栄養学雑誌
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72 巻 , 6 号
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総説
  • 入山 八江
    2014 年 72 巻 6 号 p. 281-291
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/20
    ジャーナル オープンアクセス
    わが国では,少子高齢化の時代を迎え,高齢化や雇用延長による健康的な労働力の確保が益々求められている。2008年から医療制度改革により,特定健診・特定保健指導の実施が義務づけられ,メタボリックシンドロームに焦点を当て働き盛り世代の疾病の発症や重症化予防の体制は整えられた。しかし,職域の生活習慣病を予防するための栄養教育に食環境介入を組み合せた実践的なエビデンスを明確にした論文は少なく効果についても明らかではない。本稿では,栄養教育に食環境を組み合せるという視点で国内外の先行研究のレビュー論文を調べ,著者らの実践的研究結果を加え,その取り組みにより生活習慣病を予防できる可能性があるかを検討することを目的とする。
    職域における生活習慣病予防介入効果ついてのエビデンスでは,国内外の職域を対象としたレビュー論文から生活習慣病予防介入研究に焦点を絞り栄養教育と食環境介入を組み合せるという視点で効果を検討した。海外のレビューでは,適正体重への実践的介入効果が示されている。それによれば,栄養と身体活動や複数のプログラムによる行動科学理論を用いた研究の効果が大きかった。
    職域で給食を通した食行動の変容を目的とした系統的レビューが複数みられ,栄養教育と食環境介入に加えて理論を用いることが食行動の変容に効果を及ぼすことが示されている。著者らが栄養教育に食環境介入を組み合せた実践的研究を行った結果,望ましい変化がみられた。食環境介入や栄養教育により社員の健康意識を高めていくことは,実践によって培われていくところが大きい。従来の量的データを用いる仮説検証型の研究では多様で複雑な食行動は,見落としやすい。しかし,現場では食行動のような質的データを考慮に入れた問題提起や実践,評価ができると考えられる。事業を実践報告で終わらせないためには,その結果から問題点や効果を見つけ出す実践的研究を行うことが,一般化を図る上で意義がある。
    以上より,今後,日本において生活習慣病予防を推進していく上で,地域保健行政と産業保健の協働が不可欠である。職域で関係者が連携して健康づくり活動にあたるならば,栄養教育と食環境介入を組み合せることで,効果の上がる取り組みが実践できる可能性が期待できる。
  • 西山 一朗
    2014 年 72 巻 6 号 p. 292-301
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/20
    ジャーナル オープンアクセス
    貯蔵性に優れ,いつでも手軽に食べられるキウイフルーツは,日本を含め世界中で食されている。ビタミンC,カロテノイドの一種ルテインなどを含んでおり,食物繊維も豊富な機能性の高い食品である。さらに,キウイフルーツ果実には「アクチニジン」という特徴的な成分が含まれている。アクチニジンはキウイフルーツから見出されたたんぱく質分解酵素で,近年,その消化促進作用が注目されている。
    本稿では,アクチニジンの酵素学的な特性を概説するとともに,in vitroおよびin vivoにおけるアクチニジンの消化促進効果を検証した最新の研究結果を紹介する。これらの研究結果から,アクチニジンは消化管で様々な食物由来たんぱく質の消化を促進し,胃の内容物排出速度を速めることで,アミノ酸吸収の効率を高める可能性が示唆された。高い栄養価に加え,消化促進効果が期待できるキウイフルーツは,健康の維持増進に有用な果実の一つと考えられる。
原著
  • 三成 由美, 大仁田 あずさ, 松崎 景子, 古堅 守, 印南 敏, 徳井 教孝
    2014 年 72 巻 6 号 p. 302-310
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/20
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】本研究は,長寿県である沖縄県離島の保育所乳幼児を対象として選び,授乳法ならびに離乳期間が保育所乳幼児の腸内細菌叢に及ぼす影響について検討した。
    【方法】期間は2008年10月27日から11月20日,対象は同意が得られた保育所乳幼児117名である。調査は腸内細菌叢の分析および対象の保護者に自記入式により授乳と離乳に関する調査を実施した。なお,腸内細菌叢の分析はNagashima法によるT-RFLP法で行い,クラスター解析を行った。
    【結果】年齢別に見ると,0歳時,1~2歳児は,3~5歳児と比べて有用菌の割合が有意に高い値を示した。授乳法別におけるBifidobacteriumの割合は,完全母乳32.8±2.6%,混合栄養24.2±1.5%,人工栄養19.0±1.8%(平均値±標準誤差)であり,完全母乳が他の2群に比べて有意に高い数値を示した。離乳期間別のBifidobacteriumの割合は,離乳期間6ヶ月間以下20.0±7.4%,7~14か月間26.3±10.9%(平均値±標準誤差)であり,後者が有意に高い数値を示した。
    【結論】腸内環境を健全に保つはたらきを持つBifidobacteriumなどの有用菌の占有率を高く維持するには,まず,母親には授乳法および離乳期間を考慮した食育が必要であり,乳幼児においては,保育所で腸内環境改善のための食材を取り入れた献立などの提供が必要であると考えられた。
資料
  • 西田 江里, 水江 文香, 宮本 恵美, 川内 美樹, 熊井 まどか, 岡本 美紀
    2014 年 72 巻 6 号 p. 311-317
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/20
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】成人女性の食育推進や食生活改善において考慮すべき事項について検討するため,成人女性の就業状況の違いによる食生活の差を明らかにした。さらに,食育の認識の有無による検討も行った。
    【方法】S市が2010年に行った「食育に関するアンケート調査」の結果をもとに検討を行った。調査はS市在住の16歳から79歳の男女4,000名を対象とし,回収数は1,904名(回答率47.6%)で,本研究では年齢が30代から50代,就業状況が明らかである独居ではない女性511名を対象とした(有効回答率26.8%)。就業状況別の食育の認識や食生活の差,食育の認識の有無による食生活の差についてクロス集計を行い,Fisherの直接法を用いて差の検定を行った。
    【結果】対象者は,フルタイム181名(35.4%),パート勤務・アルバイト145名(28.4%),無業185名(36.2%)であった。就業状況の違いによる食生活の差は少なかったが,同じ就業状況でも「食育の認識」の程度が異なる者を比較すると,パート勤務・アルバイトや無業では「食前食後の挨拶」等で「食育の認識」の有無による食生活の差(p<0.05)が生じたが,フルタイムでは「食育の認識」の有無による食生活の差は生じなかった。
    【結論】就労時間の長いフルタイム勤務者においては,「食育の認識」の有無と食生活状況とに関連は認められなかった。食育の推進による食生活の改善においては有業者の就業状況を考慮した取り組みが必要であることが示された。
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