栄養学雑誌
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74 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 清水 亮
    2016 年 74 巻 1 号 p. 4-12
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/06
    ジャーナル フリー
    【目的】病院や介護老人保健施設 (老健)において在宅移行をする摂食嚥下障害者への管理栄養士又は栄養士による食事指導の現状を調査し,その必要性や実施のための課題と対策について検討した。
    【方法】青森県内の病院,老健における栄養部門の長を対象に,自記式質問紙調査を行った。調査内容は,病床数,管理栄養士数,栄養士数,嚥下調整食の提供状況と喫食者の在宅移行状況,在宅移行時の食事指導の実施状況とその必要性,食事指導の実施に必要な事項等とした。
    【結果】回答施設の全てで嚥下調整食が提供されていた。管理栄養士又は栄養士から摂食嚥下障害者へ在宅移行時に食事指導を実施している施設は病院60.4%,老健40.9%であり,非実施施設でも9割以上で実施が必要と回答していた。病院における施設雇用の管理栄養士1人当たりの病床数 (中央値 (25%~75%タイル値))は,実施施設68.0 (45.1~104.8)床,非実施施設142.0 (102.0~202.0)床であり,実施施設で有意に低かった (p<0.001)。加えて,食事指導の実施には「食事指導の依頼」,「退院又は退所情報の提供」,「リーフレットの提供」の順で必要とされていた。
    【結論】管理栄養士又は栄養士による在宅移行時の食事指導は概ね必要と考えられており,管理栄養士数の充足以外にも,指導依頼の促進や既製リーフレットの提供等により,実施に繋がる可能性が示唆された。
短報
  • 坂手 誠治, 柳沢 香絵
    2016 年 74 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/06
    ジャーナル フリー
    【目的】水中運動実施者の運動時の発汗および水分摂取の実態を明らかにするとともに,より安全な水中運動実施のための基礎資料を得ることを目的とした。
    【方法】調査は,公共の室内プール2か所で実施した。水中運動前後に体重,鼓膜温,口渇感,飲水量の測定を行った。発汗量は{=(運動前体重+飲水量)-運動後体重-尿量},発汗率は{=(発汗量/運動前体重)×100}の式より,それぞれ算出した。尿量は排尿前後の体重差より算出した。実施種目間での各測定項目の比較,実施種目別等にみた運動中の水分摂取状況,各測定項目間の関係について検討した。検討対象は男性34名,女性22名の計56名(60.6±16.6歳)とした。
    【結果】発汗量は 155.0 g(60.0・365.0),発汗率は0.3%(0.1・0.6)であった。水泳(p<0.01),水泳および水中歩行実施者(p<0.05)の飲水量はアクアビクス実施者に比較し有意に少なかった。水分摂取率(=飲水量/発汗量×100)も同様の結果であった。運動中に全く水分摂取を行わない者は全体の76.8%であり,水泳実施者で多くみられた。運動前の口渇感と飲水量との間に有意な正の相関関係(rs=0.392,p=0.003)がみられた。
    【まとめ】公共の室内プールでの運動実施者では,運動中に水分摂取を行う者が少なく,特に水泳実施者で多かった。運動前口渇感は運動時の発汗による脱水に影響する可能性が示唆された。健康増進を目的とした水中運動時においても,脱水予防のための適切な水分摂取の必要性が示された。
  • ─トマト栽培に関する検討─
    木田 春代, 武田 文, 荒川 義人
    2016 年 74 巻 1 号 p. 20-28
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/06
    ジャーナル フリー
    【目的】幼児の偏食の改善に向け,幼稚園における野菜栽培の有効性を明らかにする。
    【方法】北海道某市内5幼稚園に通う年少児379人を対象に,野菜栽培活動を実施する3園(241人)を実施群,実施しない2園(138人)を非実施群として,10か月間の縦断調査を実施した。栽培野菜はトマトであり,栽培前,収穫後,収穫後6か月(フォローアップ)の3時点において,母親が無記名自記式質問紙に回答した。主要評価項目として偏食,副次評価項目としてトマトに対する嗜好,食に対する興味・関心を設定し,各群において経時変化を観察するとともに,収穫後およびフォローアップの各時点において,偏食を改善した者の割合の群間比較を行った。
    【結果】実施群では,偏食しない幼児が栽培前に比べて収穫後,フォローアップにおいて有意に増加した一方,非実施群では有意な変化は見られなかった。また,フォローアップにおいて実施群は非実施群よりも偏食を改善した幼児の割合が有意に高かった。さらに,実施群ではトマトが好きな幼児,「野菜について知っていることを楽しそうに話す」幼児,「食べ物を残すことは『もったいない』という」幼児が栽培前に比べて収穫後やフォローアップにおいて有意に増加した。一方,非実施群ではいずれの項目も有意な変化はみられなかった。
    【結論】幼稚園におけるトマトを用いた野菜栽培は,幼児の偏食に良い影響をもたらす可能性が示唆された。
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