食用油のオリーブ油, コーンオイル, 大豆油を試料に界面活性剤 (Span 80) を添加した場合のヨウ素価, 過酸化物価の変化を無添加と比較して恒温放置, 軽度加熱, 紫外線照射の条件下で検討した。
I. 30±0.5℃恒温放置の場合 52日間の継続放置に於て, ヨウ素価はコーンオイルのみが試験区で著しい減少率を示した。他は概して比較的同様の減少度であった。
過酸化物価は各油脂, 各区すべて一方的に増大し, 酸化, 変敗の度合を知る上の指標となりうることを知った。そして一般に試験区での増加が大であった。特にコーンオイルはヨウ素価との相関が強くその増加が大であった。
II. 加熱の場合 加熱温度を75, 100, 125, 150℃の4種に分ちそれぞれその温度に30分間保持加熱した。
一般にヨウ素価は原試料よりも減少する面がみられた。そして平均してコーンオイル, 大豆油が試験区で減少率大, 特にコーンオイルは大であった。この点既述の恒温放置の場合と同一で, また次の過酸化物価の面と良く相関している。
過酸化物価は各油脂各区とも原試料より増大し, 大体同じ増減のカーブをたどり, 100℃, 125℃付近が概して高い増加率を示した。また各油脂中コーンオイルが最も高い増加率を示した。そして一般にコーンオイルとオリーブ油が試験区での増加率が小で大豆油だけ大であった。加熱時の界面活性剤添加の場合における過酸化物価の増加は必ずしも同一でなく油脂の種類によって異なり, ここでは大豆油のみがその傾向が強かった。また一般に100℃以下の場合, 界面活性剤の過酸化物価抑制効果は薄いようであろが, 125℃以上では有効なように考えられる。
III. 紫外線照射の場合 開封後夏の最盛期を経て111日間室温放置した試料 (第3表) について高さ21cmより20Wの螢光灯を使用し23時間, 46時間にわたり照射した。
ヨウ素価は一般に平均して試験区の減少率が小であった。個々については特にコーンオイル, 大豆油が小で就中コーンオイルが小であった。
過酸化物価は各区いずれも一方的に増加をたどり変敗度測定の指標となりうることを知った。オリーブ油, コーンオイルは平均して試験区が増加率大で特にオリーブ油が著しく, 大豆油は小であった。大豆油のこの傾向は恒温放置および加熱時の場合と対照的で, コーンオイル, オリーブ油では恒温放置の場合と同傾向であった。
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