栄養学雑誌
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81 巻, 3 号
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研究ノート
  • ─項目作成と属性による実施頻度の検討─
    河嵜 唯衣, 佐藤 清香, 吉井 瑛美, 赤松 利恵
    原稿種別: 研究ノート
    2023 年 81 巻 3 号 p. 101-110
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/12
    ジャーナル フリー
    電子付録

    【目的】環境保全と,個人の健康の維持改善を両立した,持続可能で健康な食行動(Sustainable Healthy Dietary Behaviors: SHDBs)の項目を作成し,項目毎に属性による実施頻度を検討すること。

    【方法】先行研究や国内外のガイドライン等を参照し,SHDBsの項目を作成した。実施頻度の検討には,2021年12月に実施した質問紙調査に回答した成人男女508名{中央値41歳,女性51.0%}のデータを使用した。各項目の実施頻度の分布を示し,Mann-Whitney U検定及び相関分析を用いて,属性(性,年齢,Body Mass Index,世帯構造,最終学歴,世帯年収)による実施頻度の差を検討した。

    【結果】30項目のSHDBsが作成された。全30項目中24項目で,女性は男性より実施頻度が高かった(p<0.05)。「地場産物を選択する(ρ=0.250,p<0.001)」等3項目で,年齢が高い程,実施頻度が高かった。「一日に,小皿5皿分以上の野菜料理を選択する(ρ=0.214,p<0.001)」で,世帯構造が大きい(多世代で居住)程,実施頻度が高かった。

    【結論】食品選択から廃棄までの食行動の場面を網羅した,30項目のSHDBsが抽出された。性別等の属性により実施頻度が異なる項目があった。今後,本研究で示された項目を使用した研究や実践の促進が期待される。

  • ─非ランダム化比較試験─
    河野 真莉菜, 藤井 京香, 安武 健一郎
    原稿種別: 研究ノート
    2023 年 81 巻 3 号 p. 111-119
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/12
    ジャーナル フリー

    【目的】認知症グループホーム(以下,グループホーム)と管理栄養士の連携を構築する一助として,1日使用食品数の変化を主要評価項目とした献立および調理に関する支援の成否を検討した。

    【方法】研究デザインは非ランダム化比較試験であった。2019年4月から6か月間,福岡県内のグループホーム3施設(介入施設)に,1回/週の頻度で献立や調理に関する提案と入居者・介護職員による共同調理の活性化を行った。支援期間前(2018年10月)と支援期間後(2019年10月)の各1か月間の実施献立に使用された1日使用食品数の変化を,支援を行わなかった2施設(非介入施設)と比較した。

    【結果】支援期間前における入居者の年齢,BMI,性別,日常生活自立度は,介入の有無による施設間において有意差を認めなかった。両施設の支援期間前における1日使用食品の合計数には有意差を認めなかったが,支援期間後では介入施設が非介入施設に比較して有意に高値であった。また,期間中において介入施設の1日使用食品の合計数は有意な増加を認める一方,非介入施設では有意な変化を認めなかった。

    【結語】グループホームで実施した6か月間の献立および調理に関する支援は,介入施設の1日使用食品数の増加に貢献した可能性がある。今後,栄養管理体制加算の活用等を通した持続可能な栄養支援の在り方を確立する必要がある。

  • ─生態学的研究─
    高橋 秀典, 小野 廣紀
    原稿種別: 研究ノート
    2023 年 81 巻 3 号 p. 120-128
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/12
    ジャーナル フリー

    【目的】近年の国内のCOVID-19 (以下新型コロナウイルス感染症) の主たる変異株の感染拡大状況と,主な栄養素等の摂取状況を,地域ごとに比較し,その関連を検討した。

    【方法】国民健康・栄養調査から,国内の12地域ブロックごとの栄養素等40項目および都道府県ごとの野菜の摂取量と,厚生労働省のオープンデータ,総務省統計局,国立社会保障・人口問題研究所のデータから,地域,都道府県ごとの第4~6波の新型コロナウイルス感染症の陽性者数との関係を,人口密度や平均年齢を考慮し,順位相関分析および回帰分析により検討した。

    【結果】新型コロナウイルス感染症の陽性者数と有意な相関を認めたものは,第4波では,たんぱく質 (全体ρ=0.639,動物性ρ=0.784),コレステロール (ρ=0.622),食物繊維 (全体ρ=-0.725,不溶性ρ=-0.677),エネルギー比率 (炭水化物ρ=-0.846,動物性たんぱく質ρ=0.661),第5波では,エネルギー比率 (炭水化物ρ=-0.720),第6波では,ビタミンK (ρ=-0.729),エネルギー比率 (動物性たんぱく質ρ=0.601) であった。第6波ではオミクロン株の感染が主流であるが,食物繊維のほかに野菜との関連も示唆された。

    【結論】近年の国内の新型コロナウイルス変異株の感染と一部の栄養素等の摂取量との関連が示唆されたが,さらなる多面的な調査研究が必要となる。

資料
  • ─2022年「食農教育法」の背景と体系─
    上田 遥
    原稿種別: 資料
    2023 年 81 巻 3 号 p. 129-137
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/12
    ジャーナル フリー

    【目的】2022年に施行された「食農教育法」下における台湾の食育政策を明らかにする。

    【方法】WEB入手可能文献(主に政策文書)をもとに同法の背景・体系を分析する。

    【結果】台湾の食農教育法は,中央レベルでの推進委員会の組織,中央・地方の両レベルでの基本計画策定,食育に関する専門職業の養成,政府・食農産業・学校・地域社会の連携による全国運動としての食育推進という点で,基本的には日本の食育基本法と内容が共通している。しかし,農業の重視,家族・ジェンダーへの配慮,食文化の多様性と開放性など,いくつかの点で日本の課題を克服しうるものであった。

    【結論】日本や韓国から遅れをとったものの,台湾の食農教育法から学ぶべきことは多い。ただし同法における「食為先,農為本」の思想がどの程度現場で実践されるかについては,さらなる検証が必要である。

  • ─料理の種類数の削減方法について─
    神田 知子, 西浦 幸起子, 小切間 美保, 桒原 晶子, 髙橋 孝子, 赤尾 正, 宇田 淳, 市川 陽子
    原稿種別: 資料
    2023 年 81 巻 3 号 p. 138-152
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/12
    ジャーナル フリー
    電子付録

    【目的】病院給食において,調理作業の合理化・効率化のために実施している料理の種類数の削減方法についての実態を把握することを目的とする。

    【方法】全国8,297の病院を対象とし,質問紙調査を行った。献立,主食,主菜,副菜,汁物それぞれに関する料理の種類数の見直し・削減方法の具体例を調査し,質的内容分析を行った。

    【結果】回答のあった2,011施設のうち有効回答が得られたのは2,007施設(24.2%)であった。そのうち,料理の種類数の削減を「過去5年以内に,見直し・削減したことがある」,「見直し・削減する予定である」と回答した1,069施設を分析対象とした。料理の種類数の見直し・削減例について選択肢の回答の上位に挙げられた項目は,献立では「献立作成の工夫」,「栄養基準の簡素化」,主食では「盛付け量での調整」,主菜と副菜では「完全調理品,半調理品の使用」,「調理手順の効率化」,汁物では「塩分制限の厳しい者には提供しない」であった。これらの料理の種類数の見直し・削減の具体例を,病院の給食管理業務における約束食事箋の作成から配膳までの工程にあてはめた結果,『食種を減らす工夫』,『献立作成段階の工夫』,『調理作業工程の集約・簡素化』に整理することができた。

    【結論】調理作業の合理化・効率化を図るためには,栄養基準を簡素化すること,加工された食材を活用すること,献立作成段階で同一のメニューや食材を多くの食種に対応させる工夫が重要であると考えられた。

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