富山県の一農山村において, 30~59歳の男女39人について, 食物摂取量調査および生化学的指標である尿中のNa排泄量を指標として食塩摂取量の推定を行った。また, 食塩摂取量と関連し, 高血圧の発症にも影響するとされるたん白質の摂取量についても尿中尿素窒素排泄量から推定を試みた。また比較的食塩を多く摂取していた者に減塩を指導し, 追跡調査により食生活の変化をみた。結果は次のとおりである。
1) 食物摂取量調査によれば1日の平均Na摂取量は7.1g (食塩量: 18.0g) であり, 男子が女子に比して, また加齢に伴い摂取量が多くなる傾向がみられた。
2) 漬け物, 煮物および味噌汁からのNa摂取が主であり, それらで1日摂取量の約70%を占めていた。
3) 24時間尿中のNa排泄量は食物摂取量調査によるNa摂取量と統計的に有意な相関 (
r=0.54,
p<0.01) を示し, 前者の後者に対する割合は69.0%であった。
4) 最大血圧および最小血圧は尿中のNa/K比と統計的に有意な相関を示した (最大血圧
r=0.76,
p<0.01; 最小血圧
r=0.53,
p<0.01)。
5) 食物摂取量調査によれば1日の平均たん白質摂取量は74.8gであり動物性たん白比は45.7%であった。
6) 24時間尿中の尿素窒素排泄量は食物摂取量調査によるたん白質摂取量と統計的に有意な相関 (
r=0.60,
p<0.01) を示した。
7) 減塩指導した後の食生活の変化をみると漬け物からの摂取が有意に減少していた。また一方で, 炒め物やサラダなど, 脂肪やたん白質の摂取につながる調理形態が増す傾向がみられた。
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