標である血清低カルボキシル化オステオカルシン(ucOC)は,骨形成および骨吸収マーカーと正の相関を示し,また栄養指導前において骨代謝が亢進していた血清ucOCの高値群では,栄養指導開始8ヶ月後,カルシウム摂取量およびビタミンK摂取量の有意な増加により,血清ucOCは有意に減少した。
    【結論】骨吸収マーカーの高値による骨吸収が亢進した骨状態に対し,カルシウムおよびビタミンK摂取量の有意な増加により血清ucOCは有意に減少した。本研究対象者のビタミンK摂取量は目安量を上回る値であったが,より良い骨状態の獲得に必要なビタミンK摂取量については更なる検討が必要である。
短報
  • 松岡 友美, 和木 千尋, 重村 智栄子, 市川 寛, 浅野 弘明, 東 あかね
    2011 年 69 巻 3 号 p. 126-134
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究は,地域の小学校区を介入地域と比較地域に割り付け,小学生の母親を対象に食事と運動の健康教育を実施し,介入の効果を評価することを目的とした。
    【方法】介入群に対しては12週間に食事指導,運動指導,グループワークを中心とした8回の健康教室を実施し,両群ともに教育前と9週間後に身体計測,体力測定,血液検査,食習慣,食品摂取頻度,運動習慣などの自記式アンケートを行った。22名(24.7%)の脱落者を除外した67名の参加者を解析対象とした(介入群32名,平均年齢±標準偏差(SD):39.6±3.8歳;比較群35名,平均年齢±SD:38.3±3.5歳)。
    【結果】ベースラインでは,介入群と比較群において30秒間椅子立ち上がり回数を除いて,身体特性や生活習慣に差はみられなかった。介入群では比較群と比べて,運動頻度(p=0.002),果物摂取頻度(p=0.002),野菜料理摂取頻度(p=0.002)が有意に増加した。体力テストにおいて30秒間椅子立ち上がり回数が有意に上昇した。
    【結論】地域における小学生の母親を対象とした健康教育が食習慣と運動習慣の改善に有効である可能性が示唆された。
実践報告
  • 大木 薫, 稲山 貴代
    2011 年 69 巻 3 号 p. 135-147
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    【目的】サッカークラブの練習に参加する子どもにつきそう母親を対象に,食事バランスガイドを教材として,自分の食事のバランスを判断し,バランスのよい食事をデザインできることを学習目標に実施した食教育介入の報告と,介入前後での変化を検討することを目的とした。あわせて母親への食教育介入前後でみた父親の食生活を検討した。
    【方法】質問紙調査に回答が得られた24夫婦を集計対象とした。食教育は子どもの練習グランド脇の施設で,練習時間帯に,管理栄養士などが計6回実施した。事前事後に,QOL,健康・栄養状態,食物摂取状況,行動,中間要因,準備要因,属性,食環境の枠組みからなる自記式質問紙調査を実施した。
    【結果】母親の「自分の食事内容の問題を判断できる」食スキルは向上した。「主食,主菜,副菜のそろった食事を1日に2回以上食べること」,「副菜を1日に2回以上食べること」,「緑の濃い野菜を1日に1回以上食べること」に関し,食態度,行動変容段階などにおいて好ましい変化がみられた。父親は母親と比較して食生活は好ましいものではなく,父親の前後での差は食知識及び食情報交換・活用行動の一部だけであった。
    【結論】母親の食教育への参加は高く,食教育プログラムは実現しやすい企画であった。母親には主食・主菜・副菜をそろえること,副菜として野菜を食べることに関する食態度,行動変容段階に好ましい変化がみられた。
資料
  • 五十嵐 美絵, 吉田 亨
    2011 年 69 巻 3 号 p. 148-159
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/12
    ジャーナル フリー
    【目的】市町村栄養士は非常に少人数で,多岐にわたる栄養業務は限られた数の栄養士によって行われている。したがって,栄養士が十分に潜在能力を発揮することは重要である。そこで,栄養士の自己効力感を増加させることが非常に重要であるため,それらの業務への自己効力感の要因を探ることを本研究の目的とした。
    【方法】群馬県及び近県5県の市町村に勤務する行政栄養士協議会員393人全員を郵送調査し,233人から回答を得た(回収率59.3%)。
    【結果】最初に,業務への自信の程度26項目を用いて探索的因子分析をおこなった。結果は,第1因子「事業マネジメント」,第2因子「連携体制づくり」,第3因子「一般的指導・支援」が抽出された。次に,寄与率の最も高い第1因子から作成した「事業マネジメント自己効力感」尺度を従属変数とし,その尺度得点に有意な差や相関のあった項目を独立変数として重回帰分析を行った(R2=0.509,p<0.001)。その結果,「指導の効果がみられた経験」(β=0.237,p<0.01)と「事業マネジメント業務の主体的実施経験」(β=0.237,p<0.01)が大きく影響していた。加えて,「事業マネジメント自己効力感」に大きく影響した2つの要因を同様に分析した。「指導の効果がみられた経験」には,「主体的な成人期の指導・支援の経験」(β=0.191,p<0.05)が影響していた(R2=0.436,p<0.001)。「事業マネジメント業務の主体的実施経験」には,「自分が主体となって事業を企画・立案・実施し,うまく行うことができた経験」(β=0.390,p<0.001)が最も大きく影響していた(R2=0.624,p<0.001)。
    【結論】市町村栄養士にとって,市町村栄養士業務の自己効力感を向上させて,上記の要因に焦点をあてることが,非常に重要であることが示唆された。
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