栄養学雑誌
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68 巻, 3 号
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総説
  • 海老澤 元宏, 林 典子, 長谷川 実穂, 杉崎 千鶴子, 今井 孝成
    2010 年 68 巻 3 号 p. 157-165
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    食物アレルギーが先進国を中心に増加している。現在わが国では乳幼児では約5-10%,学童で約2%が何らかの食物に対してアレルギーを起こすと推定されている1)。保育園,幼稚園,学校での給食などにも影響することなので,食物アレルギーを持つ患者への社会的な対応が求められる。食物アレルギー患者に対しては管理栄養士も食物アレルギーに関して最新の知識や情報を得て,栄養指導に臨む必要がある。食物アレルギー患者に関わる管理栄養士にこの「食物アレルギーと栄養指導」をご一読いただき,食物アレルギー患者とそのご家族のQOL(Quality of Life)の向上に貢献していただけることを期待している。
    (オンラインのみ掲載)
報文
  • 岡村 吉隆, 田村 智子, 岡村 幹夫, 坂上 元祥, 奥田 豊子
    2010 年 68 巻 3 号 p. 166-172
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は睡眠時無呼吸症候群(SAS)進展のリスクファクターを明らかにすることである。対象はSAS外来を受診し,倫理委員会で承認された研究に同意した男性49名であった。対象者全体の医学的背景は年齢(平均±標準偏差)が51.2±11.0 歳, Body mass index(BMI)は 28.2±4.3kg/m2,無呼吸低呼吸指数(Apnea hypopnea index :AHI)は 35.6±27.0回/時であった。AHIと年齢には有意な相関関係はなかった(r=0.01,p=0.95)が,AHIとBMIは有意な相関関係にあった(r=0.41,p=0.003)。重症度が中等度から重症と診断された者の食意識・食行動は軽症以下の者に比べクセやズレが大きかった。喫煙暦の有りの者は無しの者に比べて有意にAHIは高い値を示した。パス解析を行った結果,BMIの説明係数(R2)は70%,AHIは43%であった。AHIへの直接効果の因子は,喫煙暦の有無(0.38),「たくさん食べてしまった後で後悔する」(0.35),BMI(0.28)の順であった。「他人より肥りやすい体質だと思う」はBMIを経由してAHIに間接的効果(0.16)があった。これらの結果は喫煙,食意識・食行動,肥満がSAS進展のリスクファクターとして重要であることを示唆するものであった。
    (オンラインのみ掲載)
  • 森 博康, 中本 光彦, 北川 薫
    2010 年 68 巻 3 号 p. 173-182
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    本研究は長期間に渡るラグビー練習終了直後の炭水化物とたんぱく質の同時摂取が与える身体組成と身体諸機能への影響について調査した。17名の男性ラグビー選手を2群に分けた。:ラグビー練習終了直後に,PRO群はたんぱく質サプリメント(たんぱく質15.2g,脂質0.6g,炭水化物1.6g)を摂取し,PRO+CHO群はたんぱく質サプリメントと炭水化物サプリメント(炭水化物45.0g)を摂取した。介入期間は52日間であり,この期間中,被検者は1週間に6日間のラグビーとウエイトトレーニングの練習をしていた。介入期間後,各群で除脂肪体重とベンチプレス1RMが時期効果として有意に増加した(p<0.05,0.01)が,両群間では違いはみられなかった。体脂肪量,スクワットとデッドリフト1RM,周径囲,皮下脂肪厚,血液生化学的数値もまた,両群で有意な違いがみられなかった。これらの結果からラグビー練習終了直後に炭水化物とたんぱく質を同時摂取したが,両群間で身体組成と身体諸機能に違いがみられなかった。本研究では比較的,介入期間が短期間だったことが原因として考えられるため,先行研究の結果が再現できなかった。
    (オンラインのみ掲載)
  • 横瀬 道絵, 角田 伸代, 加園 恵三, 佐久間 肇, 樋口 幸治, 稲山 貴代
    2010 年 68 巻 3 号 p. 183-192
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    脊髄損傷者は不活動や排尿/排便障害などのため,その食生活の指針は健常者とは異なると考えられる。しかし,日本では脊髄損傷者の食生活状況はよく知られていない。
    そこで本研究では,脊髄損傷者の食生活の実態を把握することを目的とし,94名(男性77名,平均年齢45.4(SD 14.5)歳,女性17名,平均年齢45.4(SD 13.1)歳)の脊髄損傷者を対象とした自記式質問紙による食生活調査を実施した。調査項目は,基本属性,生活の質(QOL),健康状態,食行動,食知識,食態度,食スキル,食環境である。
    主観的健康観,食関連QOLは良好であったが,28%の対象者に朝食欠食がみられた。食態度は概ね良好であったのに対し,食スキルは必ずしも十分ではなかった。周囲の支援は良好であった。食生活の評価指標としてとりあげた食生活満足度得点,食物摂取頻度得点,食生活セルフ・エフィカシー得点は主観的な健康観,食行動,食態度,食スキル,周囲の支援といった他の変数との間に有意な偏相関を示した。
    脊髄損傷者における食生活の検討において,健常な若年成人を対象として開発されたこれらの評価指標の利用可能性が示唆された。
    (オンラインのみ掲載)
研究ノート
  • 早渕 仁美, 松永 泰子, 永原 真奈見, 吉池 信男
    2010 年 68 巻 3 号 p. 193-200
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    食事摂取基準の改定版が2009年に公表されたことから,「日本人の食事摂取基準(2005年版)」に基づいて決定された食事バランスガイドのサービング数について再検討を行った。
    まず,ある集団における18~69歳男女の摂取量データベースを用いて,食事バランスガイドの定義に従い5つの料理区分の1SVに相当するエネルギー及び栄養素の参照用データを示した。次に,「日本人の食事摂取基準(2010年版)」に適合させるために,次の前提条件を設定した。すなわち,穀類エネルギー比率は45.0%(1,400kcal)~50.0%(3,200kcal),たんぱく質エネルギー比率は14.0%,カルシウムは500mg(1,200kcal)~750mg(2,600kcal),副菜SVは5(1,600kcal)~7(2,800kcal),5料理区分以外からのエネルギーは30kcal(1,200kcal)~50kcal(3,200kcal)とした。
    この前提条件に基づき,5つの料理区分に対するサービング数の組合せについて,1,200~3,200kcalを200kcal毎にカバーしながら,試算を行った。その結果,現在の食事バランスガイドにおけるサービング数の組合せとほぼ同様の数値が得られたが,主菜についてはやや多め,主食についてはやや少なめの数値となった。
    今回作成した食事バランスガイドの新しいサービング数は,「日本人の食事摂取基準(2010年版)」に良く適合しており,より幅広いエネルギー範囲に対応し,多様な対象へのより良い適用につながると考える。
    (オンラインのみ掲載)
  • 田口 郁栄, 伊藤 裕子, 白男川 太一, 増田 邦子, 大越 ひろ, 高橋 智子
    2010 年 68 巻 3 号 p. 201-207
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    食べやすいブレンダー粥の調製条件(ミキサー撹拌時の回転数,時間)を,テクスチャー特性,破砕粥飯の粒子径測定,および健常者による官能評価等の点から検討した。
    その結果,施設にて提供されているミキサー粥と同等,もしくはよりやわらかく調製する条件としては,中速撹拌60秒間または高速撹拌による調製が適切であった。
    また,高速撹拌60秒間処理した市販レトルト粥は,同処理をした調製ブレンダー粥試料に比べ,テクスチャー特性のかたさが有意にやわらかかった。官能評価の結果からも,ざらつきが少なく,べたつきが低減され,飲み込みやすいと評価された。すなわち,高温高圧下でレトルト処理された市販レトルト粥を用いることで,よりやわらかいブレンダー粥を調製可能であることが示唆された。
    (オンラインのみ掲載)
資料
  • ――栄養教諭免許非保持者との比較――
    長幡(伊藤) 友実, 松田 充代, 伊能 由美子, 赤松 利恵, 藤原 葉子
    2010 年 68 巻 3 号 p. 208-212
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    日本では,平成17年から栄養教諭制度が始まっている。これは世界的にみて新しい制度であるため,栄養教育実習に関してどのような課題があるか検討した報告はない。本研究では,栄養教諭免許保持者の特徴を把握し,また,非保持者と比較して,栄養教育実習を受け入れるにあたっての課題に違いがあるかどうか検討した。東京都の栄養教諭および学校栄養職員1,627名を対象に,質問紙調査を行った。その結果,栄養教諭免許保持者の約半数は50歳代であり,学校での栄養士職年数は30年以上であった。栄養教育実習を受け入れるにあたっての課題については,いくつかの課題(例えば「実習生を引き受けるために十分なスキルが自分に足りない」)に対して,栄養教諭免許保持者は「あてはまらない」「あまりあてはまらない」と答える割合が高かった。また,「今後,栄養教育実習の依頼があった場合引き受けるか」という質問に対しては,栄養教諭免許非保持者と比較して,保持者では,「引き受けると思う」と答える割合が高かった(p<0.001)。本研究により,栄養教諭免許保持者の特徴と栄養教育実習を受け入れるにあたっての課題が把握できた。今後は,課題の多い人の特徴を把握し,課題を軽減させる方策について検討する必要があるだろう。
    (オンラインのみ掲載)
  • 佐藤 ななえ, 吉池 信男
    2010 年 68 巻 3 号 p. 213-219
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    【目的】この研究の目的は,小児の日常的な食事における望ましい咀嚼習慣の定着を目的に開発された,簡易咀嚼回数計の精度について検討することである。この研究によって得られた結果は,小児を対象とした食育実践を評価するうえで,また関連研究に用いるうえで役立つものと考えられる。
    【対象者及び方法】本研究は,2つの幼稚園の園児(5-6歳)61名を対象に行った。研究には小児用簡易咀嚼回数計(日陶科学株式会社)を用い,同一内容の幼稚園の給食を食べた際の咀嚼回数について,2週間期間をおいて測定した。測定には3名の測定スタッフが従事し,測定器の装着と調整及びプロトコルに基づく対象児の観察を行った。再現性の検討に有効なデータとして,37名分の2回測定の値を用いた。測定の再現性はピアソンの相関係数を算出し,さらにアルトマンプロットにより,繰り返し2回測定データの差の程度や傾向を分析した。
    【結果】測定結果から得られた咀嚼回数,食事に要した時間,咀嚼リズムの相関係数は,r=0.67,r=0.76,r=0.70であり,いずれも有意な正の相関(p<0.001)が示された。アルトマンプロットでは,37名のデータのうち95%のデータが一致性の範囲内(-367.9~+276.5)に分布した。
    【結論】測定結果に良好な再現性が認められたことから,本測定器を用いることにより,比較的低コストで,測定者及び対象者への大きな負担もなく,食育実践の評価や関連研究を行うことが可能となるだろう。しかし,さらに信頼できる良好なデータを得るためには,測定スタッフの訓練を含む標準化された適切な測定手順を用いる必要がある。
    (オンラインのみ掲載)
  • 盛岡 のぞみ, 兼安 真弓, 加藤 元士, 山崎 あかね, 弘津 公子, 乃木 章子, 長坂 祐二
    2010 年 68 巻 3 号 p. 220-225
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    メタボリックシンドロームが気になる人を対象にした生活習慣改善プログラムにおいて,管理栄養士が作成した個別コメントを分析した。プログラムは4カ月のグループセッションと,2カ月の通信プログラムで構成した。プログラムを修了した23名の参加者(女性14名,男性9名)の平均年齢は52.7±13.1歳,平均BMIは25.8±3.5kg/m2であった。参加者は,自ら行動目標を決定し,行動と体重を毎日記録した。参加者は,管理栄養士からの個別コメントを,プログラム期間中,毎月郵送にて受け取った。合計101個の個別コメントは,11のサブカテゴリーと3つのカテゴリーに分類された。これらのカテゴリーは,「信頼関係の形成」(35.74%),「行動面のサポート」(40.16%),「心理面のサポート」(24.10%)であった。サブカテゴリーの中では,「助言」が最も多かった(25.13%)。通信プログラムでは,「行動面のサポート」が増加した。プログラム修了時の個別コメントに対する参加者の満足度は,「称賛」の多さと関連していた(p<0.01)。個別コメントの要素と行動変容への効果との関連について,さらなる研究が必要である。
    (オンラインのみ掲載)
  • ――除去食・代替食提供時の工夫と配慮のあり方を中心として――
    佐藤 誓子, 佐藤 勝昌, 増澤 康男
    2010 年 68 巻 3 号 p. 226-233
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    食物アレルギー児に対する保育所の給食対応について検討することを目的として,神戸市内の公立及び民間保育所計174施設に調査書を2回にわたって郵送して回答を求めた。
    公立保育所では除去食給食のみの対応で,代替食による給食は行われていなかったが,代替おやつについては実施している施設もあった。他方,民間保育所では,除去食以外に代替食や代替おやつの提供も行われていた。食物アレルギー児への給食提供時の誤食を防ぐために,調理や配膳に多くの工夫や配慮が行われていた。食物アレルギー児への精神的配慮が多くの施設で行われていた。また,施設内職員間,施設間の情報交換やコミュニケーションを継続することが重要であることが分かった。今回の調査で明らかにすることができた具体的な工夫や配慮を広く共有することで,保育所の給食体制は,更に充実させることができるものと考えられる。
    (オンラインのみ掲載)
  • 谷中 かおる, 東泉 裕子, 松本 輝樹, 竹林 純, 卓 興鋼, 山田 和彦, 石見 佳子
    2010 年 68 巻 3 号 p. 234-241
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    大豆中のイソフラボンは構造的にエストロゲンと類似しており,弱いエストロゲン様作用を発揮する.2006年に,内閣府食品安全員会は特定保健用食品から摂取する大豆イソフラボンの上限量を,通常の食事に上乗せして30mg/日と設定した.しかしながら,大豆イソフラボンや大豆たんぱく質が含まれている,いわゆる健康食品には イソフラボンの許容上限量が設定されなかった.そこで我々は,大豆が原料となっている加工食品,特定保健用食品を5品目含む健康食品10品目について,大豆たんぱく質と大豆イソフラボン含有量をそれぞれ酵素免疫測定法(ELISA)と高速液体クロマトグラフ(HPLC)法で測定した。8品目における大豆たんぱく質量は表示の90-118%が確認され,ジュニア選手用のプロテインパウダー2品目においては表示の約半分量が定量された.大豆たんぱく質を含む特定保健用食品中には表示の90-122%の大豆イソフラボンが検出された。一方,表示のない大豆たんぱく質強化食品2品目には一回摂取目安量当たり30mgを超える大豆イソフラボンが検出された。このような食品をジュニア選手が過剰に摂取しないよう注意する必要があると考えられた。
    (オンラインのみ掲載)
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