【目的】女子大学生を対象に鉄欠乏の実態を調査し,血清フェリチン値正常群の赤血球関連検査値を明らかにすることを目的とした。
【方法】成人女子大学生177人を対象に赤血球関連検査値からフェリチン低値群(フェリチン 12 ng/ml未満)のスクリーニングについて検討した。また食事調査(BDHQ)でフェリチン低値群と減少群(フェリチン 12 ng/ml以上,25 ng/ml未満)を合わせたフェリチン不足群の食生活の特徴を探索した。
【結果】鉄欠乏性貧血は3.3%,鉄欠乏で貧血を認めない潜在性鉄欠乏は18.1%と高頻度であった。赤血球関連検査値から鉄欠乏をスクリーニングする場合のカットオフ値は,MCH28.6 pgとすると感度は89.4%,特異度は76.3%と最も良好であった。食事調査において,フェリチン減少群は充足群に比べ鶏肉の摂取量が有意に多かった。フェリチン低値群は充足群に比べハムの摂取量が有意に少なく,洋菓子の摂取量が有意に多かった。またフェリチン不足群を充足群と比較すると,脂ののった魚や納豆の摂取が有意に少なく,コーヒーの摂取が有意に多かった。1,000 kcalあたりの鉄摂取量は中央値で充足群,減少群,低値群の順に 4.83 mg,4.52 mg,4.42 mgであったが有意差はなかった。
【結論】女子大学生の21.4%に鉄欠乏を認めた。MCH28.6 pgをカットオフ値とすると,感度,特異度とも高値で鉄欠乏をスクリーニングできた。フェリチン不足群は洋菓子やコーヒーの摂取が有意に多く,食生活のバランスを欠いている可能性が考えられた。
【目的】新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の感染拡大下における配食事業者のサービス提供体制とその課題を明らかにすることを目的とした。
【方法】日本栄養支援配食事業協議会に加盟する配食事業者(21社)を対象に依頼文書を送付し,調査協力への同意が得られた事業者を対象にした。2021年1月~2月に質問紙調査およびインタビュー調査を実施し,配食事業者のサービス提供体制と課題について集計分析を行った。
【結果】調査協力への同意が得られた事業者は全13社であった。提供体制の課題として,配送時の感染対策や体制整備,スタッフの感染対策,食数や利用者の増加に対する製造体制の整備,受注業務の体制整備,人材確保等が挙げられた。また,事業者の業態やサービスの特性によっては,医療機関での栄養指導等の減少により,患者に対して配食サービスを紹介する機会が減少していることや,見守りや安否確認が対面でできず,利用者の様子が把握しづらくなっていることも課題として挙げられた。
【結論】本研究では,COVID-19の感染拡大下における配食事業者の提供体制に関する課題を整理した。本研究で得られた成果は,感染症発生時に対応した強靭な食環境を整備するうえで重要な基礎資料となるとともに,行政や配食事業者が,感染症の流行に備え,適切に配食サービスを届けるための体制を構築するうえで役立つことが期待される。